ベルギーにおける難民認定申請者の受入施設
(2003年1月26日〜2月7日の現地調査)
当事業本部は、フランス、ベルギー、イギリス、ドイツにおける難民認定申請者(以下「申請者」)の受入施設の状況を把握するため、2003年1月26日から2月7日まで現地調査を実施しました。
本稿では、ベルギーにおける申請者の受入施設について紹介します。
I.ベルギーの難民認定申請者
ベルギーでは、2000年以降、毎年約4万人の外国人が難民認定申請を行っています。難民認定手続は形式審査(外国人が他国を経由してベルギーに来た場合、ベルギーが難民認定審査をするべきか否かを判断する審査)と実質審査(難民性の審査)に分けられます。
申請者は形式審査の間、政府が管理・運営する「難民センター」、地方自治体や民間会社などが管理・運営する「ローカル・イニシアティブ」、NGOが管理・運営する「NGOイニシアティブ」のいずれかに入所することができます。「難民センター」は、全国に41ヵ所あり、7,109ベッドの収容能力があります。「ローカル・イニシアティブ」と「NGOイニシアティブ」は、普通の住宅やアパートを管理・運営する団体が借り上げたものですが、全国に14,683ベッドの収容能力があります。
調査では、「難民センター」の1つプチ・シャトーを訪問しました。
II.プチ・シャトー(難民センター)
1.センターの概要
プチ・シャトーは、中世貴族の住居として建設されたお城を難民センターとして転用したもので、ベルギーで最も古く、650人を収容することができます。
居室は単身者用、夫婦用、家族用に分けられています。家族用は14部屋あり、各部屋とも14畳程度のLDK、6畳程度の寝室などの4室と、トイレ、台所、シャワールームが備えられたメゾネット形式の部屋となっています。夫婦部屋も家族部屋よりは小規模ですが、家族用と同様の設備が備わっています。単身者は、1部屋10人の共同部屋に雑居しており、トイレ、シャワーなどは共同です。
センターには、コンピュータルーム、テレビ室、映画館、フィットネスルームなどの娯楽施設も備えられており、入所者は自由にこれら共有設備を利用することができます。
現在、センターには650人が入所しており、その国籍は40ヵ国に及んでいますが、中央アフリカ出身のフランス語圏の申請者がもっとも多くなっています。
2.センターでのサービス
(1) 食事
単身者には、ケータリングにより1日三食の食事が支給されます。家族には、金券が渡され、センター外のスーパーマーケットなどで食材を購入し自炊することが許されています。
(2)教育
子供たちは地域の学校に通うことができるので、センターでは、20人のチャイルド・ケアワーカーが交代で授業の補習や宿題を手伝っています。
施設内では、コンピュータや各種語学教室が開講されており、申請者は自由に受講することができます。
(3)就労
形式審査中の申請者には就労が許可されていません。しかし、センターでは、1ヵ月3日間センター内の清掃等の労働をすることが義務付けられています。3日以上の労働も可能で、わずかですが賃金も支払われます。
(4)その他
センターでは、医療・健康管理・メンタルケア、法律支援などは行っていませんが、ソーシャルワーカが必要と思った時や申請者が要求した場合には外部の専門家に連絡する体制を整えています。
III.問題
プチ・シャトーに限っていえば、周辺が外国人居住区のための地域コミュニティーからは寛容に受け入れられており、トラブルなどはないようです。一方、多文化共存がみられない小さな町などにある施設では、周辺住民とのあつれきがみられるようです。
⇒詳しくは報告書をご覧ください(PDF 2.21MB)