アフガニスタンにおける日本NGOの活動
(2002年3月1日〜15日の現地調査)
難民事業本部は、アフガニスタンの難民・国内避難民の現状と支援状況を調査するため、3月1日〜15日現地を訪れました。特に2001年8月〜9月に行った調査後に活動を展開した日本のNGOの活動状況が今回の調査の目的です。今回はアフガニスタンの首都カブールと北隣のパルワン州、北部マザリシャリフとサリプール州で、活動の現場を見学し、国際機関、暫定政権、NGOから話を聞きました。
難民・国内避難民の状況
2001年10月発表のUNDP(国連開発計画)の報告によると、アフガニスタンの平均寿命は約40歳(調査した187ヵ国中180位)、5歳以下の子供の死亡率は26%(191ヵ国中189位)と世界でも最低水準となっています。20年以上に及ぶ内戦が開発の機会を奪ってきた結果です。加えて35年振りともいわれる干ばつのため、アフガニスタン全土が食糧不足となっており、支援を必要としている人が900万人いるとされています。
内戦は難民を生み続け、総数はパキスタン、イランを中心に約400万人。2001年9月以降UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は最悪のケースとして周辺国に150万人の難民が新たに流出すると予測しました。そこまでの数字には至らなかったもののパキスタンに25万人以上が新たに流出し、その内20万人以上をUNHCRが国境地帯の16のキャンプで支援しています。逆に11月以降パキスタン、イランから26万人が自発的に祖国へ帰還しました。また、国内避難民は2月末現在92万人がキャンプ等に滞留しています。
日本NGOの活動
この半年間のアフガニスタン支援で最大の課題は氷点下の厳しい冬を乗りきることができるかでしたが、軍事作戦や治安悪化の影響で、支援物資を届けるのが難しい状況が2001年末まで続きました(別表参照)。
サリプール国内避難民キャンプに、「ピースウィンズ・ジャパン」が居住用テントを届けることができたのは12月31日。最低気温は既に零度を下回っていた時期です。今回半年振りに訪れたキャンプには食料、水、医療等の支援もあり、避難民の数すら判明していなかった9月とは格段の違いでした。
「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」は食料が不足しているサリプール州の農村部で小麦、豆等を配給しています。WFP(世界食糧計画)を通じて送られてきた小麦は、日本、アメリカ、フランス、フィンランド提供のものでした。
越冬支援としては、「JEN」がカブール、ジャララバードで毛布、キッチンセット、ストーブなどの生活用品の配給を国内避難民、帰還民を対象に行っています。男性と目の部分だけをあけて頭からすっぽり全身をおおうチャドルを被った女性が別々に列を作り、整然と配給を待つ姿が印象的でした。
乳幼児死亡率、妊産婦死亡率が世界で最も悪い水準であるアフガニスタンで、母子保健医療に取り組んでいるのは「日本医療救援機構」です。マザリシャリフに助産院を開設し、周辺のキャンプで生活する避難民の妊産婦に医療を提供し、同時にアフガン人の産婆さんに研修も行っていました。
今後復興の妨げになると心配されるのが、地雷、不発弾の問題です。「難民を助ける会」は英国の地雷除去専門団体「HALO TRUST」と協力し、除去活動を実施しており、今回「HALO
TRUSTが行っている地雷回避教育をモスクで見学しましたが、模型やポスターを使った説明に3才から7才の男子と女子が一緒になって熱心に聞き入っていました。また、地雷除去の現場も見学しましたが、数限りない地雷が非常に巧妙に仕掛けられていることが分かり、全ての地雷が撤去されるまでにどれほど時間がかかるのか、暗たんたる気持ちにさせられました。
NGO、経済界、政府が協力・連携して、難民・自然災害の緊急援助を行うシステムである「ジャパン・プラットフォーム」の資金も活用して、これらの活動は実施されています。
アフガニスタンに息の長い支援を
アフガニスタンの農村では、桜に似たアーモンドの花がちょうど盛りで、小麦の苗は風にそよぎ、春がそこまで来ていると感じました。ようやく厳しい冬を乗り越えたアフガニスタンはこれから本格的な国の復興に取り組んでいきます。難民、国内避難民は年内に120万人が帰還すると見込まれていますが、政治的対立のために治安が良くない地域もあり、帰還の妨げとなっています。道路、水、電気、通信、学校、病院などインフラ再建もこれからです。アフガン難民は昨年9月までは「忘れられた難民」と呼ばれていました。復興には国際社会の息の長い支援が必要です。私たちがいかにアフガニスタンに関心を持ち続け支援していけるかが、復興のカギとなります。
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