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2003.11.1

セミナー「わたしたちの難民問題」(2003年11月26日)

難民事業本部関西支部では2003年11月に「わたしたちの難民問題」を神戸クリスタルタワーで神戸YMCAと共催しました。追加の緊急報告も含めて全6回のセミナーに計255名にご参加いただき、ビルマ、ラオス、ベトナム、アンゴラ、パレスチナの難民についてNGOや国連のスタッフ、ジャーナリストとして現地を訪れた講師から、難民の暮らしや支援活動についてのレクチャーを聴きました。 ここでは、林まゆみさん講演の「アンゴラ難民」の概要を紹介します。

「アンゴラ難民」 林まゆみさん(元「難民を助ける会」メヘバ事務所駐在員)

私は日本のNGO「難民を助ける会」の職員として、2001年12月から2003年7月ザンビアのメヘバ難民定住地でアンゴラ難民への支援を行っていました。 1.メヘバ難民定住地 ザンビアは内陸国で首都はルサカです。面積は日本の約2倍で人口は約1,010万人です。ザンビアにいる難民は約25万人で、そのうちアンゴラ難民は約20万人です。2004年までに約20,000人を帰還させるというUNHCRの計画が立てられています。難民の定住地はザンビアには4つあり、貧しいながらも支援が比較的行き届いています。 メヘバ難民定住地はザンビアの北西部州にある1番大きい定住地です。1971年に設置され、面積は約656平方キロメートルで、約48,000人います。その内9割の約42,000人がアンゴラ難民です。 クリニックは定住地内に6ヵ所、学校は9年生制の小学校が6ヵ所と、3年生制の高校が1ヵ所あります。マーケットは8つに分かれたゾーンに1つずつあります。 2.難民を助ける会の活動内容 難民を助ける会は、1984年にメヘバ難民定住地に現地事務所を設立しました。最初は給水活動から始まり、農業、保健、教育などの分野に活動が広がりました。現在は、アンゴラ難民帰還支援のための地雷回避教育を実施しています。 まず2003年6月まで実施した給水プロジェクトでは、以前は井戸の掘削をしていましたが、近年は井戸の改良やメンテナンスを行っていました。例えば、難民による手堀りの井戸には、ほこりやゴミ、小動物の死骸等が入ってしまい、衛生上よくないので、コンクリートのふたで被い、汲み上げようのハンドポンプを取り付ける作業を行いました。 2002年12月まで実施した農業プロジェクトは、栄養不良児対策として、ビタミン不足を解消するための野菜栽培の指導をしていました。難民は、定住地に来て2年間は食料配給を受けることができますが、同時にくわなどの農機具と土地を供給してもらい、2年後に自給自足ができるように準備をします。 同年12月まで実施した保健プロジェクトも、農業プロジェクトと連携して、栄養不良児対策を目的としていました。穀物の一種であるメイズだけを子ども達に与える家庭が多く栄養バランスが悪いのです。このプロジェクトで栽培する大豆は、彼らにとって馴染みの薄い食材であるため、調理指導を合わせて行っています。また、マラリアで亡くなる子どもが多いにもかかわらず、原因が蚊であることを知らない人が多いため、予防についてディスカッションを交えながら教えています。 2003年5月まで実施した教育プロジェクトでは、コミュニティスクールを作り定員オーバーや費用負担をできないために小学校に通えない子どもたちを受け入れていました。同年11月からは、難民のニーズに合わせ帰還を支援するため、大人向けのポルトガル語教室を運営しました。ポルトガル語はアンゴラの公用語です。 3.アンゴラ難民の帰還 アンゴラは1975年の独立後、27年間にわたり内戦が続きました。2002年2月に反政府勢力のリーダーであるサビンビが暗殺された時点では、メヘバのアンゴラ難民は母国帰還の実現に対して懐疑的でした。しかし、2003年1月の意向調査では64%の者が2003年に帰還することを、34%の者が2004年に帰還することを希望しました。 2003年4月に難民代表によるアンゴラ視察が行われ、同年5月に帰還登録が開始されるとともに出発センターや休憩所などの建設が始まりました。帰還開始日前日の7月10日、難民たちは住居付近にある集合場所に集まり、本人確認や健康診断を受けた後、トラックで出発センターへ移動しました。出発センターでは荷物を預け入れたり健康診断を受けると同時にNGOによる講習を受けます。JRS(イエズス会難民サービス)により平和教育が、YMCAによりエイズ教育が行われており、難民を助ける会では地雷回避教育を行っています。 UNHCRが中心となって運営する帰還民の一時収容所(2,000名収容)がアンゴラのカゾンボにあり、帰還民はここで登録と健康診断の後、2ヵ月分の食料と生活用品及び建設キットを受取ります。また、ここでも地雷回避教育やエイズ教育、平和教育を受けます。一時収容所から450m離れたところは地雷源です。 アンゴラは世界有数の地雷埋没国で、1,350万の人口に対して600万個〜1,500万個の地雷が埋まっているといわれています。旧共産圏の地雷が多いのが特徴です。地雷被害者数は報告されているだけで2000年840人、2001年660人で、これは氷山の一角にすぎません。全ての地雷を除去するには少なくとも十数年かかると考えられ、人々は地雷と共存することを余儀なくされているのです。 4.難民を助ける会による地雷回避教育 地雷回避教育とは、地雷のある地域で生活していく上で、地雷事故に遭わないためにはどうしたらよいか、何に注意したらよいかを伝えるための教育です。対象年齢によって、布製ポスター、写真、迷路やルーレットなどのゲーム、人形劇を使ったり、パンフレットを配布したりする方法で行っています。村、学校、地雷情報センター、帰還登録センター、出発センターにおいて一般難民向けに教育を行うと共に、帰還バスやトラックの運転手や援助団体職員に対しても教育を行っています。 地雷回避教育の前と後で難民の子どもたちに地雷回避についての調査をしたところ、教育を受ける前には道に落ちている物(プラスチックの容器や針金など)を見つけると拾ってしまうと答えた子どもが99%であったのに対して、教育後は19%に減っていました。また、地雷があることを知らせる目印 (標識)が分かる子どもは教育前の3%から79%に増えていました。

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