リベリア難民と帰還民 〜シエラレオネの状況
(2004年2月18〜28日の現地調査)
難民事業本部は、シエラレオネにおけるリベリア難民とシエラレオネ帰還民の状況・支援状況を調査するため、2004年2月18日から28日までシエラレオネの現地調査を実施しました。
1.リベリア難民
シエラレオネは1990年代に流入した旧リベリア難民と、2001年以降に流入した新リベリア難民を受け入れています。
(1)旧リベリア難民
(イ)1989年末、リベリアでは反政府勢力が隣国の象牙海岸から侵入して内戦が始まり、泥沼の戦いが7年半続き、25万人が死亡、76万人の難民が周辺国に流出、150万人の国内避難民が生まれました。
(ロ)シエラレオネは1997年までに約15,000人のリベリア難民を受け入れました。2000年のUNHCRの調査によると、約7,000人が都市部に滞在しています。
(2)新リベリア難民
(イ)2001年以降リベリア政府軍とリベリア和解・民主連合、リベリア民主運動との反政府勢力との対立から国内の治安状況が悪化し、再び32万人の難民が周辺国に流出する事態となりました。
(ロ)シエラレオネは2001年以降、約67,000人の新リベリア難民を受け入れています。このうち南東部地域にある8ヵ所の難民キャンプに収容されているのが55,005人、そのほかは都市部に滞在する難民や国境地域に滞在している難民です。
(ハ)リベリアでは2003年8月に包括和平合意が成立して、同年9月には国連リベリア・ミッション(UNMIL)※が全国的に展開し、国内が安定してきていることから現在自主的に帰還している人もおり、調査団が面接した難民の多くは帰還を希望していました。
(3)リベリア難民への支援
(イ)シエラレオネ政府
シエラレオネ政府は2000年に国家社会活動委員会を設立し、シエラレオネ帰還民の支援と共に新リベリア難民の受入れにも責任を持ち、各種の支援事業で国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協力しています。
(ロ)UNHCR
旧リベリア難民はシエラレオネに長期に滞在していることから、これらの人々を保護し、職業訓練、医療、法律扶助などの難民の自立促進を目的とした援助を行っています。今後旧リベリア難民はリベリアへ帰還するか、シエラレオネへ定住するか選択をすることになりますが、シエラレオネ内戦に関与したリベリアに対する反感もあり、シエラレオネ定住は容易ではありません。
新リベリア難民へは、国際的保護の活動のほか、難民キャンプの設営、キャンプ内での基本的支援活動を実施しています。また、難民を受け入れている地域社会に対しては、コミュニティーセンターの建築、中等教育支援などを積極的に行っています。
(4)難民キャンプ
調査団は日本のNGOであるピース・ウィンズジャパンが管理している新リベリア難民のための難民キャンプ2ヵ所とアメリカのNGOが管理している難民キャンプ1ヵ所を訪問しました。
各難民キャンプはUNHCRが定めている基本的サービスをすべて提供しています。キャンプ内のスペースも十分あり、混みあっている印象はありませんでした。しかし、難民は、主食である米が配給されないことから、食糧に対する不満、自由がないことへの不満を述べた人がいました。また、コミュニティー支援では特に性差による暴力対策を重要視していることが印象に残りました。
2.シエラレオネ帰還民
(1)シエラレオネ難民の流出
シエラレオネ難民は1991年に始まった内戦により流出し、周辺国のシエラレオネ難民は1998年には48万人と最大数になりましたが、2001年になるとUNHCRが組織だって実施する帰還が始まり、2002年末には13万人に減少しました。多くの難民を受け入れている国は、ギニア、リベリア、ガンビア等である。
(2)シエラレオネ難民の帰還
(イ)難民の自主帰還は2000年9月頃始まりましたが、2001年にはシエラレオネ政府と反政府勢力との停戦合意があったものの、国内で武力戦闘も起こって国内避難民も増加し、帰還したものの出身地には戻れず国内避難民キャンプに滞在した人もいました。
(ロ)2001年の周辺国からの帰還民の数は約92,000人、2002年の帰還民の数は76,000人でした。
帰還民の主な出身地はシエラレオネ北西部のカンビア、南東部のコノ、カイラフン、ケネマ、プジェフンです。
(3)帰還民に対するUNHCRの支援
(イ)帰還時
UNHCRからは毛布、プラスチックシート、台所用品、ポリタンク、マット、石鹸及び出身地へ戻る交通費などが支給され、世界食糧計画(WFP)からは4ヵ月分の食糧が提供されます。
(ロ)帰還地における支援
帰還した地域においては、帰還民が自立することを目的として、小規模農業、識字教育などの学校、給水、衛生、村落のインフラ整備、市場の設営、技術訓練、婦人の能力開発などのプロジェクトを実施しています。
これらのプロジェクトはUNHCRと契約したNGOが実施していますが、実施の決定権は帰還民も含めた地域社会の住民がもっています。UNHCRは、このように住民が計画段階から参加し、オーナーシップ(所有の意識)をもって継続的に活動することを目標とした新しい試みを行っています。
(ハ)支援プロジェクト
調査団は、日本のNGOであるピース・ウィンズジャパンが実施している井戸の設営、ワールドビジョン・シエラレオネ等が実施している診療所、戦争未亡人を対象とした職業訓練、市場の設営、戦争による障害者のための住宅などを訪問しました。それぞれのプロジェクトでは、住民が管理・維持の部門に参加していることが特徴的でした。
UNHCRのこれらのプロジェクトへの資金提供は、2005年末までの予定であるため、その後の帰還民が自分たちでプロジェクトを継続し、国連シエラレオネ・ミッション(UNMISL)
※撤退後の地域社会の安定を見守る必要があると思われます。
※国連平和維持活動(PKO)として紛争解決、選挙、文民警察、人権、難民帰還支援、行政事務、復興開発など多くの分野で行う任務。
詳しくは報告書をご覧ください(PDF 428KB)