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2005.8.1
教育関係者に向けたセミナーを開催しました
難民事業本部関西支部では、2005年8月から10月にかけて全5回、教育関係者を対象に難民理解セミナーを開催しました。生徒・学生向けの難民問題に関するワークショップの手法や資料を提供し、教育の現場で難民理解を深めてもらうことを目的としています。
8月11、12日に開催した「第2回多文化共生のための国際理解教育・開発教育セミナー(兵庫県教育委員会、神戸市総合教育センター、JICA兵庫、神戸YMCA、PHD協会の共催)」において、関西支部は2つのセッションを担当しました。
1つ目の「国際協力シミュレーション」セッション(約20名参加)では、国際協力がどのような流れで計画、実施、評価されていくのか、難民支援策をテーマに考えました。
難民の現状に関するビデオを見て、この難民が困っていることは何か、また彼らが必要としている支援は何かを各グループで話し合い、それぞれが提案した支援策をニーズ、効果、永続性、費用の面から評価しました。
各NGOはポリシー、キャパシティ、ニーズという3要素が合致する部分で実際の支援活動を行っていると講師が解説しました。「難民や戦争が自分たちとどうつながっているか分かりにくい」という参加者の意見に対しては、そのつながりを考えるきっかけとして「貿易ゲーム」などの手法を紹介しました。「教員が国際協力の現状をあまり知らないので、こうしたテーマを取り入れるのが難しい」という意見もあり、教科書教材を応用した手法や、NGOの実際の活動をリソースとして活用する方法などを提案しました。
2つ目のセッション「わたしが難民になったら」(約50名参加)では、「難民ってどんな人?」(難民の定義)、「もしあなたが難民となったら」(脱出時の持ち出し物を考える)、「難民キャンプで何を食べるか」(難民キャンプでの食事の量を推測する)、「ロープでボート」(ボートピープルの脱出用ボートの大きさをロープで復元し、乗船体験する)という4つのワークショップを行いました。また、教育の現場で難民理解に役立てることのできる資料や視覚教材を紹介しました。
難民の定義など細かな概念を理解するのが難しい小学生向けには、難民キャンプや難民の子どもたちの写真やビデオ映像を利用し、自分たちと同じ年頃の子どもたちが難民となっているイメージをつかめるような方法を紹介しました。また中高生向けには、紛争や平和というテーマに関連して難民問題を取り上げたり、日本で暮らす難民に焦点を当てるなどから学びを深めたり、またNGOが実際に行っている支援活動を調べることで難民問題への理解を得られると解説しました。
2日間のセミナーは大変好評で、セッションで得たものを活かして、早速新学期から取り組みたいという教員の声も聞かれました。
10月5、12、19日には、神戸クリスタルタワーにて、セミナー2005「難民×教育」を神戸YMCAと共催で開催し、各回約20名の参加者がありました。
第1回「難民とは」では、難民条約に基づく難民の定義の解説と、参加者が難民となったらどうするかを考えるワークを行い、難民の基礎的な理解を図りました。
第2回「日本の難民受け入れ」では、日本で暮らす難民が直面している課題について知り、私たちに何ができるかを考えていくワークを取り入れました。あるベトナム難民の子ども(中学生)が不登校になった状況を想定し、参加者が教員の立場となり何が原因として考えられるか、またどのような支援ができるかをグループごとに話し合いました。講師からは、不登校になったのは本人だけの問題ではなく、周りを取り巻く家族や学校、地域の問題として考えていくよう助言がありました。各グループとも、学校、地域、家族への支援が検討され、学校への支援としては「難民の歴史を学ぶ、異文化理解の促進を図る」地域への支援としては「日本語教室の開催、自治会などが住民との交流会を開催する」また、家族への支援としては「生活支援、就職支援、社会保障支援」などが挙げられました。また、子どもセンターなどの専門家の支援を利用するアイデアも挙げられました。最後に講師が、難民問題は学校、公的機関、地域など難民とかかわるすべての人が協力して、解決していく必要があると話しました。
第3回「難民支援シミュレーション」では、難民支援をする上でのプロジェクトサイクルを説明し、参加者がNGOスタッフになったと想定して、難民キャンプと第三国定住での難民の問題と支援策について話し合いました。難民キャンプでは「物資や食料の配給・教育の充実・衛生保健」など、第三国定住では「言語の習得・心理的ケア・アイデンティティーの保持・就職支援・社会保障・住居確保」などの必要性が問われました。
両セミナーとも、難民について学ぶのは初めてという教育関係者がほとんどでしたが、授業に難民問題を取り入れようと、熱心に手法を学ぼうとする教員の方が昨年に比べ増えていたように感じられました。今後も難民問題に関する教育現場での取り組みを促進していきながら、セミナーを通じてネットワークを拡げていきたいと思います。
報告書(PDF 253KB)・アンケート集計結果(PDF 35KB)
