INFORMATION

2019.3.1

「支援者の声 No.14」姫路市立城東小学校の取組み

  兵庫県姫路市には多くのインドシナ難民が定住し、彼らの子供たちも地域の学校に通学しています。姫路市立城東小学校で日本語の指導を担当されている教諭金川香雪さんにお話を伺いました。

ムーラン(ベトナムの獅子舞)の練習に励む、姫路市立城東小学校のベトナム人児童たちと、金川先生
ムーラン(ベトナムの獅子舞)の練習に励む、姫路市立城東小学校のベトナム人児童たちと、金川先生(写真右上)

城東小学校の取り組み
 城東小学校では、ベトナム人児童27人、カンボジア人児童1人が在籍しています。外国籍の児童が多いため国際交流に関する活動を積極的に行っています。例えば、毎年開催している音楽会では、ベトナムとカンボジアの児童たちでムーラン(ベトナムの獅子舞)を披露しています。これは、自分の国の文化を誇れるようになってほしいとの願いで、他の児童たちに向けて見せるものですが、最近では、姫路市内の国際交流フェスティバルや、アジアの子供たちにかかわるイベントなどに招待され、大勢の方の前でも披露しています。多くの日本人児童からは、「ベトナムの子たちはムーランを踊れて羨ましい」「自分たちもムーランをやりたい」という声があり、踊りを教わる児童もいるなど、小さな国際交流の輪が広がっています。
 また、姫路に住む日本人(歯科医)のボランティアの方を招いて、カンボジアの話を聞いたり、インドシナ難民について学んだりする授業もあります。低学年の児童に対しては、楽器、服、おもちゃなどを取り入れて、楽しみながら世界の文化を紹介しています。学校を休みがちで、自分をクローズアップされるのを嫌がっていた外国籍児童も、自分の国の文化を紹介されることで少しずつ積極的になってきています。
 
外国籍児童への支援
 保護者会や家庭訪問で家族の方と面談すると、「本当は子供をベトナム名で過ごさせたいが、いじめにあうのが怖くて日本名をつけさせた」という話を耳にすることがあり、学校でも、外国籍児童が集まった際に、『ベトナム名と日本名のどちらで過ごすか』について話し合ったことがあります。「ベトナムの名前でも都合の悪いことはない」という意見が圧倒的で、日本名で過ごしていた児童も3年生からベトナム名に切り替えたことがありました。また、以前には「ベトナムに帰れ!」などと悪口を言われた児童もいたようですが、今は外国人だからという理由でいじめにあう児童はいません。日本人も外国人も関係なく、本人の人柄をみて付き合っているようです。これは名前についても同様のことで、違いがあることに偏見がなくなっています。そして、新たに入学してきた外国籍児童にも、周囲が快く受け入れる土壌ができているのです。
 日本生まれの外国籍児童も多いのですが、3,4年生を過ぎたころから学習言語が難しくなってくるため、授業についていけない児童もでてきています。城東小学校には、外国籍児童のために日本語指導の教室「いきいき教室」があり、日本語が分からない児童や、国語や算数などの授業についていけない児童のために、取り出し授業を行っています。また、兵庫県では多文化共生サポーター制度があり、外国籍児童が在籍する学校に、母語が話せるサポーターを派遣しています。その制度を受け、サポーターが1週間に2日、今年から3日来てくれているので、通訳・翻訳などを含め随分と助かっています。
 
今後の課題
 小学校では明るく過ごせていた児童が、中学校に進学してから問題行動が多くなることがあります。そうなるまでの過程にはさまざまな要因があるでしょうが、文化の違いを同級生に指摘されたこともその一つです。小学校では手厚く見守られながら成長してきた児童も、卒業後は、言葉の壁にぶつかったり、友達とトラブルを起こすこともあります。周囲の先生も高校進学に向けての指導に時間をとられ、余裕がないこともあるのでしょう。
 今後、城東小学校では、「卒業後の新しい社会でも適応できるような人物になるために、自分に自信のつく何か得意なものを持たせるようにすること」、「高校進学を目標とする学力を持たせるようにすること」、「大変な事態や問題が起こったときに相談にのれる場所となること」などを踏まえて指導していきたいと考えています。そして、周りの方たちへは、外国籍児童をわかろうとする姿勢、受け入れる気持ちが、彼ら外国籍児童の支えになるということを知っていただきたいと思います。

広報誌「ていじゅう」第104号より転載

関連記事

PAGE TOP