スリランカ
スリランカの国内避難民 (2000年11月28日〜12月1日の現地調査)
 スリランカでは、1948年の独立以降、シンハラ、タミル両民族間の対立が続いています。その結果、国内では多くの人々が、未だに避難生活を強いられています。そこで、難民事業本部は、現地に調査団を派遣して、避難民への支援活動の現状を視察しました。
避難民支援の現状 両民族の対立は、かつては全国的な大暴動事件に発展したこともあり、避難民の一部はインド南部に逃れたこともありました。現在は、北部において政府軍と、タミル・イーラム解放の虎(LTTE)との間で戦闘が続いているほか、東部でLTTEによるゲリラ活動があります。政府の統計によれば、避難民の総数は約67万人です。特徴的なのは、全国13県348カ所の政府福祉センター(避難民キャンプのこと)に収容されている避難民は、その内の約17万人であり、その他の約50万人は、親族や友人宅に身を寄せていることです。従って、避難民への支援は、この両者に対して行われています。 福祉センターでは、仮設住居や食糧の提供、井戸等の給水、小口融資(マイクロクレジット)、医療活動、初等教育等が行われています。センター外で生活している避難民に対しては、住居の修復や、マイクロクレジットによる自活のための資金(インセンティブ)の付与が主な支援活動になっています。 支援には、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、国際NGOや、国内NGOと協力して取り組んでいます。また、CHAという国内NGOが、地域的又は業務上の重複や抜け落ちを避けるために、NGO間の調整を行っています。 今後の支援の方向性 調査団が訪れた、東部の港湾都市であるトリンコマリ近郊の福祉センターでは、UNHCRとその実施パートナーが、今後は、避難民が農業等の生産活動に従事できるよう、農地の確保(ただし、この地域は人口が比較的になので、センター内の空き地の利用となるようです)、農具や種子の供給、職業訓練等を行いたいと言っていました。また、スリランカ政府も、北部の紛争地域に近いワウニヤ(VAVUNIYA)にある福祉センターに収容中の避難民に、センター外の土地とインフラ施設を提供して、同様の事業を展開していくことを計画中です。 総じてスリランカにおける従来型の支援は、よく組織されており、今改めて日本のNGOが参入する必要性は少ないでしょう。ただし、政府と援助関係者が、見通しの立たない紛争が終結することをただ単に待っているよりは、避難民に生活の手段を提供し、自立を促していく方が良いとの認識を、共有するようになったのはつい最近のことです。自立を促すための支援はこれから本格化するので、この分野でのニーズは大きいと言えます。
PAGE TOP