ドイツにおける難民認定申請者の受入施設
(2003年1月26日〜2月7日の現地調査)
当難民事業本部は、フランス、ベルギー、イギリス、ドイツにおける難民認定申請者(以下「申請者」)の受入施設の状況を把握するため、2003年1月26日から2月7日まで現地調査を実施しました。
本稿では、ドイツにおける申請者の受入施設について紹介します。
I.ドイツの難民認定申請者
ドイツでは、2002年、8万人の外国人が難民認定申請を行いました。ドイツの難民認定手続は、申請者が国境(国境警備局)、申請者受入施設、外国人局または警察署で、口頭、文書、又はその他の手段をもって申請の意思を表明することによって開始されます。難民認定審査を行う連邦移民・難民庁の審査にかかる時間は、通常数日から3ヵ月ですが、行政裁判所に不服を申し立てた場合は1年から2年かかる場合もあります。
難民認定審査期間中、申請者は受入施設への入居が義務付けられています。施設は「第1次施設」と「第2次施設」に分けられます。第1次施設は、連邦移民・難民庁による審査が終了するまでの間滞在する施設で最長3ヵ月まで入居することができます。第2次施設は、連邦移民・難民庁による審査が長期化している、又は申請者が行政裁判所へ不服を申し立てたなどの理由により、第1次施設での入所期間が過ぎた場合に滞在する施設です。
調査では、第1次施設の1つアウフナッハミーティンリヒトゥング(Aufnahmeetinrichtung)を訪問しました。
II.アウフナッハミーティンリヒトゥング
1. 施設の概要
アウフナッハミーティンリヒトゥングは、ベルリン市郊外の工場地帯の一角にベルリン州の施設として建設されました。施設の運営は、ベルリン州との委託契約に基づきNGOが行っています。総ベッド数は500ですが、調査時には29ヵ国450人が入居していました。
施設は居住棟3棟と事務所管理棟に分かれています。居住棟には263部屋(2人部屋138室、3人部屋107室、4人部屋18室)と共同施設(台所、シャワー室、トイレ、洗濯室、子供のための遊戯室、相談室)が、管理棟には事務室、法律相談室が備えられています。
III.施設でのサービス
(1)食事
外部からケータリングにより1日三食の食事が支給されますが、ベジタリアンのための食事も用意されます。入居者は共同台所で自炊することも許されています。
(2)教育
子供たちは地域の学校に通うことができます。アウフナッハミーティンリヒトゥングでは、大学生のボランティアによるドイツ語教室(週2回・午後6時から10時まで)が開講されていました。
(3)就労
第1次施設入居者の就労は法的に認められていませんが、ベルリン州政府の方針で、アウフナッハミーティンリヒトゥングの入居者は月40時間の共同作業(施設の清掃、メンテナンス、補修工事補助など)に従事することとされており、1時間1ユーロが支払われます。
(4)医療
新規の入所者は、2週間に1度巡回するレントゲン撮影用バスで検診を受けます。アウフナッハミーティンリヒトゥングには医療スタッフが常駐しておらず、必要な場合は外部の医療機関で無料の診療を受けることができます。現在、ベルリン州では施設への医療スタッフの配置を検討中のようです。
(5)法的扶助
施設内の法律相談室に定期的に弁護士が来所しています。
⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 2.21MB)