このページをとじる

「難民支援者のためのセミナー」を開催しました

 難民事業本部では、難民支援に携わる上での基礎知識・応用知識を習得し、スキルアップを図るために、「難民支援者のためのセミナー」を2回シリーズで開催しました。


7月9日(水)多文化共生と自治体
毛受 敏浩さん((財)日本国際交流センター チーフ・プログラム・オフィサー)


 いわゆる「多文化共生」という言葉は1990年代に入ってから生まれ、自治体の取組みもそれまでの海外との交流から、内なる国際化、つまり国内で外国人が日常的に直面する様々な問題への対応と変わってきた。外国人人口が増加する中で(現在日本の総人口の1.6%を占める)、自治体にとって多文化共生は重要なテーマとなっているが、@多文化共生事業は法律に基づいたものではないため、自治体によって対応にバラつきが出ていること、A福祉、医療、教育、労働など多分野の専門知識が不足していること、B担当者の定期的な人事異動のため継続性に欠けること、C財源が不足していること、D一般市民の理解が不足していることなどの課題を抱えている。
一方、外国人が居住する地域で多文化共生の成功例が生まれている。外国人(多文化)が地域経済や地域社会の活性化に貢献し得ること、つまり外国人の持つ多文化パワーの可能性が確認されている。多文化パワーが発揮できる社会とは、外国人を単なる労働力ではなく、社会的・文化的リソースと捉えることができる社会である。外国人自身が主体的に活動することにより、地域社会が活発化し、結果的に日本人もエンパワーされるのである。
自治体は、このような多文化パワー社会の実現に向けて、管轄地域内でネットワークを構築する、管轄地域外や福祉、医療、教育、労働分野における専門家とのつながりを作る、外国人の貢献・潜在能力について日本人の認識を向上させるといった役割を果たすことが求められている。

7月23日(水)難民の精神保健とメンタルケア
野田 文隆さん(大正大学人間学部人間福祉学科社会福祉学 教授)


   難民特有の精神疾患は存在しないが、難民であるが故に追い込まれる状況は実際にある。難民が直面する問題は、@出身国から脱出(難民化)する前に生じる問題(拷問、強姦、虐殺、家族離散、土地・家財の喪失等)、A脱出(難民化)中に生じる問題(瀕死の逃走体験、難民キャンプでの体験等)、B受入国で生じる問題(難民認定までの長期にわたる待機期間、生活支援の不足、雇用への不満、言語力の不足、社会の偏見・差別等)と、3つの段階に分かれて発生する。受入国に到着してからは、受入国の受入対策上の問題や生活上の問題以外にも、家族離散の後遺症(単身者の孤独、出身国から家族を呼び寄せてもうまくいかない等)、異文化適応速度の違いによる家族内スプリット(主婦が取り残される、男女共に出身国ではやらなかったことをやり始める、子どもとのコミュニケーション・ギャップが生じる等)、難民キャンプでの薬物依存等の習癖を持ち込む等の家族内の問題も深刻である。これらの問題はすべて、精神疾患を発症する要因となり得る。

このページをとじる