「欧州諸国の難民受け入れ事情」講演概要
1.各国の難民受け入れ政策、申請手続き
UNHCRの第三国定住プログラムによる各国の難民受け入れ数をみると、受け入れ国および受け入れ数が決まっている。
アメリカ、カナダ、オーストラリアなどが比較的多数の難民を受け入れているが、一方でアイスランドは20家族程度の受け入れにとどまっている。このプログラムを導入しているのは、世界で16カ国のみである。
各国の受け入れ理由としては、各国内の労働力不足に加えて、優秀な人材の確保や、世界にむけて人道的支援をアピールする目的などがあると考えられる。
個々の庇護申請手続きは、各国によって基準が異なる。UNHCRによると、日本は比較的厳しい条件を適応していると見られている。一方で、例えばフィンランドのように、自然災害によって母国を追われた人なども難民の定義に含めるなど、より柔軟に対応をしている国もある。個々の庇護申請のプロセスも各国によって異なる。
2. 難民等受け入れ数(UNHCRによるレポートを参照)について
日本の難民受け入れ数は少ないと一般的に言われている。注意すべき点として、日本での申請者数を諸外国の数字と比べると、申請者数もまた諸外国の数字よりも少ないという事実がある。
3. 各国における個々の庇護申請者への支援状況
(1) UNHCRの第三国定住プログラム
出国前オリエンテーションでは、難民が移動先の外国でスムーズに適応できるように、受け入れ国の基本情報の紹介や健康診断などが行われる。出国前に受け入れ国の言語を学ぶ機会を提供する国もある。
(2) 個々の庇護申請手続きによる受け入れ
欧州諸国の難民受け入れ国の共通点として、庇護申請者対象の受け入れ施設があり、同施設において語学教育等を実施している。また就労訓練、医療サポートなど適宜提供されている。受け入れ施設の特徴としては、娯楽施設を併設している国(アイルランドやベルギー)やホリデーセンターであったものを施設として使用している国(オランダ)、収容施設を併設する国(デンマーク)など多様である。国によっては、施設の提供は庇護申請者の管理という便宜上の理由もあるようである。
4. 各国の難民認定者への支援状況
(1) 定住支援の概要
定住プログラムの支援対象者、条約難民、クオータ難民(注)および人道的配慮によって受け入れられた者などに対して同様の定住支援が施されている。日本では難民に特化した支援プログラムがある。
(注)クオーター難民は
UNHCRの第三国定住プログラムを導入している国が毎年一定の数の割り当てを決めて受け入れる難民
(2) 定住プログラムの内容
語学教育、職業訓練、就職支援など。
(3) 定住支援プログラムの実施団体
各国によって異なる。例を挙げると、北欧諸国では政府が資金を拠出し、地方自治体が支援を実施、ニュージーランドでは、政府がNGOを通じて定住支援を行っている。
5. 日本における定住支援プログラム
平日昼間コース(半年)と平日夜間コース(1年間)の二つのコースがある。
(1) 対象者
条約難民および法務大臣に難民と認定された者とその家族。
(2) 内容
日本語(572時限)、生活ガイダンス(約120時限)、就職あっせんを行っている。
(3) 日本での就職先
工場などが多い。
(4) 宿泊施設
必要な場合に無料で提供している。
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