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2019.3.1

「支援者の声No.12」(株)共栄製作所の取組み

 (株)共栄製作所は(飯尾博幸取締役社長)、神奈川県秦野市で日本精工(株)の協力工場として、ベアリングの部品の一つ転動体(ころ)を作っている会社です。同社では難民定住者を雇用する上で発生した種々の問題を克服し、難民定住者を熟練工として育成しています。工場長の鳥居睦さんにお話を伺いました。

厚木日本語クラス
(株)共栄製作所飯尾社長(中央)、鳥居工場長(左から2人目)を囲むインドシナ難民定住者たち

 工場は8時から16時30分の普通勤務と、18時から23時までの2交替勤務で機械を稼動しています。従業員は40名、内8名が難民定住者で、このほとんどは職業相談員(難民事業本部所属)から紹介を受け、雇用した人たちです。

難民定住者を雇用して
 1993年に職業相談員から問合せがあり、難民定住者の雇用をお願いされました。それまではアルバイトで外国人を雇った経験しかなかったので不安はありましたが、雇い入れる難民定住者は同国人同士であること、家族を持っている世帯主であることを希望しました。その上でラオス出身の2名を雇用したのが始まりです。
 雇用した初期のころは、言葉の問題はもちろんのこと、その他には、親族の冠婚葬祭があると母国に1ヵ月も帰ってしまいとても困りました。母国の習慣であれば仕方の無いことですが、その習慣を知らなかったので職業相談員に問い合わせてみました。すると日本とあまり変わりはないとの説明を受けたので、難民定住者と話し合いの末、連続休暇は最長15日までと規定し、許可することとしました。
 また、言葉の問題があるため仕事中にけがを負って病院に行く際には同行したり、車を購入する際は販売店の紹介や自動車保険の加入の仕方を説明したりと、日本での生活が物資的にも精神的にも安心して仕事に打ち込んでもらえるような環境作りを行いました。

雇用の上での創意工夫
 初めのころは、土足で居間に入るといった予想もしないような行動があったり、「この仕事は嫌だ」「機械の音で耳が痛い」など不平不満を口にするなど、働くことに甘えがあるように感じました。やってはいけないことはその都度厳しく指導したり、細かく注意をしたりしたので彼らには煩わしかったことと思います。
 当初から雇用している2人のラオス出身者は、現在各部門のリーダーをしていて、後から入ってきた難民定住者や日本人に指導、助言をする立場になっています。この9年間に退職した難民定住者は2人だけで、ほとんどの人が続いています。当初雇用した2人を中心に真面目で優秀な難民定住者が多かったのでしょう。
 そのほかには、2年前から社員旅行の行き先が海外になりましたが、パスポートを持たず国を脱出して来た難民定住者は、通常の手続きだけでは不十分で、結局出入国の手続きが間に合わず参加できなかったことがありました。彼らが外国に出入国するにはいろいろな手続きが増えることを知り、今年はひと工夫し、職業相談員にも相談して前もって手続きを始めたので全員が参加できると思います。このように役所の手続きなどセンターで学ぶだけでは理解できないことも多く、煩雑なものがありますが、彼らが分からないことには相談にのるようにしており、先日は生命保険の加入について説明会を開きました。
 また、丹沢山でバーベキューをしたり、ラオスのお正月のお祝い会に招待されてラオス料理をご馳走になったりして他の従業員を含め異文化交流も楽しんでいます。

今後の課題
 勤続年数の長い難民定住者たちは、新卒の従業員が入ると機械の操作や仕事の手順を説明するほか、言葉の分からない難民定住者の通訳をかって出るなど大切な存在となっています。従業員の2割を難民定住者が占めていることもあり、彼には即戦力という立場ではなく、今後はチームのリーダーとして活躍していってもらうことを望んでいます。それには技能のレベル向上に努力するのはもちろんのこと、指導力をつけることが必要になります。指導者には、専門的な技能、円滑な人間関係、職場のモラルなどを持ち合わせることが期待されるので、是非がんばってほしいものです。いずれにせよ、外国人の雇用に成功した理由は、難民定住者が会社の方針を理解し、中心的役割を果たしてくれているからだと思っています。

広報誌「ていじゅう」第103号より転載

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