カナダ
カナダの難民受入と支援状況 (2005年8月21日〜28日の現地調査)

 難民事業本部は、カナダにおける第三国定住プログラムによって受け入れられた難民及び庇護(難民認定)申請者等に対する支援状況を把握するため現地調査を実施しました。

1.カナダの難民政策(基本政策)の概要 第二次世界大戦以降、カナダは75万人以上の難民を受け入れてきました。カナダが難民を受け入れる理由としてあげられるのは、国際社会に対する貢献があります。これは、難民受け入れが(1)弱者保護の観点だけではなく、難民問題の恒久的な解決となる、(2)負担の分担になる、(3)国際的または地域的な問題の解決のための戦略の一部となりうる、(4)紛争地域の緊張緩和への貢献となる、という考えに基づくものです。 政府は、難民を受け入れる際、定住開始から3年から5年以内に自立できると思われる人を受け入れており、定住のためのプログラムも3年から5年以内の自立を目標としたものが組まれています。このプログラムは移民・難民共に分け隔てがありません。 受け入れられた難民は、連邦政府により各州に割り振られますが、ケベック州に関しては、連邦政府と独自の取り決めがあり、難民を振り分ける際にも、受け入れる難民を選ぶ権限等が与えられています。 2.庇護制度 カナダの難民受け入れには、第三国定住プログラムによる受け入れ(クオータ制)と個別審査による受け入れがあります。

(1)第三国定住プログラムによる受け入れ 第三国定住プログラムによる受け入れには、政府がスポンサーとなって受け入れる(Government sponsored)プログラムと民間(NGOなど)がスポンサーとなって受け入れる(Privately sponsored)プログラムがあります。両プログラムとも、受け入れる地域、人数等の計画・策定を行うのは政府です。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、民間スポンサーの団体からの受入希望が出された後、政府は、計画に沿って受入地域及び人数を決定します。 同プログラムによって、アフガニスタン、コロンビア、イラン、イラク、エチオピア、スーダンなどから難民が受け入れられています。

(2)個別審査による受け入れ カナダで庇護を求める人は、民間事業者のカナダ国境サービスエージェンシー(Canada Border Services Agency)又はカナダ市民及び移民庁(Citizenship and Immigration Canada)に申請します。カナダ市民及び移民庁は、36時間以内に犯罪歴等を調査し、申請の受理の有無を判断します。申請が受理されると、移民及び難民委員会(Immigration and Refugee Board)が難民該当性の審査を行います。移民及び難民委員会の決定に不服がある人は裁判所に異議を申し立てることができます。 3.庇護(難民認定)申請者に対する支援 申請者に対する支援は、連邦政府が所管する医療支援を除いて州政府が実施しています。各州政府によって支援内容が異なるものもあります。 カナダでは、申請者のみを対象とした宿泊施設はありませんが、申請者でも条約難民などを主な対象とする施設に入所することは可能です。施設に空きがない場合にはホテルや緊急宿泊施設に滞在することができます。 語学教育支援は、州政府によって異なります。調査団が訪問したオンタリオ州では、公式には語学教育支援を行っていません。一方、ケベック州では、州政府が予算措置している語学学校などに、申請者も無料で通うことができます。ただし、両州ともNGOなどは申請者に対する語学教育を行っているようです。 申請者が就労許可を取得することは可能です。ただし、就労しなくても生活できる場合、カナダに親類がいる場合、申請者の家族の内、一人でも就労している場合は、就労許可は付与されません。語学力や法的地位の問題から、申請者の就職先は、大抵単純労働に限られているようです。 生活費はカナダ国民にも適用される生活保護の枠組みの中から、生活保護申請した者に対して支払われています。

4.クオータ難民及び条約難民等に対する定住支援

民間がスポンサーとなって受け入れた難民に対しては、スポンサーが定住開始から3年間までは財政などの支援を行うこととなっています。 政府がスポンサーとなって受け入れた難民などに対しては、政府が予算措置しNGOなどが実施するプログラムによる支援が行われます。同プログラムには、財政支援、語学教育支援などが含まれています。政府による支援プログラムは、原則として1年間のみですが、その後は州政府やNGOなどが支援を行っています。 なお、ケベック州に関しては、連邦政府との取り決めにより、州政府が独自のプログラムで定住支援を行っています。
難民のための宿泊施設 移民・難民等に対する英語教室
⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 254KB)
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