国際救援センター93期生の日本語教育「戸外学習」

国際救援センター93期生の日本語教育「戸外学習」 2004年12月10日金曜日。冬空の下、国際救援センター93期生にとって待ちに待った戸外学習の朝がきました。 寒さをよそに元気な声が飛び交い、合計9クラス76名の学習者たちは職員に見送られて足並み軽く出発しました。 向かった先は、高齢者クラスがしながわ水族館へ、また、成人・ジュニア・児童クラスが東京タワーでした。 クラスの旗を持つリーダーを先頭に、教室で学習した交通機関の利用や各機関の日本語表示の読解、昼食の注文から支払いまでを実践していきました。移動中、講師に質問する者、メモをとる者、他の学習者に教えてあげる者など、みんな戸外学習に積極的に参加していました。 その活き活きとした様子をご紹介します。
(1) 高齢者の2クラスは往復とも専用バスを利用。 車内では、日本語で自己紹介や家族の話をした。 「チューリップ」「きよしこのよる」「ジングル・ベル」といった日本語の歌が何度も披露され手拍子で盛り上げた。
(2)ジャンプ! しながわ水族館のイルカは、みんなの期待に元気よく応えてくれた。
(3)拍手喝采!! 「たのしい。たのしい」「さかな、じょうずです」と、大歓声を上げながらイルカショーにくぎ付け。
(4)「このさかなは、ベトナムにもいるわね」「いや、色がちがうね」と母語で会話する学習者も講師が近寄ると、今度は日本語で、「せんせい、さかな ベトナム います」「せんせい、ベトナム さかな おいしい」と口々に話す姿があった。
(5)成人・ジュニア・児童クラスは初めて利用した交通機関を利用し、無事目的地に到着。 有名な東京タワーに来たという喜びで学習者たちに笑顔がこぼれた。
(6)昼食は練習のかいあってうまく注文ができた。 センターの食堂でずいぶん慣れた日本食。「あなたの注文したものは、日本語でなんて言うの?」
(7)増上寺の前で親子揃ってハイ チーズ。この日は親も子も学習者。

難民定住者の職場を訪ねて 〜定着指導・求人開拓及び雇用状況調査の実施

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難民定住者の職場を訪ねて 〜定着指導・求人開拓及び雇用状況調査の実施

難民事業本部では、難民定住者の就職あっせんに資するため、毎年数回、国際救援センター(以下、「センター」という。)を退所した難民定住者が勤務または職場適応訓練を受けている事業所を対象に定着指導・求人開拓及び雇用状況調査を実施しています。2004年12月9日には神奈川県相模原市、秦野市及び伊勢原市に所在する事業所を訪問し、難民定住者の勤務の様子を拝見するとともに、当人からは仕事や生活等の近況を、また、事業所からは勤務態度等を聴取しました。そして、職場への定着状況について事業所の担当者と懇談を交え、問題点や悩み事等についても意見交換を行いました。
品質検査を行う難民定住者
相模原市に所在している事業所は、パソコン、携帯電話の電子部品の成型、プレス、金型製造を行っています。従業員約100名のうち、外国出身者は数十名おり、うちベトナム出身者が現在12名勤務し、勤務年数が8年以上の者が大半を占めていました。この事業所には、センターのあっせんによりベトナム人女性1名が2004年10月に採用されて品質検査に従事しています。事業所における彼女の評価は、日本語も十分理解し、勤務態度もまじめでよくやっているとのことでした。品質検査には彼女のほかにセンターを退所したベトナム人女性が7名従事しており、事業所からは、ベトナム人は視力が良く、根気もあり、集中力に優れ勤勉であると評価も高く、品質検査の重要な即戦力としてベトナム人の主婦に対しても内職を発注しているとのことでした。求人についても引き続きセンター退所者の採用をお願いしたところ、受注の状況からすると景気回復までには至っていないが、良い人材があれば是非雇用したいとの返答をいただきました。 秦野市に所在している事業所は、上下水道用コンクリート管や蓋等の製造を行っています。従業員約60名のうちセンターを退所したカンボジア人2名とベトナム人3名が勤務し、勤務態度はまじめであるとの評価でした。そのうち2004年10月に採用されたベトナム人男性1名については、センターで基礎的な日本語教育を受けたが、日本語の理解力が不足しているため業務に差し障りがでているとの指摘があったほか、住宅の入居手続や健康診断の受診などの生活面についての指導が必要な者もいるとの意見がありました。
プラスチック部品の組立を行う難民定住者
伊勢原市に所在している事業所は、自動車のプラスチック部品等の製造を行っており、従業員約80名のうちベトナム等の外国出身者が30名弱勤務しています。この事業所には2004年3月にベトナム人女性が初めて採用され、組立・検査に従事しています。組立・検査は高度な技術を必要としませんが、速さと正確さが求められます。事業所における彼女の評価は、日本語、勤務態度、仕事の成果のすべてにおいて期待以上であるとのことであり、性格も明るく職場の皆から好かれているとの報告を受けました。求人についても引き続きセンター退所者の採用をお願いしたところ、事業所からは、業界の競争が厳しく、製品の価格は下がっても品質は求められているため、新たに求人をするよりも検査に従事していた経験者の確保に努めているが、必要があれば検討していきたいとのことでした。 調査を終えた感想として、今回訪問させていただいた事業所では採用された難民定住者がまじめでよくやっているとの評価をいただき安心はしましたが、また、いくつかの指摘を頂いたこともあり、この現状を真摯に受け止め、今後の支援に活かすとともに、難民定住者に対しても日本語力の向上など自助努力の必要性を助言していかなければならないと感じました。

「相談員の声 No.7」 自立支援に向けた就職相談

「相談員の声 No.7」 自立支援に向けた就職相談 関西支部職業相談員 堀加代子
学歴:中学校中退 年齢:40代の半ばを超している 職歴:母国で漁師(魚釣り)をしていた 日本語:「こんにちは」程度の挨拶くらいしか話せない その他:通勤手段となる自動車や二輪車の免許を持っていない
就職支援で関西支部にくる相談者のプロフィールの一例である。徐々に日本の景気が回復してきたといえ、彼等の就職支援をすることは非常に困難な面がある。 では、就職困難な難民定住者はどのようにして就職しているのか、また職業相談員はどのように就職支援をしているのか。職業相談員になって1年半、最初のころは関西支部に寄せられる難民定住者からの声、また、難民相談員(生活相談担当の相談員)からの情報でしか就職状況を知り得ることができなかった。だが、公共職業安定所への動向などで難民定住者と直接会う機会も増え、事業所を訪問するうちに、徐々に難民定住者の就職状況などをつかめるようになってきた。職を見つける方法として一番多いのが、友達の紹介のようだ。予約なしで、いきなり友達と職場まで一緒に行く。その場合、履歴書や職務経歴書などを持っていかないのがほとんどのようだ。日本でも縁故での就職があると思うが、いきなり職場に行くという行動が大胆でもあり、非常識にも思っていたところ、まずまずの就職率のようだ。職場に日本語が達者な同国出身の先輩が勤務しており、日本語能力が不十分な求職者でも援助されながら働ける状況のため就職に至っているのであろう。このような背景から相談員の就職支援も、まず、日本語が達者な同国出身者がいる事業所を探すことから始めている。難民定住者が大勢勤務している事業所はおおかた把握しているが、1人、2人くらいが勤務する事業所を完全に把握するのは困難である。少しでも多くの情報を得るために公共職業安定所の担当者等と情報を交換しながら、針の穴をつつくように探し当てる努力を続けている。 また、難民定住者自身の努力も必要だ。日本語が十分にできない人には、近くの日本語ボランティア教室を紹介したり、ある程度の日本語が話せ、生活に多少ゆとりのある人には自動車の免許や就職に有利な資格の取得方法を紹介したりしている。また、セミナーなどを開催し、難民定住者自身が就職に関する知識を深めることを提案している。 今年に入り自立支援へのサービスを明確にするため「求職相談のサービスについて」の独自のマニュアルを日本語とベトナム語で作成した。例えば、求職者から事業所へ求人をしているか問い合わせをしてほしいとの依頼があったので、電話の仕方、言い回し等を説明して自分で連絡するように伝えた。最初は、ためらっていたが、思い切って問い合わせたところ面接後に採用が決まったと、大喜びで連絡があった。採用が決まった以上に自分一人でやれたことが嬉しいようだった。就職活動以外にも、日本で生活して行く中で起こる疑問や困難を乗り越え、自分で解決できたという自信が自立につながるものだと確信している。 アジア福祉教育財団機関誌「愛」2004年12月発行より転載