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2004.11.1

国際救援センター92期生の社会生活適応指導 「社会生活適応指導ってどんなことをするんですか?」と、国際救援センターを見学に訪れた多くの方が質問されます。「日本の社会制度や身分事項、そして生活習慣などの基礎知識の習得を目的に指導を行っています」とお答えしています。 センターは約4ヵ月の日本語教育受講後、約20日間にわたって社会生活適応指導を実施します。日本語教育を修了した16歳以上の人が対象です。 身分事項の講義では、外国人である学習者が日本に住み生活をするために必要な在留資格、外国人登録等にかかわる手続について詳しく説明します。また、更新手続業務を行っている東京入国管理局を実際に見学しています。 そのほか、具体例を挙げてみましょう。 1.給与 母国では給料が現金で支給されているケースが多くあります。 日本では給料の多くが銀行振り込みで支給され、社会保険料や所得税等が天引きされているのが一般的です。 納税、社会保障制度の仕組みや目的を給料支払明細書などの教材を使って説明し理解を深めています。
2.入浴法 6世紀に渡来した仏教がその功徳を説いた沐浴が起源とされる日本式の入浴は、時代と共に発展し今では日本を紹介する時に度々語られるエピソードとなっています。しかし異文化の人たちにとっては見ると聞くとでは大違い。シャワーだけで済ませていた学習者には戸惑うばかりの行為のようです。センターでは家庭風呂や銭湯での入浴の仕方や作法を分かりやすく紹介しています。
3.品川区防災センター見学 2004年9月8日(水) いつどこで起きるかわからない災害、いざという時にしっかり落ち着いて行動するためには災害の本当の姿を知る必要があります。防災センター内のシアターで大地震をテーマにした映画を3D映像で鑑賞しました。このシアターでは自分の座っている椅子が映像場面に合わせて「震度5」の強さで揺れるので、実際に近い揺れも体験しました。地面が大きく揺れ、建物が倒壊し火事が起こる。案内の方からの説明を真剣な表情で聞く学習者たち。地震の二次災害である火災が起きたときのために消火器を使ったトレーニングも受けました。
 おっかなびっくりで消火器を手にする者。手際よく放水する者。 何度かやり直す者。最後には全員が消火に成功。
学習者の多くは日本に来るまで地震のない国で生活をしていました。この見学をとおして地震の怖さや火災の恐ろしさを身近なものとして捉えることができたと思います。非常持出品の展示コーナーを熱心に見ながら「日本に住むということは地震を覚悟するということですね」と講師に話した学習者たち。音を立てて崩れていく建物や椅子の激しい揺れ、そして「その日」に備える心も忘れずにいてほしいと感じました。
4.港清掃工場見学 2004年9月16日(木) 東京都港区にある港清掃工場は水面に浮かぶ睡蓮(すいれん)の華をイメージしたモダンな外観です。見上げた煙突からは煙も上がっていません。公害防止設備の充実度には講師陣も驚くばかりでした。 次々と入ってくるゴミ収集車。日本人は1人1日約1キロのゴミを出している。そのゴミを処理するのにおよそ59円のコストがかかるとのこと。ゴミを減らす努力が必要との説明があった。
 中央制御室。プラント全体の運転・監視はすべてコンピューターで管理されている。システムのあまりのすばらしさに学習者からは「ここで仕事がしたい」との声が挙がった。
見学を終えた学習者からは、「母国ではゴミ問題が深刻なためこういったプラントがあれば良いと思います。建設費用はいくらですか」といった質問がありました。この日見学をした港清掃工場の総工費は約455億円だそうです。学習者からはため息がもれました。ゴミのリサイクルや分別の大切さを理解し、日本のゴミ問題を知る良い機会になりました。 5.製鉄工場見学 2004年9月27日(月)
ほとんどの学習者は母国で会社や工場で働いた経験がないので、工場見学は重要な指導科目の一つになっています。 今期はJFEスチール株式会社東日本製鉄所千葉地区を見学しました。広大な敷地の中に溶鉱炉はじめ各種製造工場、原材料の鉄鉱石置き場などが点在しています。最初に工場の概要とスチールの製造プロセスの説明を受けた後、ヘルメット、防護メガネ、防護服を着用し、マイクロバス2台に分乗して製造現場に向かいました。 溶鉱炉から送り出されたばかりの真っ赤な銑鉄が厚い板状の鋼になり、いくつかの処理工程を経て鈍い輝きを持った薄い鋼板に生まれ変わっていくプロセスは、とてもわかりやすく、また見事で一同熱心に見入っていました。見学後担当の方から、工場では特に勤勉さと正確さが要求されることなど働く上での厳しさや心構えについてのお話を伺い、日本の最先端製鉄技術に圧倒されつつ帰路に着きました。
このように社会生活適応指導プログラムは、日本社会で生活する上で大変重要なものですが、約20日間という限られた期間で身に付けなければならないため、授業を受ける側の負担を少しでも減らせるよう、随時教材やカリキュラムの改定に努め、効率的な指導が行えるよう工夫しています。

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