日本語教育相談員レポート

「難民定住者等の日本語教室の設置運営コーディネーター」レポートvol.1 −特別日本語教室−

特別日本語教室は、難民認定申請の結果を待っている人(申請者)たちを対象に、これらの人たちが一時的に住んでいる難民事業本部の施設で開かれています。教室は1回2時間、1カ月に6回、ボランティアの日本語指導経験者が指導しています。 生徒の中には、既に簡単な日本語でコミュニケーションできる人から、全く日本語がわからない人まで様々なレベルの人がいます。そのため日本語のレベルによって大まかに4つぐらいのグループに分けられています。 クラスでは、コミュニケーション能力の向上に加え、平仮名・片仮名の読み書きも学習しています。病気の表現、病院での医師とのやりとり、住居探し、求人広告を読むことや就職の面接の練習などは、教室内だけでなく、教室外で実際の場面での体験学習を行っています。たとえば、災害時の緊急避難のための場所に行ってみたり、防災訓練教室に参加したりしています。 また、文字の読み書きは就職活動で大きな力を発揮します。就労資格を持つ生徒に対しては、ハローワークに行き、求人情報を得たあと電話で雇用主に面接の交渉をするなどの就職活動の体験学習も行いました。この体験学習のあと、日本人に頼らず自分の力だけで求人広告に応募し、面接までこぎつけた人もいます。 本教室のボランティア教師は、生徒が少しずつでも自分の力で日本語でコミュニケーションがとれるよう工夫しています。 このように、地域に根ざし活動するボランティアの方々の思いやりと熱意が多文化共生を支えているのだと改めて実感させられました。

「支援者の声 No.16」日本語教室だより

「支援者の声 No.16」日本語教室だより  泉の会 代表 中山恵子
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泉の会は、兵庫県内で外国人定住者の子供たちへ日本語教育及び教科教育の支援をしているグループです。数年前から各小中学校に入り個々に活動していたメンバーが集まって、この春、会を発足しました。 今のところ神戸市・尼崎市の小中学校での支援です。学習者のほとんどがベトナムの子供たちです。日本で生まれ育った子供たちから、つい数週間前に呼び寄せ家族として来日した子供たちまで、日本語能力はさまざまです。どの子供たちも定住希望で、これから日本の社会の中で生活していこうというわけですから、日本語能力は必要不可欠です。 子供たちの場合、その日本語能力とは日常言語運用能力だけでなく、教科学習のための認知学術言語能力も含みます。例えば、「今日、給食の時食べたパン、おいしかったね。」と流暢に言えても、「角度・底辺・頂点…」等の語彙の算数的意味を理解し、算数の文章題が理解できなければ、学校での教科学習にはついていけません。この点がなかなか理解されず、これまでは日常会話が話せれば日本語はもう大丈夫と考えられて、メンバーの中には学校から支援活動を断られたこともあったようですが、今では学校の要望が多く、支援者が足りないような状況です。 学校での活動ですので、学習環境は整っていますし、子供が学校を欠席しない限り計画性のある指導が可能です。さらに、担任の先生方との話の中から支援の具体的方向性を見い出すこともできます。しかし、子供たちに対する初期日本語教育の教材はかなり揃ってきましたが、教科学習支援に関してはまだまだ手探り状態が続いているのも事実です。 子供たちの笑顔に会いたくて、「わかった、できた。」の声が聞きたくて、メンバーは今日も学校に通っています。子供たち一人一人に合った支援ができるようにこれからも研鑽を積んでいこうと思っています。 定住新聞「こんにちは」第25号より転載