アンゴラ・ザンビア
アンゴラ難民の状況〜アンゴラ・ザンビア (2003年6月28日〜7月15日の現地調査)
ガゾンボのレセプションセンター
難民事業本部は、アンゴラ難民の本国帰還と国内避難民の実状・支援状況及びアンゴラの隣国であるザンビアの難民受入れ地域における開発プロジェクトの状況を調査するため、2003年6月28日から7月15日までアンゴラとザンビアの現地調査を実施しました。 1.アンゴラ (1)アンゴラの状況 1975年のポルトガルからの独立抗争前後より、政府と反政府勢力(UNITA)の間で内戦が続いていましたが、2002年2月にUNITAの指導者が死亡したこともあって、同年4月、停戦合意が成立し、27年間にわたる戦闘が終結しました。この間に、約400万人の国内避難民が発生したほか、近隣周辺国に約45万人が逃れ、1,500万個もの地雷が埋設されているといわれています。 (2)アンゴラ難民の本国帰還 アンゴラ難民の本国帰還に関して、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、アンゴラ政府、周辺国政府(ザンビア、ナミビア、コンゴ民主共和国、ボツワナ等)の三者合意が2002年11月、12月に相次いで締結され、2003年6月から帰還が始まっています。
ガゾンボのレセプションセンター
ガゾンボのレセプションセンター
(イ)UNHCRの支援による帰還が開始された州は、北部のザイーレ州、南東部のクアンド・クバンゴ州及び東部のモシコ州ですが、調査団はこの内、モシコ州を訪問しました。UNHCRは2003年の帰還民数を17万人と予想していますが、その内、モシコ州には78,000人が帰還するとみられており、コンゴ民主共和国との国境近くのルアウとザンビアの国境近くのカゾンボに、帰還民を一時受け入れるためのレセプションセンターが開設されています。 (ロ)UNHCRによる帰還民への支援 帰還民は、レセプションセンターに3〜4日滞在し、身分登録や、健康診断のほか、地雷回避教育、AIDS予防の教育を受けます。センターを出るときには、住居を建てるための道具、毛布、石鹸、調理用具、ビニールシート、バケツ及びWFP(国連世界食糧計画)からの食糧等を受け取り、自力で出身地に帰っていきます。また、帰還地ではFAO(国連食糧農業機関)から農機具と作物の種等が提供されることになっています。 (ハ)ニーズ UNHCRは出身地などへ帰還させる際の条件として、道路によるアクセス(トラックで支援物資が輸送可能)、食糧・飲料水源の確保、地雷の回避、保健医療施設、教育施設などが確保されていることとしていますが、現在条件を満たしているのはレセプションセンター周辺の2地域のみです。しかし、周辺諸国で帰還を待っている人の中には条件が整っていない地域でも自主的に戻っている人がいます。国連機関やNGOは、2004年には道路によるアクセスが可能となる地域が増えることもあり、条件を満たしていない地域にも多数が帰還していくことが予想され、地雷回避教育、保健医療、食糧配布、インフラ整備等の支援が必要となるだろうと考えています。 (3)アンゴラの国内避難民 UNOCHA(国連人道問題調整事務所)の調査によると、国内避難民は国内の18州すべての州におり、現在報告されている数は140万人におよびます。
NGOの支援で修復工事をした小学校で学ぶ児童(ウアンボ州)
NGOの支援で修復工事をした小学校で学ぶ児童(ウアンボ州)
(イ)ウアンボ州 調査団は内戦当時UNITAの本拠地であったウアンボ州を訪問しました。 国内避難民の数は数万人と推定されていますが、WFPによると、地雷や道路事情が悪くアクセスできないため食糧配布ができない地域があるとのことです。 (ロ)ニーズ それでもウアンボ州は他の州に比べて状況がよいので、人道支援活動が盛んで、多くの欧米のNGOが活動しています。同州はもはや緊急援助の段階ではなく、復興・開発援助の段階にあり、合理的な社会開発支援が必要になってきています。運輸・医療のシステムづくり、教育や人材育成の分野など専門性の高い分野への協力が必要と思われます。

2.ザンビア

(1)ザンビアの状況 ザンビア政府は1966年からアンゴラ及びコンゴ民主共和国からの難民を受け入れてきました。難民受入れ地域は、難民へ農業用地を提供するなど経済的に負担を抱えています。 (2)難民受入れ地域の開発プロジェクト
ボランティアで井戸掘りをしている村人
ボランティアで井戸掘りをしている村人
このような状況の中でザンビア政府は、UNHCRを中心に各国と協力して、難民と地域住民が援助の依存から脱却し、貧困を撲滅し、地域社会の復興に寄与するプロジェクト(「ザンビア・イニシアティブ」と称する)を西部州の難民受入れ地域において2001年末より開始しました。 長期滞在しているアンゴラ難民等が受入れ国であるザンビアに定住することが実現すればこのプロジェクトは、難民受入れ国の開発支援の好事例になると思われます。 (3)プロジェクトの実施状況 調査団は米国、デンマークによって資金提供さている井戸掘り、穀物貯蔵庫建設、レンガづくり、学校建設、病院の水槽修復等のプロジェクトを視察しました。 プロジェクトの事業実施団体は村民から選ばれた「村落開発委員会」の22団体で、4名のコーディネーターの指導と監督の下、プロジェクトを実施しています。 (4)今後の課題
デンマークによって資金提供されている学校建設
デンマークによって資金提供されている学校建設
(イ)プロジェクトの一部の作業はボランティアで行われていますが、レンガづくり、学校建設には賃金が支払われており、雇用の創出に貢献しています。また、「村落開発委員会」のメンバーに難民が含まれており、難民の定住促進に役立っています。 (ロ)井戸掘り、建設等の実際の作業は開始されて間もないため、完成されたものを見ることができませんでした。プロジェクトの成功の鍵は、これら完成後の維持管理にあるように思われます。 (ハ)穀物貯蔵庫建設及び農作物の作付け用種子はリボルビング・ファンド(注)で実施されますが、資金を回収できるのは2004年になるので見守る必要があるでしょう。 (注)穀物貯蔵庫建設に関しては、希望者に資金を提供し、完成後、貯蔵庫で保管していた穀物を市場で売り、資金を返還させる方式。種子に関しては、農作物の収穫後資金を返還させる方式。
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