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2019.3.1

日本語とベトナム語「子供の言葉の教育を考えませんか」

 大阪府八尾市はベトナム難民定住者が多数居住しており、八尾市立高美南小学校には27名のベトナム人児童が在籍しています。同校では日ごろから担当の先生が非常に熱心で、たびたび難民事業本部関西支部を訪ね、ベトナム人児童の日本語教育について一緒に考えてきました。その中で、家庭での言葉の教育が大事ではないかということから、難民定住者の父母を対象に校内で子供の言葉の教育を考える勉強会を開催することになりました。2001年12月17日(月)当日は、20家族中15名の申込みがありました。

 まず、子供の教育に関する問いを出し○×で答えてもらいましたが、参加者の答えはほぼこちらの予想どおり、日本語や勉強のことは学校任せという人が多くいました。一方、日本語とベトナム語で親子のコミュニケーションがとれていないのではないかという心配に反して、家庭での会話はベトナム語でしっかりなされていることも分かりました。参加者より出た意見に対して関西支部の日本語教育相談員が通訳を通じてコメントを述べると、皆興味を持って最後まで聞いてくれました。その一部を紹介します。

(1)子供は日本語が上手なので心配ないか。
 日本語で日常会話ができても、語彙数が少なく読解力がないので、勉強に必要な日本語力はついていない。学習用語の獲得ができていないので、教科学習につまずいている子供が多い。会話ができていても心配ないとはいえない。

(2)子供は日本語ができるので、ベトナム語を教えなくてもよいか。
 二言語が使われる環境で育つというのは、子供にとって大きな負担である。中途半端な二言語教育はどちらの言語でも抽象思考ができず、複雑な表現ができない人間を作る危険性がある。二言語を同時に習得する場合、両方が密接な関係にあると考えられているので、ベトナム語をしっかり教えることにより日本語の上達も促進される。

(3)子供は親の話すベトナム語をよく理解しているか。
 子供は保育所や学校で日本語を覚え、日常会話には困らない。一方、家庭ではほとんどベトナム語だけで会話がなされ、親子で意思の疎通ができないという問題が起こっている。親から子供へしっかりとベトナム語を伝え、言葉の基盤を作るとともに、民族的アイデンティティーを確立すべきである。

(4)学校の教科書を子供と一緒に見ているか。
 親も子供がどんな勉強をしているか関心を持ち、少しでも日本語を覚えようとする姿勢が大切である。子供から教えてもらうことがあってもよい。子供は教えることによって復習ができる。

(5)勉強のことはすべて学校に任せてはいないか。
 学校で勉強するだけでなく、家で予習したり復習したりすることも大切。親が関心を持っていることは子供の励みになる。

 次に、子供の日本語力向上のためには何をすべきか、家庭での教育の大切さについて皆で話し合いました。日本語教育相談員から「子供たちは日本語とベトナム語の両方を覚えなければならず、非常に負担が大きい。日本語とベトナム語は相互に影響しあうので、日本語力向上のためにも家庭でベトナム語の会話をしっかりして語彙を増やし、言葉の概念を育ててほしい。」という話をすると、皆うなずいて理解を示していました。心配していた欠席者も少なく、出席した人たちは全員熱心で、子供の教育に対する父母の関心の高さがうかがえました。参加型の勉強会を通じて、難民定住者の父母は家庭での言葉の教育の大切さを認識したようです。

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