リベリア、シエラ・レオーネ、ギニア
西アフリカ情勢─リベリア、シエラ・レオーネ、ギニア (2001年3月28日の講演) 難民事業本部は、世界の難民発生地域の政治情勢と難民状況についての最新情報を提供するためパリナック・ジャパンフォーラムの協力を得て、1998年から「難民情勢講演会」を開催しています。第10回目の今回は、外務省アフリカ第一課柘植事務官及び鍋島事務官を講師として、「西アフリカ情勢-リベリア、シエラ・レオーネ、ギニア」の講演会を行いましたので、概要を紹介します。 1. リベリア内戦 リベリアでは1989年12月にドー政権の調達庁長官であったテイラーの率いるリベリア国民愛国戦線が、ドー政権の転覆を企てて象牙海岸からリベリアに侵入して内戦が始まった。 ECOMOG(西アフリカ諸国経済共同体〈ECOWAS〉の停戦監視団)、及び国連の努力等で96年8月に和平合意(アブジャ合意)が締結された。97年7月には大統領、国民議会選挙が実施され、テイラーが大統領に選出、民政移管が完了し現在に至っている。 2. シエラ・レオーネ紛争 シエラ・レオーネ紛争は、91年3月にテイラーの支援を受けたサンコー率いるRUF(革命統一戦線)がリベリア領内からシエラ・レオーネに侵入したことによって紛争が始まり、その後、ダイヤモンドの産出地域を巡ってRUFとシエラ・レオーネ政府の戦闘が継続された。RUFはダイヤモンドの密輸を通じて、リベリアから武器及び軍事物資の支援をうけ、ECOMOGやUNAMSIL(国連PKO;国連シエラ・レオーネ派遣団)と対等の戦力を有するようになった。 サンコーは昨年シエラ・レオーネ政府に逮捕され、現在拘留中。 3. 各国の現状 テイラー・リベリア大統領のRUF支援がシエラ・レオーネ紛争を長期化させている原因であるとして、本年3月、国連安保理でリベリア制裁決議が採択された。同大統領は国家復興・開発に向けての努力を行っているが、基礎的インフラ等の復旧は進展しておらず、国軍や警察に対する給与の遅延も常態化している。 シエラ・レオーネにおいては、昨年11月の停戦合意成立後は、大規模な戦闘はなく小康状態が続いている。首都のフリータウンの治安はとりあえず維持されているが、RUFに対する武装解除は進んでいない。RUF支配地域が解放されていないため、大統領及び国会議員選挙が延期された。 ギニアにおいては、昨年9月以降、シエラ・レオーネ及びリベリアとの国境地域で両国から侵入したとされる武装集団に集落や軍事施設が襲撃される事件が頻繁に発生している。 4. 難民の現状 リベリア内戦の影響で、約76万人の難民がギニア、象牙海岸へ流出し、約150万人の国内避難民が発生した。また、シエラ・レオーネ紛争の影響で約45万人がギニアに流出し、約14万人の国内避難民が発生。さらに、ギニア領内の国境付近で発生している戦闘により多数の難民・避難民が発生している。 5. 今後の見通し 国連安保理でリベリア制裁が決議され、これによってテイラーの支援を失ったRUFがどういう行動にでるのか注目される。西アフリカ地域の安定のためには、ECOMOGの展開の成否、ECOWASの仲介によるテイラー・リベリア大統領とコンテ・ギニア大統領の軋轢解消、UNAMSILの増員が重要な要素である。 また、リベリア内戦とシエラ・レオーネ紛争では多くの児童兵が徴用されたが、国民融和を達成し、長期的な和平を達成するためには、国際社会が元児童兵の社会復帰を支援していく必要がある。また、治安上の問題により、シエラ・レオーネの総選挙が延期されたが、同選挙が公正かつ平和裡に実施できるかが、国民融和の達成の重要な課題となっている。 6. 日本の対応 日本は国連機関を通じて難民支援及び食糧支援を実施している。2000年11月には元兵士、元児童兵士、紛争被災婦女子支援等に30万ドル、2001年2月には西アフリカ地域の難民に対する食料援助として3億5,000万円を拠出した。96年以降OAU(アフリカ統一機構)には約160万ドル、ECOWAS活動支援のために10万ドルを拠出している。 また、昨年以降2回の紛争予防のシンポジウム等を開催した。
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