2013.2.26
日本語教育相談員レポートVol.2
西日本地域に暮らす難民(関西支部)
関西支部では愛知県以西に暮らすインドシナ難民、条約難民およびその家族、また難民認定申請者から寄せられるさまざまな相談に対応しています。西日本地域には、東日本地域に比較すると条約難民の定住者数が少なく、相談者別ではインドシナ難民とその家族の占める割合が大きいです。
難民が日本に来てまず直面する大きな壁は日本語の問題です。日本語でコミュニケーションが取れないと、日本社会で生活していくことが困難になります。なかでも、すでに日本に定住している難民の家族に呼び寄せられて本国を出てきた学齢期の子どもたちは、新しい文化や家庭環境に順応しながら、日々の生活を通じて日本語を習得すると同時に、学校では日本語で教科を学習していくという大変負担の大きい状況に置かれています。そのような中でも夢を持って努力し続ける子どもたちも多くいます。現在20歳の兵庫県在住のベトナム人女性の場合、父親に呼び寄せられて来日したのが16歳の時でした。国際救援センター(平成18年3月閉所)にて日本語教育を修了した後、学年を一つ下げる形で、定住先の中学校へ入ることができましたが、日々の勉強についていくのは並大抵のことではありませんでした。しかし、その後は本人の猛勉強の甲斐あって日本人と同じ一般入試で公立高校進学を果たし、現在、大学進学を目指して頑張っています。
その一方で、アルコール・薬物依存症や精神疾患など重い課題を抱えて暮らす難民定住者がいます。その多くは日本語が十分に習得できていません。日本語で意思疎通ができないということで周囲から孤立してしまう可能性も高くなり、職場や地域でトラブルに巻き込まれたり、周囲の人たちとの軋轢を生む原因となったりすることが少なくありません。このような場合には、日本語学習の機会を得られるように、そしてその後も継続して学習が続けられるように、地域の日本語ボランティア教室を紹介するなどの支援を行っていますが、いきなり教室に通うことに不安や抵抗を示すようであれば、難民事業本部が実施している難民定住者対象の日本語教材援助事業を利用し、まずは独習するための辞書やテキストを提供するなど、導入的な支援から始めています。
条約難民が日本語学習を希望する場合には、東京にある「RHQ支援センター」への入所を案内します。しかし、すでに居住地域で生活基盤を築いている場合には、仕事や家族などの都合から、たとえ一時的でも東京へ移り住むことが難しいのが現状です。このようなケースでは、自宅から通える範囲にある日本語教室や、国際交流協会など地域の日本語学習相談窓口を紹介しています。また、最近増えている難民認定申請者からの日本語学習相談では、日本語がほとんど理解できず、同時に経済的に困窮しているケースが多く見られます。教室情報を提供する場合は、交通費や受講料などの負担についても配慮が必要で、できるだけ近場で無料の教室を紹介するようにしています。
このように相談者の背景は実にさまざまです。そして相談者一人ひとりに対するアドバイスや支援の内容も多岐にわたります。そのため日本語教育相談員は、生活全般の相談を担当する難民相談員、仕事の相談を担当する職業相談員と連携しながら、相談者の置かれた状況を把握し、多角的な視点から日本語学習のアドバイスを心がけています。また、活用できる社会資源について幅広く情報収集を行う必要があり、行政や関連団体との連携も重要な役割となっています。
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