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2003.3.15
シンポジウム「日本の難民受け入れ」
難民事業本部関西支部では、「私たちにできることは何か」をテーマにセミナー「私たちの難民問題」を97年より神戸YMCAと共催しており、この一環として2003年3月15日(土)に日本のインドシナ難民、条約難民の受け入れについて考えるシンポジウムを開催しました。
パネリストとして、ビルマ民主化同盟書記長のミョー・ミン・トウッさんに条約難民の立場から、日本在住ベトナム人協会関西支部代表のグェン・バン・コーイさんからはインドシナ難民の立場でご自身の経験を中心としたお話を、また、外務省人道支援室事務官の山本格さん、特定非営利活動法人難民支援協会事務局長の筒井志保さんには、難民を支援する立場から今後の課題等についてお話しいただきました。
80名を超える参加者からは「難民問題はマスコミ情報でしか知らなかったので、当事者である2人のパネリストの話はとてもインパクトがあった」「難民問題を自分の仕事(教員)や地域住民としての立場で身近に考えることができた」などの感想が寄せられました。
ミョー・ミン・トウッさん(ビルマ民主化同盟書記長)
日本のビルマ人難民の状況は、法務省に12年間で200人以上難民認定の申請をして、その内39名が認定されました。条約難民として認定されるメリットは、面倒な毎月の入国管理局への出頭がなくなったことや、ハローワークで求職ができる、海外に渡航できるようになったぐらいで、生活はあまり変わりません。
在日ビルマ人難民は、政治的な理由による国外脱出がほとんどで、現在も故郷にいるビルマ人の支援など政治的な活動を続けており、日本社会から支援してほしいとはなかなか言いにくいです。また、いつかは国に帰るから日本社会からの支援はいらないという考えもあります。
在日ビルマ人難民たちのキャリアが日本社会で役立つとともに、本人たちの生活も進歩的に変わってもらいたいので、その人たちのキャリアに関しての日本語と資格を学べるプロジェクトを外務省人道支援室や国際救援センター(以下、センター)に作ってほしいです。
そうすれば、いろいろな国からきた難民たちの人材が日本の社会でお互いに役に立つでしょう。センターのプログラムはインドシナ難民には合うかもしれませんが、多少日本語が解る在日ビルマ人難民には合わないというわけではありませんが、これまでの生活と活動のリズムが崩れるかもしれません。
グェン・バン・コーイさん(日本在住ベトナム人協会関西支部代表)
定住者が抱える問題はさまざまです。ひとつは、センターで受ける3ヵ月(現在は約4ヵ月)の日本語教育が十分でないことです。日本語能力が不十分なまま暮らすには困難が多く、勤務先でのトラブルや行政手続き、子供の教育などに支障が起こる原因となります。また、日本で育った子供たちがベトナム語やベトナムの文化を忘れてしまうという問題もあります。さらに、高齢者の老後の不安も大きいです。言葉の問題を克服できるよう、地域・公民館・市役所などでもっとたくさん日本語教室を開いてくれるといいと思います。市役所、入国管理局などの行政機関での手続きに翻訳や通訳のサービスがあると、時間も節約でき、内容も理解しやすくなりますし、自分たちも解決にむけて努力することができます。私たちベトナム難民も、少しでも日本社会に貢献していきたいと思っています。
私の場合、日本の貨物船に救助された恩を非常に感じており、個人的にはこれ以上何も要望することはできないと思います。しかし、定住者全体には生活上の困難、トラブルが多いのが実情です。日本語教室の充実や行政機関の多言語対応など、言葉の問題を中心に取り組んでほしいと思います。また、仕事に関しては、できるだけ外国人を採用してほしいと思います。
山本格さん(外務省国際社会協力部人道支援室事務官)
日本では難民認定後の生活支援が全くなく、条約難民自身の自助努力に頼っていました。今後は条約難民の方々へもインドシナ難民と同じような定住支援をしていきます。6ヵ月間センターに入所し、主に日本語教育(生活日本語−読む、聞く、話す、書く)を約4ヵ月間・572時限受けます。この数字は、インドシナ難民受入れのとき、当時の文部省で検討した結果決められ、そのまま運用されています。条約難民は日本である程度生活の基盤がある人も多く、合宿形式で6ヵ月の研修を受けられるか分からないので、平成15年度は20名の入所を予定しています。出身国や日本語習得度もばらばらであるため合宿形式がふさわしいかどうかは分からないところでもありますが、インドシナ難民受入れのノウハウを生かし、今後実施しながらニーズを確認するなどして検討していきます。
今日は質問などを通じて、皆さんの関心のある点を知る大変いい機会になりました。皆さんの声をよく聞いて、今後も難民・難民認定申請者の支援に取り組んでいきたいと思います。
筒井志保さん(特定非営利活動法人 難民支援協会事務局長)
1999年「難民認定申請者、難民と認定された者への支援を専門的に行う」ことを目的に難民支援協会を立ち上げました。当協会では現場の声を伝えなければならないということで、2001年に条約難民25名・申請者75名合わせて百名へ難民事業本部の委託を受け、聞取り調査を行いました。結果、1経済的困窮、2公的扶助、3医療、4日本語などの問題が浮き上がってきました。
このような状況を、どのように改善していけるかは、
1 情報提供体制の充実:専門の相談員を養成する。地域での窓口を充実させる。
2 申請者へのケア:現状では申請者への支援がないため、認定を受けるまでの間に困窮してしまいます。最悪の場合はホームレスとなり路頭に迷ったり、病院へ担ぎ込まれたりします。申請中から認定を受けた後まで、一貫性のある支援のスキームを考えていくべきではないかと思います。
3 政策提言、世論喚起:私たちの支援は、目の前の現場(ケース支援)に追われて終わるのではなく、問題を社会全体で共有していく必要があります。ただ問題があると言うだけでなく、どのように変えていけるか、今日のように難民の人からの体験を聞いた機会に、もし近くに難民や外国人がいたらどのように接するか、支援をするかを考えてもらえること。また彼らの姿を多くの人に伝えていくことも大切なことであると思います。また、政府にも難民の現状の改善を働きかけていくなど、総合的に考えていく必要があると思います。
