ニュージーランドの難民受入と支援状況
難民事業本部は、ニュージーランドにおける難民受入政策を調査するとともに、難民(条約難民、クオータ難民)及び難民認定申請者等に対する支援状況を把握するため、2005年1月15日から22日まで現地調査を実施しました。
1.ニュージーランドの難民政策概要
ニュージーランドは面接約27万km
2(日本の約4分の3)。人口約404万人のうち約14%が先住民マオリ系、約80%がヨーロッパ系の移民の子孫、近年はアジアからの移民も増加しています。
難民の受入は、1944年ポーランドから900人の難民の子どもとその保護者を受け入れたことから始まります。その後も東欧、インドシナ諸国等から難民を受け入れ、60年には難民条約に加入しました。
87年からはクオータ(割当)難民を毎年750人受け入れ、世界で10ヵ国しかない第三国定住の受入国となりました。
2.難民の受入れ
(1)庇護申請者
庇護(難民認定)申請は労働省・移民サービスに属する難民地位課(Refugee Status Branch)が受け付けます。正式な申請書類を作成する前でも、例えば空港において口頭で意思表示をすれば申請手続きが始まり、弁護費用などの法的扶助も受けることができます。難民地位課で面接調査を受けた後、3ヵ月以内で認定、不認定が決定されます。
難民地位課の決定に不服があった場合には、申請者は難民地位控訴局(Refugee Appeals Authority)に異議の申し出をすることができます。難民地位控訴局は独立性の高い機関で、審査にあたる職員は弁護士など法的な専門知識を有しています。
92年度は難民地位課で決定された1,267ケースのうち247ケースが難民として認定されました。同時期に難民地位控訴局により決定された570ケースのうち64ケースが難民として認定されました。
庇護申請者は申請中3〜6ヵ月の滞在許可が与えられ、必要に応じて更新もされます。また、家族に1人就労も認められます。
(2)クオータ難民
87年政府は正式にクオータ(割当て)制度を確立し、それ以来UNHCRからの要請を受けて、毎年750人の枠で難民の再定住を受け入れています。
クオータ難民は、(1)UNHCRが特に緊急に法的・身体的保護を要すると認めた難民、(2)特に危険にさらされている難民女性、(3)障害や健康上の理由で医療的なケアが必要な難民で構成されます。受入れ数及び対象地域については、年度ごとに移民大臣がUNHCRなど関係機関、難民支援NGO、難民コミュニティ団体等と協議の上決定しますが、例年受け入れ枠を上回る約800人が受け入れられています。
79年度から03年度にニュージーランドが受け入れたクオータ難民の総数は約18,000人。国別ではカンボジア、ベトナム、イラクが多く、近年はソマリア、エチオピア、アフガニスタンが増えています。
3. 難民に対する定住支援
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マンガレ難民定住センター・難民は入国後6週間ここで過ごす |
(1)マンガレ難民定住センター(Mangere Refugee Resettlement Centre)
クオータ難民は入国後すぐにオークランドにあるマンガレ難民定住センターで寄宿し、定住準備のためのプログラムを6週間受けます。ニュージーランドにおける定住支援は、政府とNGOが密に連携して進められていますが、同センターも政府(移民サービス)と3つのNGOにより共同で運営されています。
英語教育はオークランド大学により、幼児、初等、中等、成人別12〜15人のクラスで行われます。基礎的な英語の修得と同時に、ニュージーランドでの生活に必要な英語や、子どもたちが地元の学校に慣れるためのカリキュラムも組まれています。また、紛争地帯から来た難民も多いことから、ディスカッションや写真を利用し平和教育も行われています。
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マンガレ難民定住センター・児童のための教室 |
難民がセンターを退所する際には、NGOのRMSが居住先を調整のうえ、市民から寄付された家具を手配します。センターのあるオークランド、ウエリントン等に多くの難民が定住しています。
また、マンガレセンターには庇護(難民認定)申請者の一部も寄宿し、外出が認められていることからセンターから通勤する申請者もいます。
(2)教育
センター退所後、学齢期の子どもは地元の学校に通いますが、通常のカリキュラム以外にESOL(英語を母語としない生徒のための授業)があります。ESOL対象者約24,000人(155ヵ国、101言語)のうち、約2,000人が難民であり、難民の受け入れに伴いその数は毎年500人ずつ増えています。
成人の難民に対しては、家庭にボランティアの教師が派遣されるホームチューター制度があります。訓練を受けたボランティアが週2時間英語を教え、難民の相談相手にもなっています。
(3)生活
難民には在留資格が与えられ、医療や失業手当などの社会保障が受けられます。また、クオータ難民には一家族当たり1,200NZドル(約9万円)の生活再建資金が提供されます。
庇護(難民認定)申請者も必要に応じて社会保障を受けることができますが、在留資格がない状態で空港で申請をした人の中には、治安上の理由で刑務所に収容される人もいます。
⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 900KB)