学歴:中学校中退
年齢:40代の半ばを超している
職歴:母国で漁師(魚釣り)をしていた
日本語:「こんにちは」程度の挨拶くらいしか話せない
その他:通勤手段となる自動車や二輪車の免許を持っていない |
就職支援で関西支部にくる相談者のプロフィールの一例である。徐々に日本の景気が回復してきたといえ、彼等の就職支援をすることは非常に困難な面がある。
では、就職困難な難民定住者はどのようにして就職しているのか、また職業相談員はどのように就職支援をしているのか。職業相談員になって1年半、最初のころは関西支部に寄せられる難民定住者からの声、また、難民相談員(生活相談担当の相談員)からの情報でしか就職状況を知り得ることができなかった。だが、公共職業安定所への動向などで難民定住者と直接会う機会も増え、事業所を訪問するうちに、徐々に難民定住者の就職状況などをつかめるようになってきた。職を見つける方法として一番多いのが、友達の紹介のようだ。予約なしで、いきなり友達と職場まで一緒に行く。その場合、履歴書や職務経歴書などを持っていかないのがほとんどのようだ。日本でも縁故での就職があると思うが、いきなり職場に行くという行動が大胆でもあり、非常識にも思っていたところ、まずまずの就職率のようだ。職場に日本語が達者な同国出身の先輩が勤務しており、日本語能力が不十分な求職者でも援助されながら働ける状況のため就職に至っているのであろう。このような背景から相談員の就職支援も、まず、日本語が達者な同国出身者がいる事業所を探すことから始めている。難民定住者が大勢勤務している事業所はおおかた把握しているが、1人、2人くらいが勤務する事業所を完全に把握するのは困難である。少しでも多くの情報を得るために公共職業安定所の担当者等と情報を交換しながら、針の穴をつつくように探し当てる努力を続けている。
また、難民定住者自身の努力も必要だ。日本語が十分にできない人には、近くの日本語ボランティア教室を紹介したり、ある程度の日本語が話せ、生活に多少ゆとりのある人には自動車の免許や就職に有利な資格の取得方法を紹介したりしている。また、セミナーなどを開催し、難民定住者自身が就職に関する知識を深めることを提案している。
今年に入り自立支援へのサービスを明確にするため「求職相談のサービスについて」の独自のマニュアルを日本語とベトナム語で作成した。例えば、求職者から事業所へ求人をしているか問い合わせをしてほしいとの依頼があったので、電話の仕方、言い回し等を説明して自分で連絡するように伝えた。最初は、ためらっていたが、思い切って問い合わせたところ面接後に採用が決まったと、大喜びで連絡があった。採用が決まった以上に自分一人でやれたことが嬉しいようだった。就職活動以外にも、日本で生活して行く中で起こる疑問や困難を乗り越え、自分で解決できたという自信が自立につながるものだと確信している。
アジア福祉教育財団機関誌「愛」2004年12月発行より転載 |
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