「日本における難民受け入れ」講演概要
1. 日本における難民受け入れの歴史
1975年にベトナム・ラオス・カンボジアのインドシナ三国で内戦が勃発した後、1978年にインドシナ難民受け入れを政策として実施することを決定した。翌年にアジア福祉教育財団が日本政府からの委託によりインドシナ難民定住支援事業の実施することになり、難民事業本部はこの定住支援事業の実施団体として設置された。1982年には日本において難民条約が発効し、日本政府は同条約に基づき条約難民の認定・受け入れを開始した。日本には合計11,319人のインドシナ難民がおり(2005年末現在)、また、ミャンマー、アフガニスタン、イラン等出身の条約難民が451人いる(2007年末現在)。
2. インドシナ難民に対する支援
難民事業本部は、インドシナ難民受け入れが決定した後、姫路定住促進センター(兵庫県)、大和定住促進センター(神奈川県)、国際救援センター(東京都品川区)等を順次開設し、同難民に対して日本語教育や日本の習慣等を学ぶための社会生活適応指導、就労支援等を行った。その後インドシナ三国の政情安定化とインドシナ難民の減少に伴ってこれらのセンターを順次閉所し、2006年3月末をもってインドシナ難民受け入れは終了した。
3. 条約難民に対する支援
当初、条約難民は国際救援センターへの入所が許可されていなかった。しかし、2002年に中国の瀋陽日本総領事館事件をマスコミが大々的に取り上げ、また、国連人種差別撤廃委員会より日本政府が難民受け入れ体制について勧告を受けたことがきっかけとなり、同年から条約難民に対しても定住支援策の措置を実施することが決定し、2003年度から国際救援センターへの入所が開始された。難民事業本部は、同センター閉所後の2006年4月には東京都内にRHQ支援センターを開設し、入所を希望する条約難民とその家族を対象に、日本語教育、生活ガイダンスと就職あっせんを含む定住支援プログラムを実施している。
4. 難民認定申請者に対する支援
日本では難民認定申請から認定・不認定の結果が出るまでに1〜2年間かかっている。申請者が仕事を見つけ安定した収入を得るのは難しいのが現状である。
難民事業本部は、外務省からの委託契約に基づき、生活に困窮している難民認定申請者を対象に保護措置を実施している。同制度の下で生活費、家賃、医療費を支給し、緊急宿泊施設(東京都内)を提供している。保護措置受給期間は原則4カ月間となっているが、審査期間が長期化しているため延長している人もいる。
5. 難民定住者に対する支援
難民事業本部では、日本に定住した難民の文化継承等のためのコミュニティー活動に対して資金援助を行っている。また、難民が直面する様々な問題(仕事、医療、教育、役所の手続き、不安や恐怖など心の問題、親子間のコミュニケーション等)に関しても、本部事務所(東京都港区)や関西支部(兵庫県神戸市)、地方自治体等に難民相談窓口を設置して個別相談を受けている。
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