2019.2.20
アジア福祉教育財団設立40周年・難民事業本部設置30周年記念式典を開催しました
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感謝状及び記念品を贈呈する綿貫理事長(左)と、ハリー神父(右) |
2008年12月12日、アジア福祉教育財団は設立40周年、難民事業本部は設置30周年を迎えるに当たり、これまで当財団の事業にご支援、ご協力をいただいた関係者の皆様に感謝の意を表わすため、記念式典を開催しました。
当財団は、ベトナム戦争によって生じた孤児、母子等救済のため1969年12月12日に設立され、現在はアジア地域の福祉事業の向上と交流を目的に福祉関係者の日本への招へい事業を行っています。また、1979年11月、日本政府からの委託を受け、インドシナ三国の難民の定住促進の事業を行う目的で、難民事業本部を設置し、現在まで難民、難民認定申請者の事業を継続して行っています。
式典では、難民支援事業の功労者であるカトリック淳心会司祭のヘンドリックス(通称ハリー)・クワードブリット神父に対し、感謝状及び記念品を贈呈しました。ハリー神父は、インドシナ難民の受け入れを開始した当初、姫路定住促進センター名誉所長として、地域住民に難民支援の重要性を説いて回り、地域社会の理解を得ることに努められ、また子どもの進学や就職先の確保に東奔西走され、現在も自立困難者の精神的支えとして、難民の生活安定に寄与されています。
受賞したハリー神父は、「当時は難民を受け入れることが大変だったが、今は難民が呼び寄せた家族が同じよう問題に直面している。これからも共生社会の実現を実践していきたい」と答辞を述べられました。
主催者挨拶として、当財団綿貫民輔理事長より、アジア福祉教育財団と難民事業本部の設立、設置の経緯と、今後果たしていく責務について決意表明がありました。当日は麻生総理大臣より祝電を頂き、また、来賓を代表して中曽根弘文外務大臣(西村康稔外務政務官代読)と西川克行法務省入国管理局長よりご挨拶を賜ったほか、関係省庁、協力機関、多数の難民支援関係者にご列席頂きました。
綿貫民輔理事長の挨拶(抜粋)
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綿貫民輔理事長 |
(財団設立の経緯)当財団設立当初を振り返りますと、インドシナ半島を旅行して帰国された元衆議院議長の松田竹千代先生が「南ベトナムには戦争で親を失った孤児が沢山いる。悲惨な状態だ。我々も何らかの役割を果たすべきではないだろうか」と訴えられたのがきっかけとなり、国会議員の歳費から一定期間にわたり所定の金額を拠出して財団法人を設立することが決まったのでした。続いて財団の活動の方向を探るため、奥野誠亮先生、桜内義雄先生を代表に、それに社会福祉の関係者も加わって、南ベトナムの視察が行われました。その結論は孤児のための入所施設をつくり、ここで職業を身につけさせ、自立出来るようにすることになったのであります。
(アジア福祉関係者支援事業の経緯)当時の奥野誠亮理事長は今後の対応を考えるため財団事務局長を伴って東南アジアの視察に向かい、さらにタイの難民キャンプを訪れました。その結果、さしあたりの活動として新たにアジア諸国の福祉や教育のための助成、またアジア各国で福祉に携わる方々をわが国に招へいする事業を開始いたしました。福祉関係者の招へい事業は昭和53年10月にタイの一行6名が来日して以来、今では17カ国を対象に毎年4回に分け20名ずつ計80名がわが国を訪れるまでに充実が図られております。
この方たちには社会福祉だけではなくわが国の政治、歴史、文化、伝統その他の事情にも触れていただき、日本の国柄に対する理解を深めてもらっております。世界とまでは言わない、少なくともアジアが安定するため日本も何がしかの役に立ちたい、それが私たちの責任ではないか、という話し合いから始まったわけでありますが、財団の力には限りがあり社会福祉の関係者に限定しているわけでございます。たとえ小さな事業であっても長く続けることによって成果がえられるものと考えております。
(難民事業本部設立の経緯)昭和53年2月、衆議院予算委員会での奥野理事長(当時)の園田直外務大臣に対する「日本に逃れてきたインドシナ三国の難民に対し、同じアジアの国民として保護の手を差し伸べるべきである」との発言が契機となって、政府がインドシナ三国の難民定住促進センターを設置し、閣議了解を経たのち、その運営を当財団に委ねられました。そのため昭和54年11月、当財団に難民事業が設置されました。
爾来これまで日本に定住したインドシナ難民は1万1000人余りになり、地域社会や、企業において真面目な人材として評価され、それぞれ自立し活躍しております。
インドシナの政情も安定したことから、インドシナ難民の受け入れは平成17年末をもって終了しましたが、他方、平成14年8月からは「難民条約」に基づき法務大臣が認定した難民、いわゆる条約難民に対しても定住支援の対策が講じられることになり、今日に至っております。
(今後の決意)当財団は国益や人権ときわめて結びつきの強い公益事業を実施しております。国際情勢の変化を常に視野に置き、当財団が果たすべき役割を見極めながら、業務のより一層の推進に励んでまいりたいと決意を新たにしておりますので、倍旧のご指導、ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願いいたします。
中曽根弘文外務大臣の祝辞
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中曽根弘文外務大臣の祝辞を代読される西村康稔外務政務官 |
本日ここに、アジア福祉教育財団設立40周年を、また、難民事業本部設置30周年を迎えられたことを心からお祝い申し上げます。
今から40年前、このアジア福祉教育財団はベトナム戦争による戦災孤児等の救済を目的として設立され、まだ戦闘の激しい最中、サイゴン市郊外に職業訓練所の建設・運営に着手し大勢の戦災孤児や母子の方々の救済に取り組まれました。その後、アジア各国の福祉関係者の招へい等を実施するなどして、アジア地域内の社会福祉の向上に多大な貢献をされてこられました。また30数年前、インドシナ三国では相次いで政変が発生し社会主義体制となり、新しい体制の下で迫害を受ける恐れのある人々や新体制になじめない人々が周辺国への流出を始めました。これにより我が国では、インドシナ難民の受け入れが課題となっていたところ、貴財団は政府からの難民定住支援事業の委託を快く引き受けていただき、貴財団内に難民事業本部を設置し、以来、貴財団は国内に受け入れのためのセンターを開設するなどして、1万人を超えるインドシナ難民の受け入れ、定住支援のための最善の努力を果たしてこられました。
その後、政府が貴財団に委託する事業は、難民認定申請者の保護や条約難民に対する定住支援へと、順次拡大してまいりましたが、このような活動が、これまで素晴らしい実績を挙げてこられたのは、貴財団のシンボルマークである「愛」の文字のとおり、奥野誠亮名誉会長、綿貫民輔理事長をはじめ、役員の方々、職員一人ひとりの皆様の献身的なご尽力によるものであり、さらには国連難民高等弁務官事務所、関係団体並びに各方面の、貴財団に対するご理解と大きなご支援の賜物であると思います。
我が国が、国際社会において一層責任ある役割を果たしていく上で、貴財団が培われた実績、知見は貴重な財産であると確信しております。今後とも引き続き、我が国の国際協力の場面で、ご協力をお願い申し上げますと共に、貴財団並びに関係者の皆様の今後益々のご活躍、ご発展を心からお祈りしつつ、私からのご挨拶とさせて頂きます。
西川克行法務省入国管理局長の挨拶
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西川克行法務省入国管理局長 |
本日、アジア福祉教育財団が設立40周年、また難民事業本部が設置30周年を迎えられたことを心からお祝い申し上げます。
ここに、「財団法人アジア福祉教育財団設立40周年・難民事業本部設置30周年記念式典」が開催されるに当たり、一言御挨拶を申し上げます。
まず最初に、財団法人アジア福祉教育財団の奥野誠亮名誉会長並びに綿貫民輔理事長を始めとする職員の皆様方の、難民関係事業における長年にわたる御努力に対し、心から敬意と感謝の意を表したいと思います。
アジア福祉教育財団におかれましては、昭和44年、ベトナム戦争によって生じた大勢の孤児、母子などの救済を目的に「ベトナム孤児福祉教育財団」の名称で設立され、以後、長年にわたって、アジア諸国の社会福祉施設への援助事業や福祉関係者の我が国への招へい等を通じて各国の社会福祉の発展に御尽力されてこられました。
また、貴財団の難民事業本部につきましては、昭和54年、当時、我が国の課題となっていましたインドシナ難民の方々に対する各種支援事業を行う目的で設置されております。我が国はインドシナ難民や条約難民の方々を1万人以上受け入れておりますが、今日まで難民の方々の定住が進展いたしましたのは、難民事業本部が実施する日本語教育や就職の斡旋など、同本部の職員の方々による暖かい対応の賜物であると存じております。
昨今の国際社会を見ますと、世界の様々な地域で、紛争が多発しており、多くの人々が平穏な生活を脅かされ、その生活を放棄せざるを得ない境遇に追い込まれていることは、誠に残念なことであります。この様な結果、我が国においても近年、難民認定申請者は急増しており、我が国が責任を果たしていく上で、貴財団の御協力は、ますます重要性を増しております。
今後とも引き続き御協力をお願いいたしますと共に、アジア福祉教育財団を始めといたします関係者の皆様の、なお一層の御発展と御活躍をお祈り申し上げ、私の祝辞とさせていただきます。
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