インドシナ難民雇用の現状
難民事業本部では、国際救援センターに入所した人のうち就職を希望する人に対して職業相談、就職あっせんを行っています。2001年1月1日から12月31日の入所者数は141名で、うち就職したのは52名でした。この数年センターへの入所時期は4月と8月の2回となっており、退所の時期はその6ヵ月後の10月と3月になっています。入所者は退所後の生活がかかっていることから、退所の2ヵ月前から必死に就職活動を行っています。この他に、既に定住している人たちの再就職者の相談、あっせんもあり、年間相談件数413件、就職者数35名でした。やはり、現在の雇用環境の厳しさから、相談件数は多く、就職者数は少ない難しい状況にあります。しばらく前までは日本語力が十分でない人たちでも雇用の機会がありましたが、最近は少なくとも伝票の記入ができる程度の能力が要求されるようになっており、センターで約4ヵ月間の日本語教育と約20日間の社会生活適応指導の課程を修了したとはいえ就職活動は難しさを増しています。
インドシナ難民の雇用の促進を目的として、雇用促進月間を2001年11月に設け、労働局、公共職業安定所、商工会議所、雇用主の方々との懇談会等を開催するほか、インドシナ難民を雇用する7企業と5公共職業安定所を訪問して情報交換をしました。企業からは、親類の冠婚葬祭のために母国に帰ると、1ヵ月も2ヵ月も日本に戻らないなど、宗教的、文化的行事のために長期休暇をとる人がいて困っているという意見がある一方、クリスマスに全員が無断欠勤したため、その後通訳をとおして就業規則を説明し、日本語が分からないとの言い訳を許さない態度をとっているという発言や、規則が守れない場合は解雇すると最初に伝えているという発言もありました。(
有限会社日昇企画の取組みを紹介)
現状では再就職しようとしても厳しい状況にあり、いかに現在の職場に定着するかが重要となっています。再就職にも定着にも日本語力の向上は欠かせませんが、日本語力は周りに支援者がいるかいないかでセンター退所後の伸びに大きな差が出ます。各地のボランティア団体では日本語教育のほかに、生活や仕事をするための習慣などを教えることも多く、その活動は好評です。また、二世三世は言葉の障害がないので、事務関係の職でも力を発揮できるようになっているのは心強いことです。しかし、引き続きアフターケアの必要性があり、地域社会での連携が不可欠ですので、関係者に一層のご協力をお願いしました。
定住難民日本語学習援助委員会の開催
当難民事業本部では、インドシナ難民に対する日本語教育アフターケア事業である日本語学習援助事業の適切な実施を目的に、有識者による検討を行うための標記委員会を、2002年3月7日(水)に開催しました。
平成13年度の委員会は、内閣官房インドシナ難民対策連絡調整会議事務局内閣参事官補佐 伊東勝章氏、久留米大学法学部教授 大家重夫氏(委員長)、社会福祉法人日本国際社会事業団事務局長
大森邦子氏、独立行政法人国立国語研究所日本語教育部門長 杉戸清樹氏、社団法人国際日本語普及協会理事長 西尾珪子氏、文化庁文化部国語課日本語教育専門官 橋本祥介氏、財団法人海外技術者研修協会研修部日本語課
春原憲一郎氏(五十音順)の7名の委員で構成されました。
委員会では、平成14年度日本語教育アフターケア事業の実施方針の検討及び同方針の承認がなされました。14年度の事業実施方針は、(1)ボランティア団体等へ当事業本部が開発した教材を配布する日本語学習教材援助事業、(2)ボランティア団体へ日本語専門家を派遣して指導・教授法の向上を図る日本語教育ボランティア育成事業、(3)ボランティア団体を通じてインドシナ難民に直接日本語教育を行う日本語通信教育事業について、13年度に引き続き同様の内容で実施することとなりました。また、日本語教育副教材「定住新聞こんにちは」の発行及び日本語教育相談員の配置についても、引き続き実施することとしました。
日本語教育ボランティア育成講座の開講
インドシナ難民定住者の多くは、センターで4カ月の日本語教育を受けて退所した後も、職場や学校などで言葉の問題にぶつかることは少なくありません。また、家庭の主婦でも家事や育児によりなかなか日本語学習の機会が得られないのが実情です。こうした難民定住者の多くは、地域のボランティアなどの支援を受け日本語学習を継続しています。
難民事業本部では、これら日本語ボランティアの拡充及び日本語指導法の研修を目的として、インドシナ難民定住者に対し日本語教育を行っているボランティア団体と共催で「日本語教育ボランティア育成講座」を実施しています。
2002年度は神奈川県で3講座、兵庫県で1講座の計4講座を開講したので、その概略をご紹介します。
● 海老名日本語教室さくら会
神奈川県海老名市の海老名日本語教室さくら会では、日本語を学習している外国籍の方に実際に学習者として参加していただき、本講座の受講者が指導を行い、それについて講師が解説を加えるなどして実践的な研修が行われました。
● 神奈川県インドシナ難民定住援助協会
神奈川県大和市の神奈川県インドシナ難民定住援助協会では、外国籍児童・生徒の学習日本語の習得を目的に、講師が外国籍児童・生徒に対して、実際に教科指導を通じて学習の中で使われる特別な日本語についての指導を実演しました。
もう1つの講座では、元大和定住促進センター主任日本語講師を招き、外国籍児童・生徒に対する日本語教授法について講義を開催しました。
● 城東町補習教室
兵庫県姫路市の城東町補習教室では、日本語と国語の違いなどを演題にした講義を行いました。受講者にとって、改めて国語という教科を外国人や日本語教育の視点でとらえ直す内容となりました。
このように、それぞれの講座で工夫を凝らしながら、特徴のあるボランティアの日本語指導者の育成が行われました。