2019.3.1
「定住者の声
No.15」いちょう団地のインドシナ青少年を考える
コミュニティー団体「すたんどばいみー」は、2001年11月17日(土)に神奈川県大和市立下福田中学校で「いちょう団地のインドシナ青少年を考える懇談会〜青少年の安全と保健から考える青少年支援〜」を開催しました。会場には約70名の会員、保護者、日本人支援者、学校関係者らが集まりました。「すたんどばいみー」代表のチュープ・サラーンさん(カンボジア)に団体の活動や懇談会の様子を伺いました。
インドシナ青少年の悩み
「すたんどばいみー」は、神奈川県営いちょう団地に住むインドシナ難民定住者の子供たちを中心とした自主運営の活動グループです。同団地には私たちを含め多数のインドシナ難民定住者が暮らし、子供たちが地域の学校に通っています。子供たちは、地域や家庭、学校の中で「日本に暮らす外国人」として暮らしていくときに、日本人と母国の文化の間で困難を感じ不安定になりがちです。勉強についていけなくなったり、将来に不安を感じて学習意欲をなくしてしまう子供たちもいます。このように似たような経験を持つ者同士が、日本の中でしっかりとアイデンティティーを持ち、自立していけることを目指して、勉強を教え合ったり、悩みを相談し合ったりしながらお互いに支え合うという活動が始まったのが2年前でした。2001年5月、「すたんどばいみー」という組織名となり現在に至っています。
「すたんどばいみー」の活動
私たちのグループ名の由来ですが、この「すたんどばいみー」という言葉は、私たちが会を運営していく中で大切にしなくてはならないことでもあります。つまり「自分自身で立ち、自立する」「私の側にいて」という意味です。2001年10月現在で会員数は59名、小中学生がほとんどです。国籍はラオス、ベトナム、カンボジアのインドシナ出身者がほとんどですが、最近では日本や他の国の子供たちも参加しはじめています。10名の大学生、高校生が中心となり、中学生と共に21名で運営委員を組織して、定期的に運営委員会を行い活動内容を話し合ったり、同時に地域や学校で困っている仲間たちのことについて情報交換し、対応を検討しています。
活動内容としては、週2回の学習支援教室、家庭訪問での勉強のお手伝いや、月2回の母国語教室のほかに、バスケットボールチームを作って交流したりしています。また、今回の懇談会で会場をお借りした下福田中学校では、在籍する外国籍生徒が母国の地理や歴史、親の経験などを知ることを通じて日本に暮らす外国人としてのアイデンティティーの形成を目的の一つとした選択教科「国際」の授業が行われていますが、時々そこに参加し、お手伝いをしています。その他に、いろいろなイベントを企画して、会員同士や支援していただいている関係者の方々との交流を図っています。今回の懇談会もイベントの一つでした。
薬物乱用を考える
いちょう団地周辺に暮らすインドシナ青少年たちの教育支援を考えるとき、私たちの生活環境のすぐそばにシンナーや薬物乱用の問題があります。今回の懇談会は、私たちと保護者を対象に、自分や自分の子供たちの健全な育成を目指すことを目的に行いました。第一部では、看護婦の糸井裕子氏から、乱用すると依存に至る薬物の基本的な知識についての講演があり、薬物の恐ろしさについてのビデオを鑑賞しました。続いて下福田中学校教諭の小桐間聡氏からの地域の薬物を巡る状況の解説で、薬物が非常に身近な問題であることを知ることができました。その後東京大学大学院生の清水睦美氏を司会に、下福田中学校の柿本隆夫教諭、小桐間教諭、大和市立下和田小学校の松義一樹教諭を交え、薬物を始めるきっかけや、友人が薬物を使用していると分かったときに、友人としてどう対応したらよいかを参加した私たちも含めて討論しました。
この会を通じて私たちが学び、感じたことは、薬物というのは恐ろしいけれど、それよりもっと恐ろしいことは、私たちの大切な仲間が自分から離れ違う場所に行ってしまうことだということでした。そして自分は何ができるのかについて、「すたんどばいみー」の仲間たちお互いが考えていることが分かり、私たちはお互いにお互いを必要としているグループだと改めて感じました。
第二部では、「桃太郎」の劇を私たちの母国語(7ヵ国語)で上演しました。この劇は3回目の上演になりました。
世代から世代へ
今回のイベントは、初めて中学三年生が中心となって活動してみました。今年は私たちにとって世代交代の年になります。中心を担った中学三年生たちが今年高校生になり今後彼らが当会を運営していこうとするなかで、現在活動の中心になっている高校生、大学生が彼らにどのように経験してきたことを伝えていくかが重要な課題であると思います。そして、また次の世代がその次の世代へと伝えていけたらよいと思います。そして、今年も昨年のように「すたんどばいみー」の皆でいろいろな活動をしていくなかで、共に悩み、助け合っていきたいと思います。
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