オーストラリア
オーストラリアの難民受入状況 (2004年8月28日〜9月4日の現地調査)
難民及び人道的配慮によって受け入れられた者が入国後に入居する一時滞在施設
難民事業本部は、オーストラリアにおける第三国定住プログラムによって受け入れられた難民及び難民認定申請者等に対する支援状況を把握するため、8月28日から9月4日まで現地調査を実施しました。 本稿では、オーストラリアにおける難民及び人道的配慮による受入プログラム、庇護(難民認定)申請者の受入プログラムの概要と支援状況を紹介します。 1.オーストラリアの難民政策(基本政策)の概要 オーストラリアは2,000万人の国民の約25%が移民という移民国家であり、難民政策は基本的に移民政策の一環として扱われてきました。 オーストラリアが、難民の受入れを本格的に開始したのは、1970年代にインドシナ難民が大量に到着してからのことで、1980年代にはアジア及び中東、1990年代には旧ユーゴを中心に、現在では全体の70%をアフリカ(主にスーダン難民)から難民及び人道的配慮による受入プログラムによる人たちを受け入れています。 2. 難民及び人道的配慮による受入プログラム 難民及び人道的配慮による受入プログラムには、オフショアー(off-shore)とオンショアー(on-shore)の2種類あり、近年、両プログラム併せて毎年約12,000人を受け入れています。 (1)オフショアープログラム オフショアープログラムは、海外にいる人を対象にしたプログラムで、〈1〉難民プログラムと〈2〉特別人道プログラム(Special Humanitarian Program(SHP))に分けられます。 難民プログラムは、自国で迫害のおそれがあり第三国での再定住が必要な人で、かつ自国の外にいる人を対象にしたプログラムです。 一方、特別人道プログラムは、自国で大規模な人権侵害を原因とした実質的な差別を受けやすい人で、かつ自国の外にいる人を対象にしたプログラムです。なお、特別人道プログラムによる受入れには、当該対象者を入国後に支援する呼寄せ人や呼寄せ団体が必要です。 (2)オンショアープログラム オンショアープログラムは、すでにオーストラリアにいる人を対象としたプログラムで、いわゆる、庇護(難民認定)手続の結果、オーストラリアへの在留を許可された人を対象にしたプログラムです。 3. 庇護(難民認定)申請者に対する支援
一時滞在施設の居室
オーストラリア入国後、45日以内に庇護(難民認定)申請した人で、金銭的支援・医療支援が必要な人は、移民・多文化・先住民問題省(Department of Immigration and Multicultural and Indigenous Affairs(DIMIA))の庇護申請者支援スキーム(Asylum Seekers Assistance Scheme)と呼ばれる支援を受けることができます。同スキームは、DIMIAと契約を結んだオーストラリア赤十字社が実施しています。ただし、裁判中は同支援を受けることはできません。また、入国後45日以内に庇護(難民認定)申請した人は就労を認められることもあります。 一方、オーストラリア入国後、45日以内に申請しなかった人は、教会やコミュニティーなどからの支援を受けることができますが、政府からの支援は受けられず、また、就労も認められていません。 4. 難民及び人道的配慮による受入プログラムによって受け入れられた人に対する定住支援 難民及び人道的配慮により受け入れられた人は、原則として6ヵ月間、「IHSS(Integrated Humanitarian Settlement Strategy)」と呼ばれる政府主導の定住支援プログラムによる支援を受けることができます。IHSSには、空港への出迎え及び社会保障サービスを提供している団体(Centrelink)への登録支援、住居支援、生活に必要な物資の支援、精神疾患及びトラウマにかかっている者に対する支援などがあります。 このほかにも、移民としてオーストラリアに受け入れられた人と同様に、無料で510時間(100時間まで延長可能)の英語教育プログラム、就職支援、通訳・翻訳サービス、定住に必要な情報提供サービスなどの支援を受けることができます。 以上の支援を実施しているのはDIMIAと契約を結んでいるNGO、コミュニティー団体、民間企業です。これら団体や政府によれば、難民及び人道的配慮により受け入れられた人のオーストラリア定住は、移民国家という歴史的背景もあり、比較的スムーズにいっているようです。しかし、大都市に集住している、英語を十分に習得できない人や就職が困難な人も一部いるなど、日本と同じような状況もありました。 ⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 312KB)
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