ワークショップ難民2005

ワークショップ難民2005

難民事業本部は2005年8月12日、13日、14日の3日間連続して難民問題について考えるワークショップ難民2005を開催しました。大学生など毎回約20人の参加がありました。
難民が多く発生すると思う地域にシールを貼る参加者
難民としての体験を語るビルンさん
12日のテーマは「難民になる」でした。参加者は、難民の定義を学んだ後、グループにわかれていくつかのワークを行いました。世界の難民が多く発生している地域を調べるワーク、難民となった場合何を持って逃げるか考えるワーク、国境を越える際に他国へ入国する擬似体験などです。 13日のテーマは「難民を支援する」でした。JEN(難民への支援を行っているNPO)の浅川さんを講師に迎え、JENの海外での難民支援活動についてお話を伺いました。その後参加者はグループにわかれ、海外における難民の支援活動の計画を立案し、講師に立案についてコメントをいただきました。 14日のテーマは「難民と暮らす」でした。日本で暮らすラオス難民定住者のピンマチャン・ビルンさんをお招きして、難民となった体験談を聞きました。ビルンさんは、ラオス料理のレストランを経営するかたわら、ラオス語の通訳として活躍しています。日本人の友人に恵まれ、現在の生活を幸福と感じているとのことでした。参加者からは、ビルンさんの前向きな生活の理由や、日本育ちの息子さんの様子などについて質問がありました。 ここでは13日のワークを紹介します。5人から6人で1グループを作り、グループごとに「海外で難民支援を実施するとしたらどんなプロジェクトを立案するか」を考えました。

○支援を実施する国の背景や状況は次のとおりです。

A国においては20年以上に及ぶ内戦により、難民、国内避難民を大量に生み出し、その数は600万人に上り、難民は周辺国へ非難しました。 現在内戦は終結し、周辺国に逃れていた難民が帰還を始めています。A国のP州に多くの人が帰還しています。 P州には、元住んでいた多くの人が戻ってきています。P州の冬は寒く、また内戦で多くの建物が破壊され住む家がありません。現在はテントや親戚宅に身を寄せていますが、自分の家を再建することを望んでいます。人々は自らの住宅建設に取り組むことができます。 内戦中、校舎は兵舎として利用されたり、住居を失った人々の住居となっていました。現在校舎は、壁に砲撃による大きな穴があいており、破壊されたままです。他方、帰還してくる人々からは子どもたちに教育を受けさせたいという要望は強くなっています。

○このような状況で、学校再建と住宅建設のプロジェクトを立案します。プロジェクト形成に必要な要素を考えましょう。

  1. 何を目的にどのような支援を行いますか。
  2. 支援事業を実施するプロセスはなんですか。
  3. 支援事業実施のためにはどのような経費が必要ですか。また、その経費をどのように調達しますか。
  4. プロジェクト立ち上げにどのような困難が予想されますか。その困難にどのように対処しますか。また、どのような注意/配慮は必要ですか。

○参加者が立案したプロジェクトを紹介しましょう。

グループごとにプロジェクトを紹介
  1. 住宅建設 (1)当面の緊急救援として、食糧、毛布、テントを配布する。 長期的支援として、帰還民が自分自身で住宅を建設し、心のケアに役立てる。 (2)帰還民が自分たちで自分の家を建設し、最低限の生活が営めるようにする。 住宅建設の材料、技術の支援をする。
  2. 学校再建 (1)安心して教育を受けられる場所、青空教室をスタートする。どのような子どもが、どのような教育を必要としているか把握し、要望沿った教師を育成する。 (2)教師の人材育成プロジェクトを実施する。 教師の人材を発掘し、研修の機会を提供。学校建設等のインフラ整備のNGOとの連携をして校舎を再建する。

○講師の浅川さんからのコメント

参加者が考えた立案についてコメントする淺川さん
  1. 調査を実施後、データを分析することが大切です。対象者が望んでいるものが、彼らにとって最良のものとは限りません。
  2. 帰還民が自身で自分の住宅を建設することが非常に大切で、自力で活動することが心のケアにつながります。建設の材料、技術、人材すべてを提供することは最良の方法とはいえません。
  3. 資金調達は、多くのNGO団体にとって重要な課題です。
  4. プロジェクトの中立性と優先順位を両立することは、困難を伴うが大切なことです。
  5. 校舎の再建後については、建設の段階から、学校運営に関する地域のオーナーシップを育てておくことが大切です。
○参加者からは「自分自身でプロジェクトの実例について考えることができた」「プロジェクトを立案することの大変さを実感できた」「講師のコメント、参加者の異なった視点を知ることができ、よかった」等の感想が寄せられました。

コミュニティー活動「学校関係者のためのベトナムのこども理解講座」を支援

ベトナムコミュニティー
コミュニティー活動「学校関係者のためのベトナムのこども理解講座」を支援
難民事業本部はコミュニティー支援の一環として、2005年8月6日、7日にNGOベトナムin KOBE 主催で開かれた「学校関係者のためのベトナムのこども理解講座」を支援し、2日間のセミナーには計30名の学校関係者の参加がありました。 1日目は、主催団体の代表ハ ティ タン ガさんから、日本に在留するベトナム人のさまざまな在留資格についての説明がされた後、高校までベトナムで教育を受け、現在難民の孫として日本に暮らす同団体スタッフのグエン ティ タン ハーさんから、ベトナムの学校の制度や仕組み、子どもの生活一般についての話がありました。 2日目は、同団体スタッフの北山夏季さんから「学校でベトナム文化を教えよう!」というテーマで、総合学習等で多文化理解教育としてベトナム文化を取り上げる場合の進め方、教材、資料などの具体的な提案が出されました。ベトナム独自の民話や子どものあそびの紹介と同時に、ベトナム版の「シンデレラ」の話や「紙芝居」、「琴」など、日本の文化と比較しつつベトナム文化を理解できる教材も紹介されました。また、ベトナム語の学習会では、ベトナムの市場を場面設定して、簡単な挨拶から値段の交渉をする短いロールプレイの中でベトナム語に触れるという、楽しく体験的なレッスンが行われました。 最後に、兵庫県の多文化共生サポーターとして、小学校や中学校で通訳や指導補助をしている立花由香さんから、日本とベトナムの教育方法の違いや、ベトナム人保護者と日本人教員の教育観に対するずれなどについて、具体的な例を用いた説明がありました。たとえば算数の記号の規則では、「3:1」は日本では「3対1」ですが、ベトナムでは「3割る1」と教えられることが、ベトナム人の子どもたちが教科学習の中で混乱したり、保護者が子どもの宿題を見てあげられないなどの問題を生み出しているとのことでした。さらに、日本生まれの子どもとベトナム生まれの子どもでは、自らの言語や文化の受け止め方、ベトナムという国のとらえ方などが異なるという点、保護者との意思疎通を図ることの困難な点、学校が抱える問題点などに触れるほか、多文化共生サポーターの立場から必要に応じた日本語指導の実施など学校に望むことを挙げられました。 参加者は、教育現場での現状・活動内容の情報交換や、現場で抱える問題や悩みに関する意見交換を活発に行いました。

国際救援センターの夏祭り

国際救援センターの夏祭り

 国際救援センターでは職員と入所者自治会が話し合いを持ちながら所内行事を行っています。2005年8月4日には、盆踊りなどの民俗体験を通じて日本文化への理解を深めることを目的に「夏祭り」を開催しました。

 実施に際しては、実行委員(職員4名と入所者6名)を中心に企画立案を行いました。ファッションショーやゲームなどの担当を決め、職員と入所者がペアになり準備をしました。また、昼休みを利用して、全員で盆踊りや太鼓の練習をしました。

 当日になると、入所者たちは浴衣を身にまとい、地域のボランティアの方々と盆踊りを始め、歌にゲームに、ファッションショー、また、ベトナムの生春巻作りなど「夏祭り」を楽しみました。

太鼓の練習中
初めてのヨーヨー釣りに夢中
 
  生春巻き かぼちゃプリン
入所者の声【ベトナム・男性】

「日本社会に貢献したい」

今回、実行委員として屋台の責任者を務めましたが、「夏祭り」は大変意味のある行事で、入所者の多くが勉強になったと思います。入所者同士の連帯感も増しましたし、それぞれが役割に責任を持って取り組むことができました。最初は、ファッションショーの練習で、一部の人が思うように協力してくれず苦労しましたが、熱意が伝わってか徐々に協力してくれるようになり、当日は全員が力を発揮することができました。 また、個人差はあるものの、入所中は日本語の学習や環境の変化からストレスを抱えている人が多く、行事に取り組むことで少しはそのことが解消できたと思います。私たちは日本語が不自由なためいろいろな面でつらいこともありますが、「夏祭り」は職員を始めボランティアの方々が参加することにより、多くの人たちと交流することができました。 私は、少しの間日本で生活していて、日本の祭りを何度か見たことがありましたが、いつも楽しさを共有できず、むしろ孤独感を深めていました。今回、初めて積極的にかかわれる場と出会えて大変嬉しかったです。ベトナムにいたころはボランティアとして孤児院などで活動し、仲秋祭やテト(旧正月)といったベトナムの年中行事でお菓子を配布したり、月餅を作ったりした経験があります。日本でも「社会に貢献したい」という気持ちをずっと持ち続けていたのでセンターを退所してからは少しでも実現していきたいと思います。同じ気持ちを持っている入所者が大勢いるので、協力しながら「夏祭り」の経験を生かし、地域社会に貢献していきます。

(通訳を介したインタビューによるものです)

教育関係者に向けたセミナーを開催しました

教育関係者に向けたセミナーを開催しました

難民事業本部関西支部では、2005年8月から10月にかけて全5回、教育関係者を対象に難民理解セミナーを開催しました。生徒・学生向けの難民問題に関するワークショップの手法や資料を提供し、教育の現場で難民理解を深めてもらうことを目的としています。 8月11、12日に開催した「第2回多文化共生のための国際理解教育・開発教育セミナー(兵庫県教育委員会、神戸市総合教育センター、JICA兵庫、神戸YMCA、PHD協会の共催)」において、関西支部は2つのセッションを担当しました。
1つ目の「国際協力シミュレーション」セッション(約20名参加)では、国際協力がどのような流れで計画、実施、評価されていくのか、難民支援策をテーマに考えました。 難民の現状に関するビデオを見て、この難民が困っていることは何か、また彼らが必要としている支援は何かを各グループで話し合い、それぞれが提案した支援策をニーズ、効果、永続性、費用の面から評価しました。 各NGOはポリシー、キャパシティ、ニーズという3要素が合致する部分で実際の支援活動を行っていると講師が解説しました。「難民や戦争が自分たちとどうつながっているか分かりにくい」という参加者の意見に対しては、そのつながりを考えるきっかけとして「貿易ゲーム」などの手法を紹介しました。「教員が国際協力の現状をあまり知らないので、こうしたテーマを取り入れるのが難しい」という意見もあり、教科書教材を応用した手法や、NGOの実際の活動をリソースとして活用する方法などを提案しました。 2つ目のセッション「わたしが難民になったら」(約50名参加)では、「難民ってどんな人?」(難民の定義)、「もしあなたが難民となったら」(脱出時の持ち出し物を考える)、「難民キャンプで何を食べるか」(難民キャンプでの食事の量を推測する)、「ロープでボート」(ボートピープルの脱出用ボートの大きさをロープで復元し、乗船体験する)という4つのワークショップを行いました。また、教育の現場で難民理解に役立てることのできる資料や視覚教材を紹介しました。 難民の定義など細かな概念を理解するのが難しい小学生向けには、難民キャンプや難民の子どもたちの写真やビデオ映像を利用し、自分たちと同じ年頃の子どもたちが難民となっているイメージをつかめるような方法を紹介しました。また中高生向けには、紛争や平和というテーマに関連して難民問題を取り上げたり、日本で暮らす難民に焦点を当てるなどから学びを深めたり、またNGOが実際に行っている支援活動を調べることで難民問題への理解を得られると解説しました。 2日間のセミナーは大変好評で、セッションで得たものを活かして、早速新学期から取り組みたいという教員の声も聞かれました。 10月5、12、19日には、神戸クリスタルタワーにて、セミナー2005「難民×教育」を神戸YMCAと共催で開催し、各回約20名の参加者がありました。
第1回「難民とは」では、難民条約に基づく難民の定義の解説と、参加者が難民となったらどうするかを考えるワークを行い、難民の基礎的な理解を図りました。 第2回「日本の難民受け入れ」では、日本で暮らす難民が直面している課題について知り、私たちに何ができるかを考えていくワークを取り入れました。あるベトナム難民の子ども(中学生)が不登校になった状況を想定し、参加者が教員の立場となり何が原因として考えられるか、またどのような支援ができるかをグループごとに話し合いました。講師からは、不登校になったのは本人だけの問題ではなく、周りを取り巻く家族や学校、地域の問題として考えていくよう助言がありました。各グループとも、学校、地域、家族への支援が検討され、学校への支援としては「難民の歴史を学ぶ、異文化理解の促進を図る」地域への支援としては「日本語教室の開催、自治会などが住民との交流会を開催する」また、家族への支援としては「生活支援、就職支援、社会保障支援」などが挙げられました。また、子どもセンターなどの専門家の支援を利用するアイデアも挙げられました。最後に講師が、難民問題は学校、公的機関、地域など難民とかかわるすべての人が協力して、解決していく必要があると話しました。 第3回「難民支援シミュレーション」では、難民支援をする上でのプロジェクトサイクルを説明し、参加者がNGOスタッフになったと想定して、難民キャンプと第三国定住での難民の問題と支援策について話し合いました。難民キャンプでは「物資や食料の配給・教育の充実・衛生保健」など、第三国定住では「言語の習得・心理的ケア・アイデンティティーの保持・就職支援・社会保障・住居確保」などの必要性が問われました。 両セミナーとも、難民について学ぶのは初めてという教育関係者がほとんどでしたが、授業に難民問題を取り入れようと、熱心に手法を学ぼうとする教員の方が昨年に比べ増えていたように感じられました。今後も難民問題に関する教育現場での取り組みを促進していきながら、セミナーを通じてネットワークを拡げていきたいと思います。 報告書(PDF 253KB)アンケート集計結果(PDF 35KB)