スーダン
スーダンにおけるエリトリア難民の状況 (2002年3月18日〜28日の現地調査)
1.難民の発生と現状
スーダンは9ヵ国と国境を接するという地理的要因から難民の流入は避けて通れず、エリトリア、エチオピア、ウガンダ、チャドなどから多くの難民が流入しています。 スーダンに滞留する難民のほとんどがエリトリア難民で、1960年代より始まったエチオピアからの分離独立戦争により流入した「旧エリトリア難民」と2000年のエチオピアとの国境紛争の影響により流入した「新エリトリア難民」に分けられます。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の統計によれば2000年末で約37万人(UNHCRの援助対象者は約17万人)がスーダンに残留していました。その後、スーダン政府、エリトリア政府及びUNHCRの三者合意に基づき2001年5月よりエリトリア難民の帰還が行われています。帰還は順調に進んでいるといわれていますが、現在もUNHCRの援助対象者約16万人を含む多くのエリトリア難民がスーダンに残留しています。 2.難民に対する支援状況 (1)スーダン政府 スーダン内務省の部局であるCOR(Commissioner for Refugees)が難民政策に関わる業務と、難民キャンプ等において給水、衛生、栄養、食糧、環境、教育など幅広い分野で難民支援の業務を行っています。また、森林省の部局であるFNC(Forest National Corporation)が植林などの環境分野での活動、教育省が一部のキャンプにおける中等教育に携わっています。 (2)国際機関 UNHCRが難民に対する保護活動のほか、帰還のための難民の輸送、難民キャンプにおける給水、衛生、栄養、食糧、環境、教育などの分野における活動を、WFP(世界食糧計画)が各キャンプにおける食糧の配給を、COR、NGO等との緊密な連携の下で行っています。 (3)NGO SRCS(Sudanese Red Crescent Society:スーダン赤新月社)が、疾病の初期治療や健康診断・予防接種等の保健サービスに加え、風土病、感染症の対策などの活動を行っています。その他、保健医療・衛生分野でHuman Appeal International、Islamic African Relief Agency、Global Health Foundation、教育分野でSudan Open Learning Organization、所得創出分野でOckenden International 等のNGOがUNHCRとの委託契約の下で活動を 行っています。 3.難民キャンプの状況 今回訪問したスーダン東部には、主にエリトリア難民が居住する難民キャンプが20ヵ所以上ありました。エリトリア独立戦争時に逃れてきた難民は20年以上キャンプで生活しており、三世代目になる家族も少なくありません。難民キャンプには、学校(基本的に初等教育のみ)、診療所等の施設があり、なかでも給水施設、環境プロジェクトの充実が特筆されます。給水については、川や運河等からポンプで水を汲み上げてタンクに備蓄し、浄水後、キャンプ内の給水所までパイプラインで送り出しています。水は難民だけでなく地元住民も利用することができます。環境プロジェクトは、難民の受入れ地域の環境改善のために行っている活動で、 CORやUNHCRなどが協力して進めています。具体的には、植林活動、省エネ活動の普及、環境に対する啓蒙活動のほか、難民の女性を対象に苗木の生産活動を行っており、所得創出にもつながっています。 4.閉鎖された難民キャンプ(旧キャンプ)の状況 2000年のエリトリアとエチオピアの国境紛争により流入したエリトリア難民受入れのため、同年5月に開設されたキャンプは、スーダン政府、エリトリア政府及びUNHCRの三者合意に基づき、期限を定めて帰還計画を進めた結果、2001年12月31日をもって閉鎖されました。ほとんどの支援団体は撤退してしまいましたが、帰還を望まない難民がいまだに閑散としたキャンプに残留しています。 5.今後の課題  キャンプに居住する難民は必要な支援を受けているようです。しかし、難民に直接話を聞いたところ、食糧、医薬品などの支援が不足しているとの訴えがありました。多くの難民は帰還の意思を示しているものの、長年キャンプでの支援に頼って暮らしてきたため、帰還後の生活に不安を感じている様子でした。支援関係者はキャンプでの所得創出活動が帰還先で活かせる技術になるということでその重要性を強調しています。エリトリア難民の帰還が順調に進展しているといわれる中、帰還先での持続的な再定住のために、スーダン国内とエリトリア双方における所得創出活動が今後重要になってくると思われます。
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