バングラデシュ
バングラデシュにおけるロヒンギャ難民の状況及び支援状況 (2007年3月25日〜3月29日) 難民事業本部はバングラデシュにおけるロヒンギャ難民の状況及び支援活動を把握するため現地調査を実施しました。 1. ロヒンギャ難民の流出と帰還 ミャンマーのラカイン(アラカン)州出身ロヒンギャ難民は、政府による土地の接収、強奪、恣意的徴税、強制労働等の迫害から逃れるため、1991年中頃〜92年初頭約25万人がバングラデシュに流出しました。94年から23万人以上が帰還しましたが、現在もコックスバザール州のクトゥパロン、ナヤパラの難民キャンプに2万6千人が残留しています。本国での人権状況が改善されないことから、この2年間は帰還がなく、一方でバングラデシュ政府も定住を認めない状況が続いています。第三国定住も極めて限られた人数にとどまっています。 2. ロヒンギャ難民に対する支援 (1)プロテクション(身体的及び法的保護) 家庭内暴力、難民女性に対する性的暴力・搾取、マジと呼ばれる難民内の実力者によるハラスメントは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の啓発活動等で減少していますが、依然として深刻な問題です。 (2)シェルター(住居) 各シェルターの老朽化は著しく、居室の広さも、シェルターの間隔も十分ではありません。UNHCRは2年間の計画で全てのシェルターの立て替えを計画し、既に完成している一部のシェルターには数世帯が入居していました。 (3)給水と衛生 クトゥパロンでは井戸から、ナヤパラでは雨水をタンクで浄化し給水されています。トイレ、シャワールームも設置されていますが、イスラム教徒の女性に対する配慮が十分ではありません。 (4)栄養 世界食糧計画(WFP)から米、豆、油、塩、砂糖、混合食品、調味料など1人1日あたり2,160カロリー分の食糧が配給されています。しかし、キャンプに住む非登録の難民約5,000人は配給対象ではなく、登録されて難民と食糧を分け合っているため、結果としてキャンプ内の低栄養状態を招いています。栄養補給プログラムが妊産婦、栄養失調の乳幼児、結核などの慢性疾患患者に対して実施されていますが十分ではありません。 (5)食糧配給 WFPが食糧の調達、バングラデシュ赤新月社(BDRCS)が食糧配布を担当しています。生活困難な家庭からボランティアが選ばれ、食糧の配布に参加しています。 (6)職業訓練 女性センターで裁縫・刺繍クラス、石鹸づくりが実施されていました。技術を習得すると同時に女性の社会参加を促す目的もあります。男性を対象として大工仕事、裁縫のクラスも計画されています。 (7)医療 診療所が設置され、2人の医師が1日約200人の患者に対応しています。緊急の患者はコックスバザールに運ばれます。 (8)学齢児童の教育 1キャンプに8小学校が設置され、幼稚園から5年生まで学齢児童の約9割の6,589人がミャンマー語、英語、数学を学んでいます。82人の教員が1人あたり約80人の児童を二部制で担当しており、教師(特に女性)の増員、教科の拡充と中高等教育の実施が課題となっています。 (9)女性と子供及びキャンプ内における弱者 家族計画があまり浸透していないこと、早婚、一夫多妻制などにより、女性1人あたりの出生率が6.7人ととても高くなっています。コンドームの配布、ピルの投与、啓発活動が行われています。 (10)テクナフ非公式キャンプ 2004年に非登録のロヒンギャ難民が行き場を失いテクナフの川岸に定着しました。7,640人が居住していますが、バングラデシュ政府はUNHCRの支援を許可しておらず、キャンプ内の環境は劣悪です。 3. 将来の課題と展望 難民のミャンマーへの帰還については、未だに実現可能性は低く、また、バングラデシュ政府はロヒンギャ難民の定住を認めていません。 このような状況の中で、短期的には、住居、栄養、医療をはじめとする支援水準が国際基準を満たすように、難民への支援を充実させることが課題となります。また、テクナフキャンプの難民をはじめとする非登録のロヒンギャ難民に対する支援を充実させることも求められています。 難民に対する支援と同時に、地域一帯の開発を含めた長期的視点に立った包括的な支援も重要です。 ⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 1.37MB)
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