フィンランド
フィンランドの難民受入れと支援状況 (2004年11月21日〜28日の現地調査) 難民事業本部は、フィンランドにおける第三国定住プログラムによって受け入れられた難民及び庇護(難民認定)申請者等に対する支援状況を把握するため現地調査を実施しました。 1.フィンランドの難民政策(基本政策)の概要 フィンランドは面積約33.8平方キロメートル(日本の国土の約9割)で、人口約522万人(日本の人口の約4.1%)のうち10.7万人(総人口の約2%)が外国人で、毎年増加しています。 フィンランドにおいては、第二次世界大戦後は海外へ職を求めて移民となる者が多かったのですが、1981年以降はフィンランドへ入国する移民の数が、出国する数を上回っています。 フィンランドに入国する難民と移民に対しては、フィンランド社会に定着することを期待する政策が採られていますが、同時に母国語、母国文化継承の支援も実施されています。 フィンランドでは、1999年施行の移民の定住促進及び庇護(難民認定)申請者の受入れに関する法律、そして2004年改正・施行の外国人法において、クオータ難民を含む難民の保護、支援等が定められています。 2.難民の受入れ フィンランドでの難民受入れには、UNHCRの提案に基づき、難民の出身国、滞在国、フィンランド社会への定着の可能性等を考慮した上で受入人数を設ける受入れ(クオータ制)と、個別審査による受入れとがあります。 フィンランドの国際的保護の考え方はジュネーブ条約(1951年の難民条約)よりも広く、クオータ難民と難民認定者の家族についても難民として捉えられ、滞在許可が与えられます。また、自国において、死刑、拷問、暴力的に人権の尊厳を損なわれるおそれのある人へも滞在許可が与えられます。 (1)クオータ制 クオータ制によって受け入れられる難民の毎年の受入人数とそれに伴う予算については、議会で決められます。具体的な受入難民の出身国、滞在国については、UNHCRの提案に基づいて、外務省、内務省、労働省、財務省の大臣レベルの作業グループによって決定されます。2001年以降の受入数は毎年750人で、主にイラン難民、アフガニスタン難民、スーダン難民、ベトナムモンタニャード(少数山岳民族)のほか、緊急ケース85人です。 対象者の選考は、難民滞在地において労働省、移民局、治安警察が行う面接調査で、それぞれの省庁がフィンランド入国後の定着の可能性、庇護の必要性、フィンランド国内における治安への影響等を総合的に判断して決定します。その他、緊急ケースはUNHCRより提示された書類審査のみで決定します。 (2)個別審査 庇護(難民認定)申請者は、国境または空港などの上陸地、入国後は警察署で申請をします。その後移民局がダブリン条約(EU加盟国の中で庇護申請の審査担当国を決定するための共通基準を確立した条約)に基づきフィランド国内で難民審査をするか否かを決定します。フィンランド国内で難民審査をしない者は、難民審査を担当する国(通常はEU加盟国のなかで最初に上陸した国)へ移送されます。 移民局により庇護(難民認定)申請が不認定となった場合は、ヘルシンキ行政裁判所へ異議申し出を行うことができます。また不認定決定後に再申請することが可能です。 3. 庇護(難民認定)申請者に対する支援
庇護申請者のためのレセプションセンター 8人用の居住室
上記2(2)のダブリン条約に基づく審査以外の庇護(難民認定)申請のケースでは、庇護(難民認定)申請者は労働省またはフィンランド赤十字社が管理・運営している合計15ヵ所のレセプションセンターに滞在します。レセプションセンター入所は義務ではありませんが、申請者はいずれかのレセプションセンターに登録をする必要があります。これら施設の中には18歳未満の未成年単身者のための専用施設もあります。 レセプションセンターにおいては、日当、食費、医療、通訳サービス等が提供されます。また申請者は、レセプションセンター内の活動に参加することが期待されており、参加は義務ではありませんが、参加しない場合は援助金が減額されることがあります。 レセプションセンターでは、日常会話程度のフィンランド語の語学教育が提供されていますが、職業訓練は提供されていません。 庇護(難民認定)申請者は、申請後3ヵ月を経過すると労働許可の申請が可能ですが、自ら就労先を探す必要があり、実際には職を見付けることは難しいようです。 4.クオータ難民及び難民認定者等(以下「難民」)への支援
エスポー市の活動センターで使用されているフィンランド語教材
難民への支援は、労働省が地方自治体に補助金を提供し、各自治体が独自の方法で支援をします。地方自治体は、家族・個人別の定住計画(Integration Plan)を難民と協力して作成し、定住促進(統合)プログラム(Integration Program)に組み込みます。 定住促進(統合)プログラムには、同国の公用語であるフィンランド語またはスウェーデン語の語学教育、フィンランド社会と文化の適応指導、フィンランドで就労するための技術訓練、フィンランド人との交流機会の提供などが含まれます。 調査団が訪問したヘルシンキから西へ14キロメートルのエスポー市の活動センターでは、定住促進(統合)プログラムの一環として、フィンランド語教室(初級レベル)、演劇・音楽教室、数学・コンピュータ教室、母国語で交流する会などが開かれていました。 ⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 418KB)
PAGE TOP