2013.2.26
【難民情勢講演会シリーズ】
人道目的の移民の受け入れ−諸外国の第三国定住の状況
(2004年3月26日の講演)
難民事業本部は世界の難民発生地域の政治情勢と難民状況についての最新情報を提供するため1998年から「難民情勢講演会」を開催しています。今回は第13回目として2004年3月26日(金)、国際移住機関(IOM)ベトナム代表のアンドリュー・ブルース氏(ニュージーランド出身)を講師とし、「人道目的の移民の受け入れ−諸外国の第三国定住の状況−」の講演を行いましたので、その一部を紹介します。
講師のブルース氏はジュネーブにあるIOM本部、ニューヨーク事務所勤務を経て、2003年7月よりIOMのベトナム駐在代表を務めていますが、IOM勤務は通算20年を超えています。
1.各国の第三国定住受け入れの特徴
第三国定住を多く受け入れている国は、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ諸国で、特にフィンランド、ノルウエェー、スウェーデン、デンマークなどのスカンジナビア諸国に特徴があります。
アメリカは受け入れ基準に優先順位があり、一番目が庇護国において危険にさらされ、かつ強制的に帰還させられる可能性のあるケース、二番目が特定したグループ(最近のケースでは、ケニアへ避難した12,000人のバンツー族の難民(注))、三番目が家族再会のケースです。特に三番目の家族再会のケースでは、1992年頃より旧ソ連地域やベトナムからの合法出国計画(ODP)に基づく難民を多く受け入れており、2002年と2003年は30,000人台となっています。
カナダは一般的な暴力の犠牲者も受け入れており、アフガニスタン、コロンビア、スーダン、イラン、コンゴ民主共和国などからの出身者で、彼らは個人的な迫害を証明する必要はありません。
スカンジナビア諸国は一般医療や精神医療を必要とする困難なケースを受け入れています。
(注)バンツー族の難民とは、モザンビーク及びソマリアへ200年前に奴隷となってきた人々の子孫で、1992年のソマリア内戦でケニアに避難した難民。
2.第三国定住者に対するIOMの支援
庇護国から出国し、受入国への入国に際してのIOMの支援は、受入国の文化紹介、庇護国における国内移動、国際線搭乗の際の移送時の費用(アメリカとカナダは返済の必要がありますが、オーストラリアは返済の義務はありません)、国際空港での乗り継ぎ支援、受入国へ入国する際の支援などです。
Q | : | 一般的な暴力からの避難として広い意味での難民を受け入れているカナダや、困難なケースを受け入れているスカンジナビア諸国は、条約難民も受け入れているのか? |
A | : | 困難なケースと条約難民の受け入れの関係は分からないが、デンマークやアイルランドは条約難民も受け入れている。また、オーストラリアは受け入れた難民の家族も受け入れている。 |
Q | : | スカンジナビア諸国は医療を必要とするケースを受け入れているが、政府が意図的に受け入れているのか? |
A | : | 100%だとは思わないが、意図的に受け入れていると思われる。人道支援の観点から見て、世界に貢献していると考えている。 |
関連記事
- 2022.02.04
- 難民理解講座を墨田区役所で行いました(2021.12.17)
- 2022.02.04
- セミナー「わたしたちの難民問題2021/Vol.22」を開催しました(2021.12.1,8,15)
- 2021.11.12
- 難民理解講座を共立女子大学で行いました(2021.10.21)
- 2021.02.08
- セミナー「わたしたちの難民問題2020/Vol.21」を開催しました(2020.11.18、25、12.9、16)
- 2020.12.09
- 広報動画を撮影しました(2020.3)