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2005.3.18
国際救援センターの社会生活適応指導「社会人との懇談」
国際救援センターでは、社会生活適応指導の一環として「社会人との懇談」という講義を開き、センターを退所した先輩定住者を講師に招いて、日本で生活する上での注意事項や体験談などをお話してもらっています。今回は2005年3月18日に、在日33年、ベトナムコミュニティーで活動する難民定住者からお話を伺いました。
以下に講義の概要をご紹介します。
(講師)これから私が話すことはあくまでも個人的な経験に基づいたことで、住む場所や状況によって違います。私の話すことがすべて正しいわけではないので一つの参考にしてください。
<日本の特色について 自由と民主主義>
先ず日本全体と社会の問題を話したいと思います。
もうご存知のように日本は民主主義国家ですが、象徴という存在で天皇がいます。日本では首相を総理大臣といいますが、ベトナムでいうと国家主席のような存在です。日本では総理大臣と内閣が行政を動かしています。日本の何が良いかというと、自由と民主主義の点です。例えば選挙ではいつも投票率は40%くらいです。投票はしてもしなくても個人の自由です。ベトナムでは投票率は99%、党から誰に投票するかを指示され投票日には強制的に選挙に行かされます。
<礼儀正しさと整理整頓>
日本人の特色を挙げますと、良い点は、先ず礼儀正しいこと。そして家の中を整理整頓することだと思います。日本は家が小さくて狭いです。ベトナムでは家が大きいのでどこに物を置いてもいいのですが、日本では置く場所が限られるので整理整頓をするのでしょう。
日本人同士が挨拶をするとき、普通は15度くらい腰を前方に曲げるのですが、相手が偉い人のときはほぼ45度に曲げて挨拶します。これは日本文化紹介の本に挨拶の仕方として書いてあります。これを見て日本人は礼儀正しいと思う人も多いと思います。
<学歴>
一般的に日本人の学歴は高いです。ベトナムでは大学を卒業したというと偉い、珍しいということになりますが、日本では大学を出ている人が多いのでたいして珍しいことではないのです。
日本では中学卒業までは義務教育で学費は無料です。個人的にかかるお金は修学旅行や制服などです。ベトナムでは先生のために募金をするということがありますが、日本ではそのようなことはありません。
<勤め人と自営業>
日本ではほとんどの人がどこかに勤めています。自営業・大企業の経営者もいますが、圧倒的に多いのはサラリーマンです。一方、ベトナムでは自営業が多いです。ベトナムではどんな形でも自営したいと思っている人が多いですが、日本で自営業を営むのはそれほど簡単なことではありません。私自身、日本で生活して30年になりますが、一度も自分で店を経営しようと考えたことはありません。
<勤務時間>
日本の会社勤務は基本的には厳しいですが、きちんと事前に届出をすれば休暇を認めてもらえます。休暇をとりたいときには、事前に申請して許可を得ます。
ベトナムから日本に来て、生活環境が変わり、不自由を感じるかもしれませんが、慣れるしかありません。
<外国で生活するときの壁について>
1. 言葉の壁
小学生の子どもたちは、日本語を自然に覚え、使い方も自然で、すぐ慣れるからいいのですが、大人が生活する上で、言葉は一番苦労する問題です。実際、私の例でも日本に来て30数年になりますが、言葉はこれ以上勉強しても思うような進展が期待できません。
2. 資格・技術の壁
ベトナムで何か特殊技術や専門知識を取得していても、日本の資格として認められないことがあります。友人の場合、ベトナムの大学で勉強して発電関係の仕事をしていましたが、日本ではベトナムに居たころのような仕事はできませんでした。ベトナムの資格や技術が日本では通用しない場合もあるのです。
<同胞との付き合い>
日本には同国人のコミュニティーがいくつかあります。ボランティアでいろいろ支援してくれる日本人もいますが、同国人と母国語で情報交換をするのも良いと思います。
<壁を乗り越える>
どうやったら、壁を乗り越えられるか。
1. 言葉:日本語ボランティア教室で勉強を続ける。
2. 子どもたちはできるだけ進学させる。
3. できれば専門の資格を取る。
4. 地域の決まりに従う。特にごみと騒音は気をつけて、規則を守る。
5. 近所の人とよく付き合う。その方法はいろいろあるが、まずは礼儀正しい挨拶をして仲良くなる。
日本に来て成功している難民の人たちの共通点は意志の強さです。彼らはどんな状況にあっても勉強と努力を続けたのです。皆さんも日本社会に積極的に参加していきましょう。
