英国における難民受け入れと支援の状況
(2006年10月29日〜11月5日の現地調査)
難民事業本部は、英国における条約難民及び庇護申請者などに対する支援状況を把握する現地調査を実施しました。
1.英国における難民受け入れ
英国は1951年難民の地位に関する条約を1954年に批准し、第二次世界大時のポーランド難民に始まり、1970年代からのベトナム難民や1990年代後半にはコソボ難民を受け入れてきました。
1980年代末に個別庇護申請者数が増大したことから、1993年に難民と庇護申請に関する法律が整備され、不服申し立て制度の改革として1996年に審判制度が導入されました。難民認定制度は簡素・迅速化を目的として改正が重ねられ、難民認定申請数は2002年の84,130件をピークに2005年は25,710件(扶養家族を含めると総計30,840人)に減少しました。難民認定者数はピークの2001年13,490件から2005年は2,225件へ、在留特別許可数は2001年21,600件から2005年2,930件へと推移しました。また、英国はクオータ制度を導入し、2004年よりUNHCRとのパートナーシップによる第三国定住プログラムを開始しました。
2.難民受け入れ制度
(1)庇護申請手続きに基づく受け入れ
英国での庇護希望者は、上陸地の入国管理局、もしくはロンドン郊外のクロイドンもしくは英国北西部のリヴァプールにある内務省の移民国籍局(Immigration and Nationality Directorate(IND))で入国後直ちに申請を行ないます。同局では事前調査が行われ、指紋や個人情報のほか、入国経路(経由国で庇護申請が可能であった)、二重申請の有無などが調査され、英国での庇護申請の可否が審査されます。庇護申請が認められた者には難民申請登録証が発給され、民間団体が庇護申請者への情報提供などを行ないます。
本審査では、
①難民の地位に該当(在留期間5年)、
②人道的配慮による在留許可(同5年)、
③裁量による在留許可(同3年)、
④在留不許可のいずれかに該当するかが審査されます。庇護を却下された者は、通知を受けて10日以内に独立司法機関(憲法問題省所管)である庇護及び移民審判所(Asylum and Immigration Tribunal)に異議申し立てを行うことができます。
(2)第三国定住プログラムによる受け入れ
英国はUNHCRの第三国定住プログラム、「ゲートウェイ保護計画」を内務省と地方自治体、民間支援団体、職業あっせん機関の連携によって実施しています。難民キャンプを管轄するUNHCR現地事務所が選別した難民を英国の内務省職員が個別に審査し、受け入れが決定した難民はキャンプから直接英国に定住します。初年(2004年)度はリベリア、コンゴ民主共和国、ミャンマー等出身の難民計150人が、2005年にはエチオピア難民等250人が、2006年には500人が受け入れられました。
3.庇護申請者に対する支援
INDに属する庇護申請者支援部局(National Asylum Seekers Service(NASS))は、業務委託した民間団体を通じて、生活に困窮する庇護申請者に対して住居や生活費を提供しています。2005年末時点で、51,040人の庇護申請者がNASSによる支援を受けています。
都市部への集中を避けた地域分散型の居住政策により、庇護申請者は各地域の公営・民間の借り上げ住宅が割り当てられます。医療上の理由などの例外を除き、申請者は居住地域を選択できません。庇護申請者の年齢や家族形態等に応じて、英国民に対する生活保護の7割に相当する生活費が支給され、妊婦および乳幼児には特別手当が給付されます。庇護申請者の就労は原則として認められていません。国民保健サービス(NHS)によって無料で医療を受けられます。16歳未満の庇護申請者およびその子どもは英国民と同様に義務教育を受ける権利があり、高等教育も学費自己負担によって受けることが可能です。