パレスチナ難民と国連パレスチナ難民救済事業機関の活動
(2003年1月16日の講演)
難民事業本部は、世界の難民発生地域の政治情勢と難民状況についての最新の情報を提供するため1998年から「難民情勢講演会」を開催しています。第12回目として2003年1月16日(木)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)ガザ本部広報部に勤務している安藤直美さんを講師として、「パレスチナ難民とUNRWAの活動」の講演会を行いましたので、概要を紹介します。
1. パレスチナ難民
UNRWAはパレスチナ難民を「1946年6月から1948年5月にパレスチナに住んでおり、1948年の第一次中東戦争(イスラエル・アラブ戦争)の結果、住居村及び生活手段を失った人」と定義しています。
そしてUNRWAが支援の対象としているパレスチナ難民は、(1)上記の定義にあてはまる、(2)定義にあてはまる難民の子孫である、(3)自主的にUNRWAに登録している、(4)支援を必要としている、(5)さらにUNRWAの活動地域に住んでいる人です。
パレスチナ難民問題の特徴は、発生(1948年)以来最も長い間解決に至っていないこと、難民数が400万人弱で世界最大数であること、そして国連機関の中ではUNRWAが難民への人道支援を実施しており、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の支援の対象外であることです。
2. UNRWAの活動
UNRWAは1949年の国連総会決議でパレスチナ難民支援のために設立されました。設立当初は5年の短期の予定でしたが、現在まで期間が更新され支援活動を実施しています。
UNRWAが支援している地域はヨルダン、シリア、レバノン、イスラエルのガザ地区及びヨルダン川西岸地区の5地域です。この5地域にパレスチナ難民キャンプは合計59ヵ所あります。難民の数は1948年当時90万人程度でしたが、2002年6月現在で397万人です。UNRWAは難民キャンプに居住する難民の3分の1の人を支援しています。
UNRWAの支援活動は、教育、医療及び救済・社会サービスです。UNRWAはキャンプ内の小・中学校等640校、職業訓練校8校を管理運営し、またこれらの学校の教師を養成しています。問題点は、学校を二交代制にしてもクラスは過密状態であること、校舎が老朽化していることです。UNRWAの職員の半数以上は教師で、予算の60%がこの教育の分野に支出されています。
医療の分野は、外来診療、家族計画指導、母子医療、学校の医療教育等の基礎的な支援です。さらに、2002年の第2次インティファーダ(後述)以降、負傷者への医療支援、負傷者の社会復帰支援、カウンセリングの支援等が必要になりました。
救済・社会サービスの分野は、特別貧困ケース(一家の稼ぎ手がいない家庭)への食糧配布、現金支給、家屋修繕、就職あっせん等で、貧困緩和のための支援です。
そのほかには、女性世帯主、中小企業経営者のための小規模融資等の支援もあります。
3. 第2次インティファーダ
2002年9月に勃発した民衆蜂起と喚ばれる反イスラエル抵抗闘争です。これにより外出禁止令の発令、道路封鎖、チックポイント強化等が始まり、自爆攻撃、イスラエル軍の 攻撃があり、建造物の崩壊、人々の移動の制限、失業者の急増、ホームレスの発生等が起こっています。
第2次インティファーダ以降UNRWAは、雇用創出活動(道路舗装工事、教育・医療分野で難民を短期採用する)、食糧援助、現金支給、学校教育の補修、負傷者治療、負傷者のリハビリ(社会復帰支援、車椅子・義肢の提供等)、シェルター建設等の緊急支援を実施し、また緊急物資輸送の監視等の支援活動をしています。
更に詳しい情報を知りたい方は、
UNRWAのホームページをご覧ください。
【質疑応答】
Q‥ |
ガザ地区で現在活動しているNGOはありますか。 |
A‥ |
ノルウェーなど欧米のNGOが小規模に英語教育、スポーツイベント・絵画教室等を開催しています。 |
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Q‥ |
特別貧困ケースとは具体的にどのような状況の人ですか。 |
A‥ |
地域によって優先順位の選択判断が多少異なりますが、一家の稼ぎ手が死亡または病気により、まったく収入が途絶えている家庭です。女性の場合は未亡人、離婚後単身女性、子供がいても就労年齢に達していない女性世帯主家庭等です。 |