第87期入所者の日本語教育 日本語学習発表会
2002年1月29日(火)と30日(水)の両日、国際救援センターにおける日本語学習の修了を目前にして、生徒(第87期入所者)の会話力を披露する発表会が行われました。この発表会に際しては生徒がこれまでに習得した日本語力を十分に発揮できるよう担当講師がいろいろと工夫を凝らしたこともあり、各クラスとも特色のある発表会となりました。
児童クラスの生徒は手作りの紙人形を使って自分の創作した話を芝居っ気たっぷりに発表しました。また、比較的日本語力の高い成人クラスの生徒は自国の地理・歴史、自分自身のこと、将来の夢などについて要領よく文章をまとめて話しました。そして、高齢者クラスの生徒は自分で描いた家族の絵や母国の風景画を発話の材料として懸命な中にも心温まる姿が見られました。
この発表会に向けて生徒は、限られた時間の中で表現内容を必死で考え、それを何度となく練習して覚えたり、自発的に作成した招待状をセンター内の人たちへ日本語で説明しながら配って歩きました。また、講師も生徒の日本語学習成果を最大限引き出そうと、生徒一人一人に熱心な指導を行いました。
今回の発表会は、冒頭でも触れたように生徒の日本語力に応じた発表・表現方法が工夫されていて、大変個性豊かなものとなりました。生徒たちは、自己表現のために必要な日本語を覚えて表現することによって、日本語学習の成果を実感できたことに喜びを感じ、また、日本語表現の自信にもなったようでした。聴衆に回った講師やセンター職員からは、生徒が緊張しつつも原稿に頼らず、しっかり前を向いて堂々とスピーチできたことに驚いた、個性的な自己表現を見られて生徒一人一人への理解が深まった、生徒の努力とひたむきさには感動した、など多くの感想がありました。
日ごろ、受け身の立場で学んできた生徒たちが、聴衆を前にして自分の考えを発表できたことは、これから社会に出ていく彼らにとって大きな自信になったと思われ、今後も発表会を続けていきたいと考えています。
難民支援活動ワークショップ「スフィア・プロジェクト」
難民事業本部では、日本の難民支援NGOのスタッフの難民支援活動に関する専門性の向上のため、パリナック・ジャパンフォーラム*に協力いただき、「難民支援活動ワークショップ」を実施しています。今回は、2002年1月23日(水)、24日(木)の2日間、スフィア・プロジェクトに関するワークショップを開催しました。講師はアメリカの同プロジェクトトレーナーのジム・グッド氏です。
スフィア・プロジェクトは、1994年のルワンダ難民支援の際、NGOの援助内容にばらつきが生じ難民の人権をも侵す事態が発生した反省から、欧米の大手人道支援NGOが作成した人道憲章と災害援助に関する最低基準書です。その内容は、援助活動における難民・被災民の人権保護が明確にうたわれた「人道憲章」にはじまり、「給水と衛生」、「栄養」、「食糧」、「シェルター」、「保健」という主要5分野に関する援助内容の最低基準の詳細を説明しています。
ワークショップでは、まず、「人道憲章」に記されている人権法、人道法、難民法の内容、背後にある基本的な考え方、これらの国際法が援助活動に与える影響を学習した後、スフィア・プロジェクトに記されている「最低基準」を実際の活動にどのように反映させていくかの概念を学びました。その後、前述の分野ごとに5つのグループに分かれ、スフィア・プロジェクトを利用した緊急時におけるプロジェクトの評価・分析方法に関するケーススタディを行い実践的な力を身につけました。それぞれのグループでは活発な議論がされ、また講師へ多くの質問が出されるなど、参加者が大変真剣にワークショップに参加しているのが印象的でした。
参加者からは、「人道憲章」の重要性を理解することができた、スフィア・プロジェクトを利用したケーススタディを行うことで実践的な力を身につけることができたといった感想が寄せられるなど、参加者にとって大変有意義なワークショップになったようです。世界の緊急人道支援の現場ではスフィア・プロジェクトの有用性が認識され、スフィア・プロジェクトを知らないではすまされない時代が来ています。現場に行く前の実務者のトレーニングとして、今回のワークショップが大きく寄与するものと期待しています。
* 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)日本・韓国事務所と日本NGOとの対話会合