フランスにおける難民認定申請者の受入施設
(2003年1月26日〜2月7日の現地調査)
当事業本部は、フランス、ベルギー、イギリス、ドイツにおける難民認定申請者(以下「申請者」)の受入施設の状況を把握するため、2003年1月26日から2月7日まで現地調査を実施しました。
本稿では、フランスにおける申請者の受入施設について紹介します。
I.フランスの難民認定申請者
フランスでは、2002年、約8万人の外国人が難民認定申請を行いました。難民認定審査には約18ヵ月かかりますが、この間、申請者はCADA(Centres d'acceuil pour demandeurs d'asile)という申請者のための受入施設に入所することができます。CADAは政府との委託運営契約の下、NGOが管理・運営している施設で、フランス全土に140ヵ所、10,350ベッドあります。
調査では、CADAの1つクレテイユセンターを訪問しました。
II.クレテイユセンター
1.センターの概要
クレテイユセンターは、パリ郊外に位置する、フランスで最も古く規模の大きい施設です。同センターは、1971年にインドシナ難民を受け入れる施設として設立されましたが、現在は、申請者の受入施設(CADA)、難民認定者の受入施設(CPH)、緊急施設(CADAに即入所できない申請者のための待機施設)として使用されています。総ベッド数は265で(CADA150、CPH35、緊急80)、現在約40ヵ国籍の人が生活しています。
建物は6階建てで、建物の中には、合計127部屋の個室と家族部屋、そして食堂、子供用のプレールーム、台所、シャワー室、トイレ、各種相談室などの共同設備があります。また、建物の外には、バスケットコートやジャングルジムなどの遊戯場があり、難民認定者と申請者がこれらすべてを共用しています。
2.センターでのサービス
(1)食事
入所して最初の2ヵ月は三食ともビュッフェ式の給食で、その後は給食か自炊かを選択することができます。申請者には生活援助金が支払われることになっていますが、自炊を選択する場合は、生活援助金が増額されるため、申請者の9割は自炊を選択しているようです。
(2)医療
クレテイユセンターは、CADAの中で唯一医療機能を持った施設です。看護師と医療秘書が常駐しており、医者2名、精神科医1名、児童専門医1名が週に1回センターを訪問し、申請者の健康管理にあたっています。ただし、センター内で行われるのは検査のみで、実際の治療は外部の医療機関で受けることになっています。なお、フランスでは申請者に対して無料で医療サービスを提供しています。
(3)その他
センター内では法律専門の相談員1名が常駐しており、申請者は法律的な相談を受けることができます。その他、難民認定者のために開講されているフランス語の語学教室に申請者も参加することができます。申請者には、それぞれソーシャルワーカーがついており、健康や教育、その他日常のさまざまな問題について相談することがすることができます。
III.問題
フランスでは、難民認定審査期間が長期化する傾向が見られ、CADAへの平均入所日数も長期化しています。このため、CADAのベッド数が足りなくなるという問題が起こっています。政府は、この問題を解決するため、緊急施設を徐々に設置していますが、野宿する申請者も少なからずいるようです。この問題に対する今後の政府の取り組みが注目されるところです。
⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 2.21MB)