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2013.2.26

スーダン南部地域における難民等の状況 (2005年3月30日〜4月12日の現地調査)

1.難民発生の背景

スーダンでは、1956年のスーダン共和国の独立により、政治権力を北部のアラブ系イスラム教徒が握ったため、南部のキリスト教徒との間で対立が起こりました。1983年になると南部のキリスト教徒がスーダン人民解放運動・軍(SPLM/A)を結成して内戦が激しくなり、争いは近年まで21年間続きました。 ようやく2005年1月9日にスーダン政府とSPLM/Aとの間で最終和平合意が署名され、4月11日・12日、ノルウェーのオスロで開かれた復興支援会合で、今後3年間に45億ドル拠出されることが決まりました。

2.国内避難民および難民の数

スーダンでは、この内戦により200万人が死亡し、国内避難民となって北部地域や首都ハルツーム等に避難した人、また難民となって周辺国に避難した人が400万人に上ります。 周辺国に避難した難民の数は、ウガンダ223,000人、エティオピア88,000人、コンゴ民主共和国69,000人、ケニア60,000人、中央アフリカ36,000人、エジプト30,000人の計506,000人です(UNHCRのプレスリリースによる)。

3.国内避難民および難民の帰還

2002年に始まった和平努力により、10万人以上の国内避難民が南部地域に自力で帰還したといわれています。また、今年に入ってからは、周辺国から南部地域へ帰還した難民および他の地域から帰還した国内避難民(以下、「帰還民」という)や、南部地域の状況を見にくる人がいますが、帰還民の正確な数字は把握できていません。

4.国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の支援活動計画

UNHCRは、スーダン政府支配地域のジュバ(Juba)、SPLM/A支配地域のルンベック(Rumbek)、イェイ(Yei)に事務所を開設し、活動を実施しています。近日中にはSPLM/A支配地域のカジョケジ(Kajokeji)、ヤムビオ(Yambio)にも事務所を開設し、支援活動を強化する予定です。 そして、雨期が明ける2005年10月ごろから、ウガンダ29,000人、エティオピア25,000人、コンゴ民主共和国15,000人、ケニア16,000人、中央アフリカ20,000の計約11万人を組織的に帰還させる予定で、そのための受入準備を早急に進めているところです。 UNHCRは、難民の帰還を促進するため、難民が避難していた周辺国の難民キャンプと同様の環境を受入予定地の村に整える方針です。UNHCRの支援活動の優先分野として、教育、給水・衛生、保健サービスの3点を挙げています。また、支援の対象者は帰還する難民および国内避難民、さらに地元住民も含まれます。

5.帰還民の受入予定地

UNHCRの支援により建設した井戸(イェイ中央部)
今回はスーダン政府支配地域であるジュバ及びその周辺の村、SPLM/A支配地域であるルンベック及びイェイを訪問しました。 (1)ジュバの中心からから西へ27kmほど行ったコダ(Koda)村の副村長によると、村の人口は2,000人程度で、最近は帰還民が増加しているとの話でしたが、人数は把握していないとのことでした。 村に診療所はあるものの機能していませんでした。井戸は1ヵ所あるだけでしたが、今後の帰還民の増加に備えて、スウェーデンのNGOが井戸を掘るための水源調査をしていました。 (2)SPLM/A支配地域であるルンベックとイェイでは、カトリック救援サービス(Catholic Relief Services;CRS)、ノルウェー・レフュジーカウンシル(Norwegian Refugee Council;NRC)等の国際NGOが、学校や病院の再建、医療機材等の支援、井戸の建設を開始したところでした。まだ町内の支援が始まったばかりで、周辺の村への支援は活動を行うNGOがいない地域もあります。

6.NGO参入の可能性

(1)南部地域は中央政府のあるハルツームから地理的にも離れているため、以前から社会開発が遅れており、また長年の内戦により、インフラ等はまったく整備されていません。従って、南部のすべての地域、すべての分野でニーズがあります。 (2)UNCHRは、支援活動の優先分野である教育、給水・衛生、保健サービスを実施するNGOを求めています。特に支援対象者に対しては、地元住民主体の支援活動(Community based projects)の実施を求めています。 (3)国連地雷対策サービス部(UNMAS)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、スーダン地方政府関係者等からは、地雷関連の地雷回避教育・地雷被害者支援、HIV/AIDS関連の啓発広報・HIV感染者への支援、車両整備、職業訓練、退役軍人の社会復帰支援等の分野へのニーズがあります。 (4)NGOがスーダン政府支配地域であるジュバで活動するためには、政府の担当省庁の許可が必要です。また、SPLM/A支配地域であるルンベック及びイェイにおいては、SPLM/Aの許可が必要ですが、UNHCRの職員によれば、SPLM/AはNGOの参入を歓迎しているとのことです。

7.今後の課題

小学校の校庭で実施されているHIV/AIDS啓発活動(ルンベック)
(1)今回の現地調査では、スーダン政府支配地域であるジュバを訪問した後に、SPLM/A地域であるルンベック及びイェイを訪問しましたが、ジュバからルンベックへの移動は、ハルツームから隣国ケニアへと出国し、ケニアのナイロビとロキチョキオを経由して、再度スーダン南部地域へ入国しました。近い将来、ハルツームからルンベックへ直接移動できる予定ですが、当面の間はSPLM/A支配地域で活動を行うためには、ナイロビまたはロキチョキオからアクセスすることになります。 (2)南部地域は、最終和平合意後6年間はSPLM/Aが治めることになっており、南部地域の首都は、現在のSPLM/A支配地域のルンベックからスーダン政府支配地域ジュバに移転する予定ですが、具体的な移転作業は始まっていないようです。従って、現地で活動するNGOのカウンターパートナーとなる地方政府関係者の決定が必ずしも明確かつ迅速に行われない場合があると、国連専門機関やNGOの職員が話していました。 (3)地雷については、組織的に難民の帰還を実施するため、主要道路における地雷除去が進められています。しかし、UNMASの現地事務所の話では、地雷の埋設状況を正確に把握できておらず、帰還民の受入予定地の地雷に関する正しい情報がないとのことでした。現在のところ、それら地域の地雷除去の計画は進んでいないのが現状です。 (4)HIV/AIDSについては、スーダン国内では、約60万人がHIV感染者で、11,000人がAIDS患者といわれていますが、正確なデータはありません。南部地域においてはHIV感染者の比率が高いといわれています。また、スーダン難民が滞在している周辺国のHIV感染者の比率はスーダン国内よりも高く、それらの周辺国から難民が帰還することから、UNAIDSの現地職員は、近い将来感染者数が急激に増加することを懸念しており、早急に対策が必要であるといっています。 (5)現在のところジュバでは主要な物資をハルツームからの空輸に頼っており、調達のための日数に時間を要し、また経費もかかるとのことです。 (6)NGOが活動を実施するためには、現地に事務所を開設しなければなりませんが、UNHCRのイェイ事務所によれば、イェイには適当な建物はなく、事務所そのものの建設から始めなければならないようです。 ⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 531KB)

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