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2006.4.1

「スーダン難民支援の現場から」講演概要

1.スーダン概要 (1) 現状
20年来の北部イスラム系アラブ人対南部キリスト教およびその他の宗教間の内紛(南北の内戦)が終結し、現在復興に向かいつつある。2005年7月に和平合意、統一暫定政権政府としての機能が復活した。南北は別々の政府が機能しており、教育システムなどは別々の状況である。したがって、事実上、政府は統一されていないといえる(スーダン南部とは、南部の10州を指す。南部と北部の国境付近に天然資源が豊富であり、国境の策定をめぐって南北の合意は達成されていない)。
(2) 今後の課題:和平合意を実行すること
2011年に国民投票が予定されているので、おそらくその機会に南部の独立を問われることになるだろう。国際社会からは、南部が独立することになるだろうと考えられている。
(3) 国内避難民
内紛を逃れ南部から北部へ脱出した国内避難民は、400万人から600万人にのぼると考えられている。現在もなおスーダン北部を中心とし350万人から400万人程度の国内避難民が避難生活を続けていると予測される。南北の内戦の終結に伴って、難民および国内避難民の再定住が現在のスーダンの課題である。
(4) 難民・国内避難民の再定住
エジプト、エリトリア、エチオピア、ケニア、ウガンダ、コンゴなどに逃れている難民のうち、すでに約10万人が帰還したと考えられ、そのうち約1万5,000人が南部に帰還した。現在、毎週約700人のペースで帰還がすすんでいる。5月には雨季が始まるため、その前に相当数が帰還すると考えられている。
2. スーダンの復興と国際社会の取り組み
 (1) 国際連合スーダンミッション(UNMIS)による和平合意の内容遂行の監視および支援
 (2) UNHCR、WFP、UNICEFの三機関による支援
 (3) 三者合意の締結:スーダン南部復興のためのスーダン政府、中央アフリカ共和国政府、UNHCR間の合意
 (4) 国内避難民への帰還支援についてはIOMが中心となって支援している。
 (5) 難民への帰還支援はUNHCRが中心となって支援している。
 (6) 国連のミーティングによる団体間の調整 支援分野および地域が重複することがないように同ミーティングにはNGOも支援実施機関として参加している。
3. スーダン南部における支援状況 (1) 南部の中心都市、ジュバの事例:
  • ケニアやウガンダへ多くの人々が逃れた都市
  • 支援実施団体のNGOが水、食糧を配給する。ボーダーラインのコンディションが悪いので、難民の輸送には通常UNHCRの手配によって飛行機が用いられている。
  • 国境付近にNGO運営の一時宿泊施設があり、NGOによって帰還民の登録が行われる。また、同施設で当面の食糧や内陸の村へ帰還するための費用の支給も行われる。
  • 帰還民に対する帰還先での支援:ピース ウィンズ・ジャパン(PWJ)などによるNGOが教育施設の復興支援を行っている。
(2) ジョン・グレー州のボーの事例:
  • PWJによる帰還事業の実施地―当地で青空教室の学校の開校
  • UNICEFによる教育指導、カバンの支給ジョン・グレー州ではナイル川の水が手に入るが、きれいな水ではないので子供が下痢やコレラなどで死亡するケースが絶えない。生活用水の確保が不十分であるといえる。
4.スーダンの復興へのPWJの取り組み
(1) 時期: 2006年5月に調査、2006年8月に事業開始〜2007年3月に事業終了予定
(2) 目的: 帰還の促進
(3) 事業内容:
(イ) 水衛生事業 井戸設置(18本)、井戸のメンテナンスの指導、衛生研修、2007年は地域を拡大して井戸掘削事業を展開予定
(ロ) 公共トイレ設置事業 トイレ八つを設置。もともと井戸と同数のトイレ導入を予定していたが、スーダンの人々にトイレを使う習慣がなかったため、数を減らして設置した(ただし、難民キャンプから帰還したスーダン人はトイレの習慣を身につけていた)。衛生面を考慮するとトイレ設置は不可欠だったので、人が集中する広場や公園、学校など公共施設に限って設置した。 導入するトイレの型については、国際社会で議論された結果、安全面を考慮して汲み取り式トイレが設置された。土地の地盤が粘土質のため、地面をただ掘って作ったタイプでは、壁などのコンクリートが崩れてしまうことがあった。地面を掘っただけのタイプに比べて、コンクリートで中を固めた汲み取り式トイレは、スーダン人の生活習慣の中に根付きにくいかもしれないという懸念はあったが、使用者の安全確保が優先されることになった。

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