スリランカ
スリランカの国内避難民・帰還民 (2003年7月31日〜8月9日の現地調査)
スリランカの国内避難民・帰還民
ブリッジエーシアジャパンによる職業訓練の訓練生
スリランカ政府と反政府勢力の「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」との内戦は1983年に始まりました。この内戦は19年にわたって続きましたが、2001年12月に政権についた統一国民党(UNP)がLTTEとの停戦を宣言し、2002年2月ノルウェーの仲介によって双方向で停戦合意が締結されました。この結果、スリランカ国内外に逃れていた、国内避難民・難民の帰還が加速度的に増えてきています。 難民事業本部は、国内避難民・帰還民の現状を把握し、今後の支援活動の可能性を探るため、7月31日から8月9日までスリランカにおいて調査を実施しました。 1. 国内避難民・帰還民の状況 スリランカ政府と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、2002年1月時点で約80万人の国内避難民がいましたが、2003年6月末現在で約31万人が自発的にかつての居住地などへ帰還し、再定住を果たしています。その他、南インドへ逃れていた約85,000人のうち、約1,000人が自発的に帰還しています。 2.問題点 国内避難民や帰還民の再定住にとって、「ハイセキュリティーゾーン」の存在や土地所有権の問題は大きな壁となっています。「ハイセキュリティーゾーン」とは、スリランカ政府がLTTEの侵入を防ぐために設けた場所で、スリランカ北部のジャフナ地区に多く見られます。一般住民の出入りが禁止されているため、住居があったところが「ハイセキュリティーゾーン」となっている人は帰還を果たせていませんし、帰還した人でも、生活の基盤である漁場が「ハイセキュリティーゾーン」に指定されているため、漁ができず生活を維持できない人が数多くいます。また、20年にわたる内戦により、土地の所有権が誰にあるのかわからなくなったり、本来の所有者の土地を不法に占有して使用している例が多く見られています。その他、多くの地域で位置も不明な地雷が多数埋設されていることも大きな問題です。 3.支援活動
スリランカの国内避難民・帰還民
AMDAによる巡回診療の風景
スリランカの国内避難民に関しては、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、世界食糧計画(WFP)などの国際機関、国際協力事業団(JICA)などの日本の政府関係機関、各国のNGOが活動しています。日本のNGOであるブリッジ エーシア ジャパンは学校校舎の建設・修復、トイレ建設、井戸建設・修繕、職業訓練学校建設、AMDAは巡回診療、コミュニティー支援、日本紛争予防センターは地雷除去といった分野で既に活躍しており、その活動は非常に高い評価を受けています。 調査では、日本政府よりWFPを通じて送った米・ツナ缶が、Food for work のプロジェクトの中で配布されているところを見る機会を得ました。日本の支援と援助がしっかり帰還民にわたっている様子がうかがえました。 4.今後の支援ニーズ スリランカ全体にいえることは、国内避難民・帰還民が安定した生活ができるような中・長期的な復興・開発プロジェクトが期待されていることです。具体的には、所得の向上、生計手段の獲得、職業訓練、幹線道路の整備、医者・学校教師などの人的資源の拡充、病院・学校機材の設置、地雷の除去などが期待されています。
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