フランスにおける難民受け入れと支援の状況
(2007年2月19日〜2月23日の現地調査)
当事業本部は、フランスにおける難民受け入れ政策を調査すると共に、条約難民及び庇護申請者等に対する語学教育、就職あっせん等の具体的措置とその運用実態を調査するため、2007年2月19日から2月23日まで現地調査を実施しました。
本稿では、難民受け入れ政策、受け入れ制度、庇護申請者・条約難民等に対する支援について紹介します。
1.難民受け入れ政策
フランスは第二次世界大戦後、欧州諸国や旧植民地の北アフリカから大量の移民を受け入れ、多くは安価な労働力としてフランス経済の復興と成長を支えた歴史があります。2006年に「移民受け入れの抑制」、「移民選別の促進」、「移民の社会統合」が三つの柱となる新移民法が制定され、質の高い移民受け入れには寛大な一方、非合法移民については厳しく取り締まる方針となりました。なお、フランスで滞在許可を受け永続的に定住を考えている外国人は、移民の社会統合の一環として「受け入れ・統合契約(以下、CAI契約)」が義務化されており、認定難民も対象者に入っています。また、庇護申請については、2003年に「庇護権に関する法律」を大幅に改定し、手続を合理化して審査期間の短縮がなされるようになりました。難民受け入れの予算は、雇用社会連帯及び住居省の一部局である人口及び移民局(以下、DPM)が管理を行い、民間団体へ難民受け入れ業務の委託についての権限を持っており、委託を受けた民間団体が実際の支援を行っています。
2.難民受け入れ制度
フランスで庇護を求める人は、まず県庁において滞在申請を行います。当該申請をフランスで処理すべきと判断された場合は、その場で1カ月間有効な一時滞在許可証及びフランス難民及び無国籍者保護局(以下、OFPRA)への庇護申請書が手渡されます。申請者は21日以内にOFPRAへフランス語で記入した申請書類を提出し、約4カ月の審査期間を経て(2006年度平均審査期間:110日)、難民認定、補完的保護、不認定のうちどれかの審査結果が書留郵送により通知されます。不認定の場合は、1カ月以内に難民訴訟委員会へ異議申し立てを行うことができ、OFPRAでの結果が覆され難民認定や補完的保護を受けることができれば、OFPRAから法的、行政的保護を受けることができますが、異議申立が却下されれば、他の在留資格を申請するか、フランス国内から退去するよう勧告されます。また、申請者がフランスの治安に重大な脅威をもたらす場合や、OFPRAが作成している安全な国リストの出身者である場合、また国外退去を遅らせるための申請と判断される場合においては、通常手続と異なり、優先手続によって審査され、OFPRAは2週間以内に結果を出すこととなっています。
3.庇護申請者に対する支援
フランスでは、DPMから業務委託を受けた民間団体が申請者支援を行っており、CADAと呼ばれる庇護申請者受け入れ施設を運営しています。現在、フランス全土に269の施設があり、収容能力は19,410人で、入所者に対し申請手続、生活面などのサポートや財政支援を行っています。教育に関しては6歳から16歳までは義務教育であるため、申請者もこの年齢の子どもは地元の学校へ無料で通学できます。一方、庇護申請者の就労は禁止されており、申請者向けの職業技術訓練や就職あっせん等の支援活動は原則実施されていません。医療面については2000年から実施された普遍的医療給付制度法により公的医療保険に加入できない申請者においても、一定の手続を踏めば自己負担額なしで医療を受けることができるようになりました。
4.条約難民等に対する定住支援
フランスで難民としての認定を受ければ、難民としてではなくフランス国民として生活することになります。CAI契約を締結することによりフランス語やフランス社会に関する教育や、医療、住居、就業など定住国での生活で必要な情報提供などの公的サービスを受けることができ、国民同様に最低生活扶助を受けることが可能です。また、申請者支援を行っている民間団体が認定者の語学教育、職業訓練や住居相談などの支援も行っており、今回訪問した民間団体の一つであるFTDAは、CADAだけでなくCPHと呼ばれる認定者一時居住施設も運営し、難民の社会統合に向けての支援を行っています。
⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 736KB)