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2019.3.1

「支援者の声No.11」共生にむけて

 難民定住者は都府県営住宅に入居している人たちが多く、全体の約29.4%に上り、1世帯5名という家族構成が多いです。横浜市泉区にある県営「いちょう団地」では2,238世帯の入居数の内、ベトナム、ラオス、カンボジアのインドシナ三国204世帯、中国187世帯、ペルー14世帯など、全体の約20%を外国籍入居者が占めています(2001年現在、いちょう団地連合自治会調べ)。
 以前は外国籍入居者がそれほどいなかった「いちょう団地」でも、1980年代に定住促進センターが大和市に開設した影響もあり、1990年代になると難民定住者の入居者が急増し、それまでの団地生活・自治会活動にも変化が現れました。以来十数年間、難民定住者と関わってきた「いちょう団地連合自治会」事務局長の坂本利恵さんに、共生への努力、日常的な支援活動等についてお話を伺いました。

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「いちょう団地」では、国際交流会のほかにも夏祭りやバザーなど住民間の交流を促進する催しを開いています。

インドシナ難民定住者との出会いを教えてください。
 昔は難民定住者の人たちとのお付き合いはなく、その存在も知りませんでした。ある日、近隣の小学校に通っている自分の子供をとおして同じ学校にベトナムの児童がいることを知ったのが90年のことです。そのベトナムの児童が暴言やいじめを受けている様子を目にして、このままでは教育上良くないと感じ、難民定住者の生活習慣や来日した経緯などを学ぶようになりました。
 以来「いちょう団地連合自治会」では、年に1回日本人入居者と外国籍入居者が交流する国際交流会を開いてきています。お互いの文化を理解するために自国の料理や民族音楽を披露し合い、また、集団生活における悩みや問題点について意見交換する場としています。回を重ねるごとに日常生活の相談をする場、お互いを理解する場となってきています。
 
国際交流会でよく取り上げられる問題は何ですか。
 意見交換でよく出る問題では騒音があります。文化の違いだと思いますが、外国籍入居者の皆さんは、部屋や近くの空き地で集まり、パーティを開いたり、カラオケをすることが多いようです。近隣の人たちにとっては、これが騒しいと感じられ、トラブルの原因になることがあります。パーティを開くことは悪いことではありませんが、「事前に近所の人たちに一言伝えておく」、「夜に開く際は終了時間に留意する」、「屋外で行う場合直火を使わない」といった共同生活を送る上でのルールを説明しています。
 しかし、一方が理解してくれても、今度は日本人入居者の生活環境が変わってきたことで問題が解決できないでいます。近年「いちょう団地」に入居している日本人の家族構成は高齢者だけの夫婦や単身者等といった少人数の家族が増えてきています。静かな生活をしていると少しの音でも敏感になるため、以前であれば聞こえなかった音が気になったり、家族が多かったころは自分の子供も騒いでいるためにお互い様と感じられた音が煩わしく感じることもあるようです。騒音問題は年が経ても改善されないのかと疑問に感じる人がいますが、日本人入居者のライフスタイルが変わったことで解決が難しくなる場合もあるのです。
 また、国際交流会以外にも月に1回住民相談会を開いていて、外国籍入居者から家賃減免制度や生活保護の手続きの方法についての問合せがあります。これは最近の経済の悪化を反映し、賃金差別、リストラが原因で収入確保が難しくなっているからでしょう。このように、皆さんまだまだ自分の生活を送ることで精一杯のようです。
 
今後の取り組みについて聞かせてください。

 そのほか、育児相談や子供の進学等の相談も増えてきています。弁護士が介入するような相談事や、私たち自治会だけでは対応できない問題もあり、これまでの知識や人脈から専門家、自治体、学校等と協力してどうにか解決しています。今までの経験を踏まえると、相談があった際に、手続きの方法や問合せ先を説明するだけでは援助が足りないことが分かりました。手続きする場所まで同伴する、直接会って話を聞くなど本人と接して初めて問題が解決することが多いです。そのためにも地域の中に通訳が常駐する相談窓口を設け、彼らがよりよい暮らしを送られるように環境整備をしていきたいです。

広報誌「ていじゅう」第102号より転載

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