「センター祭2002」

「センター祭2002」 ─インドシナ難民との相互理解増進と共生─ 昨年(2002年)11月24日(日)、国際救援センターにおいて「センター祭2002」を開催しました。これは1999年から毎年7月下旬に開催してきた「サマーキャンプ」の企画をリニューアルし、今回は秋に開催したものです。 インドシナ難民についての理解増進、参加者同士の交流の場とする、などの開催目的はこれまでと同じですが、今回は、企画の段階から難民定住者によるコミュニティー団体、難民定住者を支援するボランティアグループ等と共に作り上げる形としました。 センターの出入りは、難民のための施設という性格上、普段は入所者への面会など限定された入門しか許可していませんが、今回は特別に出入り自由の「一日開放」としたところ、寒風吹きすさぶ曇天の中にもかかわらず、一日で600名以上の参加がありました。 コミュニティー団体のメンバーやセンターの退所者たちは久し振りに旧友と会い、民族舞踊のステージや模擬店で作られた母国料理を前にして、母国文化の懐かしさに包まれ、尽きぬ話を語り合っていました。 また、日本人の参加者も、ベトナム・ラオス・カンボジアの民族舞踊を目にし、各国の料理を味わうことで、異文化の雰囲気に触れ、一様に感動を得た様子でした。
【ステージプログラム】
民族舞踊 (クメールボランティア協会)
(国際交流協力ボランティア難民こども会)
(在日本ラオス協会)
参加者との交流ゲーム(YYCC(横浜青年国際人倶楽部))
【模擬店メニュー】
揚げ春巻き、フォー(うどん)、カレー、焼き鳥、バンセオ(お好み焼き)、焼きビーフンなど (在日ヴェトナムカトリック共同体、在日本ラオス協会、カンボジア全世代青春交流会、クメールボランティア協会、在日カンボジア親善の会、インドシナ難民の明日を考える会、条約難民退所者グループ、国際救援センター入所者有志)
【展示・出展】
・夜間学級紹介(大田区立糀谷中学校夜間学級) ・日本語教育・定住状況展(協力:神奈川県インドシナ難民定住援助協会) ・ベトナムコーヒー店、ベトナム文化展示(かながわベトナム親善協会) ・ラオス物品の展示即売(在日本ラオス協会) ・カンボジア物品の展示即売(インドシナ難民の明日を考える会、在日カンボジア親善の会) ・国際電話のフリーコール(日本在住ベトナム人協会)
【難民理解入門講座】
「難民とは?」 講師:大原 晋(難民事業本部職員) 「インドシナ難民の歴史」 「迫害・出国・・・メコン川を越えて」<体験談> 講師:新岡 史浩(国際救援センター職員、ラオス出身)
このセンター祭は、一般の方々への難民問題の広報も目指しています。「展示・出展」は、内容が多肢にわたり、パネル展示や団体の活動紹介などを通じて参加者同士の相互理解の増進につながる場となりました。 「難民理解入門講座」では、難民問題の基本的な知識の習得として、難民定住者の脱出に至る経緯や状況等の体験談、また、難民の定義から世界の難民の現況報告まで、問題全般への理解から始めました。参加者からは「本やインターネットなどからは知ることのできない有意義な情報を得ることができた」、「難民定住者の方々のお話は印象的で日本での生活が想像以上に難しいものだと再認識した」などの感想がありました。
【討論会】 「定住コミュニティの現状と展望」─ 共に生きる社会をめざして
討論者: 日野 肇氏(かながわベトナム親善協会)
伊佐 リスレン氏(カンボジア人調整委員会代表)
ポンサワット ヌアントン氏(在日本ラオス協会副会長)
櫻井 ひろ子氏(神奈川県インドシナ難民定住援助協会会長)
司 会: 国際救援センター次長 水島 幸夫
討論会で意見をのべるコミュニティーの代表
討論会では各コミュニティーの代表から、難民定住者本人の日本語力の問題を皮切りにさまざまな定住上の問題点が挙げられました。コミュニティー団体では、それらの問題に対し、相互扶助活動に奮闘し、また二世世代への母国文化継承などの活動を行っています。しかし、コミュニティー団体の抱える問題点として、人材の確保と財政的な限界について触れられました。 話題が「若い世代を育てる場、年配者の集いの場となるような拠点の確保」などに及ぶと、会場の参加者からも「若い世代の役割について」や、「グループホームの方式を取り入れてはどうか」、「センターなどの公的な支援の継続の必要性について」など、活発な討議が繰り広げられました。 最後には参加者を含め、共に生きる社会を目指す、より深い相互理解のための「共に活動する機会と場所を持ち続けることの必要性」を確認し合いました。 センター入所者は、来場者に自分たちの母国語を教える「母国語講座」や、来場者との交流を図る「アオザイ(ベトナムの民族衣装)試着」、「ファッションショー」を行いました。これらは、この日のために何日もかけて準備したもので、母国語講座では、センターの日本語講師の熱心な指導のもと、教える側の日本語を習得するために特訓を重ねました。また、ファッションショーには、来場者からの予想を超える大反響があり、皆紅潮した面持ちながら充実感を味わい、自らの持つ母文化を披露することに自信を得たようでした。
センター入所者によるファッションショー
この行事の評価はただ一点、難民定住者への支援の一助になったかどうかですが、この行事が参加者の心に一粒の種を撒き、やがてコミュニティー内における相互扶助の増進にもつながっていくことを期待しています。 また、今回の「センター祭2002」は、外部の団体からの参加があって成立したものです。インドシナ難民のより安定した定住生活のため、日本が彼らにとってより豊かに住みよい国となることを目指した開催趣旨に理解を示し、実に多くの方々がボランティアで参加してくださいました。この場をお借りして深く感謝申し上げます。

「支援者の声 No.18」株式会社エヌ・テックの取組み

「支援者の声 No.18」株式会社エヌ・テックの取組み 株式会社エヌ・テックは、(財)アジア福祉教育財団主催の「平成14年度定住インドシナ難民とのつどい」において、難民雇用事業所として表彰されました。式典での代表取締役社長の秦野龍介さんの挨拶を紹介します。
表彰者代表の挨拶をする秦野社長
(財)アジア福祉教育財団主催の「定住インドシナ難民とのつどい」において表彰者代表の挨拶をする秦野社長
本日は、「定住インドシナ難民とのつどい」がこのように盛大な開催を迎えたことに、心よりお慶び申し上げます。本席にお招きいただき、定住インドシナ難民の雇用事業主として感謝状を賜ったこと、身に余る光栄と感謝し、厚く御礼申し上げます。 ご指名をいただきましたので、せん越ではございますが雇用事業主のひとりとして一言挨拶を申し上げます。 当社の事業内容と、インドシナ難民の皆さんとの出会いなどをご披露させていただきます。私共の本社は、神奈川県大和市にあり、創業8年と比較的歴史が浅く、工場が2ヵ所にあり、従業員120名の会社で、古河電工の子会社として、エレクトロニクス機器に使用される部品の組立・加工を主たる事業としており、コンピューターや通信機器の接続用の電線・ケーブルの端末加工とか、パソコンやゲーム機の内部に使用されている放熱部分の製作、さらに高速道路などに採用されているETC通行システム用の車載用アンテナの組立などをメインに行っており、人手(労働力)が頼りの会社といえます。 このような事業を進める過程で、平成10年7月に求人募集をした際に、国際救援センターの相談員の方から、当社の近くにある「いちょう団地」の県営住宅にお住まいのベトナム人4人の紹介を受け、相談員の誠意と熱意ある説得から、少々の戸惑いを持ちつつも初めて外国人労働者の受入れを決意しましたが、採用は2〜3ヵ月経つにつれ、真面目で勤勉さらに忍耐強い就業態度に、当初の不安は払拭され、逆に大いに感心させられたことを昨日のことのように覚えております。 その後、4名の方々の友人、知人、そのご家族の紹介などにより雇用の輪は広がって、平成12年度のピーク時には外国人就業者が40名を超える月もあり、現在では、33名の外国人就業者の中、18名のベトナム、カンボジアの人たちが元気に働いており、その方々の力と頑張りが、会社の発展を支えているものと感謝しております。 今年に入り、ISO9001の認証取得や、現場の作業者を中心とした小集団活動や生産性向上活動等の推進を行っておりますが、言葉や文字に対するハンディキャップを克服し、日本人と変わることなく、相互に理解しあいながら、安全で働きやすい職場を目指しております。その小集団活動のグループのひとつに、ベトナム人が中心のサークルで「ニヨン ムイハイ ウオイ(12人の仲間)」と名付けたメンバーたちも、多大な成果をあげております。 長引く景気の低迷とグローバル化による企業の海外転出等が加速する今日、国内産業として雇用を守り、生きぬくためには、働く者が力を結集する必要があります。そのためにも、難民の皆さんとはいえ、日本で一緒に仕事をする仲間として、自信と勇気をもって、明日の夢(目標)の実現に向けて頑張りましょう。 結びに、難民救援事業に対し、奥野理事長様をはじめ、国際救援センター関係者の方々のご尽力に心から敬意を表すものであります。 これからも、微力ではありますが、定住インドシナ難民の方々に雇用機会のお役立ちができるよう、心掛けてまいります。 本日はどうもありがとうございました。 「2002.12 アジア福祉教育財団機関紙『愛』」より転載