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2006.4.1

「NGO活動の現場からみたミャンマー難民」講演概要

1. ミャンマー・タイ国境の難民キャンプ
ミャンマーでは、イギリス植民地政府による民族別分割統治政策と1948年独立後の政府によるビルマ族優遇政策により、民族間対立が激化した。1984年の政府軍によるカレン族に対する大攻勢や、1990年の民主化運動に対する弾圧を逃れ、多くの人々が国境を越えタイ側に滞留し、難民キャンプが形成された。現在タイ政府が承認したキャンプは九つ存在し、UNHCRの2008年1月現在統計によると、キャンプの総人口は約13万人であり、現在でも新たな難民の流入が続いている。 これらの難民キャンプは、タイ政府の管理下に置かれており、難民自身で構成される難民キャンプ委員会が自主的に運営をしている。同委員会の下には、食糧配給、水衛生、保健医療、教育等を担当する小委員会があり、それぞれの分野における国際NGO等の援助の受け皿となっている。
2. 難民が抱える問題・課題
原則として難民はキャンプ外への移動の自由が認められていない。キャンプ内では、難民の就労は援助機関やキャンプ運営委員会の仕事以外には認められておらず、学校教育を終えた若者には就労する機会がない。タイ政府は難民のタイにおける定住を許可しない方針を貫いているため、将来の展望が描けず閉塞感を覚える難民の若者は多い。 依然として本国自主帰還が困難であるため、2005年にUNHCRによる第三国定住プログラムが開始され、2007年には14,636人が米国や北欧諸国等11カ国の受け入れ国へ定住した。現在までにキャンプ委員会メンバーやNGO職員等、キャンプ内のコミュニティー活動の中心となってきた難民たちが再定住し、今後も増え続けることが予測される。
3. シャンティ国際ボランティア会(SVA)の難民支援活動
難民キャンプでは母国語の書籍がほとんどなく、学校の図書館でも書籍が不足している。また、キャンプが長期化すればするほど、祖国を知らずに育つ子どもが増え、文化やアイデンティティー消失の危機も生じている。SVAは、このような問題を少しでも改善するために、2000年からキャンプ内での図書館活動を開始した。 現在までキャンプ内に合計25の図書館を開館した。図書館は難民の図書館委員会メンバーと図書館員によって運営されており、具体的には日本やタイで出版された絵本をカレン語・ビルマ語に翻訳したり、絵本、紙芝居、人形などを使って話の読み聞かせをしたりしている。カレン語やビルマ語による民話絵本の出版や、伝統舞踊教室や伝統楽器教室の開催を通して難民の伝統文化の維持にも努めている。 第三国定住プログラムの開始は、SVAの事業にも影響を及ぼしている。第三国定住が決定した図書館関係者の仕事に対する意欲が低下したり、彼らの再定住後、新たな適任者を見つけて人員補充するのが難しくなっている。このような状況の中でSVAの図書館事業に期待される役割とは、全ての年齢層(幼児から高齢者まで)の難民に母語に触れる機会を提供すること、青少年ボランティア育成の機会を提供すること、文化・アイデンティティーの維持・継承に寄与すること、そして図書館自体が世代を超えて地域の人々がつながるコミュニティーセンター的な役割を果たすことである。

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