2000年のPre-EXCOMに参加して
(2000年9月27日〜29日)
Pre‐EXCOMとは
9月27日から29日の3日間、ジュネーブの欧州国連本部で2000年Pre‐EXCOMが開催されました。Pre‐EXCOMというのは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と世界のNGOの対話会合で、毎年秋に行われる執行委員会(EXCOM)の直前に行われるのでそう呼ばれます。参加者数は昨年よりさらに増え、約200団体300名、日本からは当事業本部を含め8団体が出席しました。
今年の会合では、難民の保護、UNHCRの実施団体としてのNGOはパートナーなのか請負業者なのか、人道支援団体と人道支援に関与する軍隊との関係、NGOの人道支援活動のサポート体制等が議題となりました。
難民の保護
ここでは難民の保護に関する議論を簡単に紹介します。
難民の保護は、UNHCRの任務の中でも最重要と言いうるものです。昨年のPre‐EXCOMにおいても難民の国際保護制度の強化の必要性が強調されました。
来年は難民の地位に関する条約作成50周年を迎えます。UNHCRのフェラー国際保護部長は、50周年の節目に当たり難民保護制度を強化し活性化していく必要があり、そのためにはNGOの支持が不可欠だとして協力を呼びかけました。
保護制度強化に向けて
同部長は、難民保護制度強化のためには難民条約を巡る問題を整理するとともに、広い意味での国際保護をいかに充実させるかということを検討していかなければならないと言います。条約に関することとしては条約の履行を実効あるものとすることであり、そのためには締約国拡大と条約の趣旨に適った適用と解釈を推進することが必要だとしています。
また、条約が必ずしもカバーしていないものとして、一つは、難民が大量に流出する状況をあげています。大量に流出した難民は一次庇護国にそのままとどまらざるを得ない状況が多く、その状態が何年も継続すると国際社会も「支援疲れ」となり、一次庇護国に過大な負担がかかります。このような場合、どのくらいの期間、どのような条件下で難民を保護するべきか、保護の責任はどこにあるのか、その責任をどのようにして公平に分担するのかを真剣に議論しなければならないとしています。
二つ目は、個々の難民認定申請の場合、保護を求められた国が難民認定の手続きのみならず領土へのアクセスさえ制限的に行う状況が見られるという指摘です。その人が難民なのか、難民でないかも知れないが保護が必要な人なのか、それとも必ずしも保護を必要としないのか等について迅速に決定するプロセスが必要です。
他にも移民労働者の出入国管理制度と難民保護制度との関係の問題が指摘されます。フェラー部長は、移民労働者の出入国管理に関わる事項そのものは難民問題ではないが、難民認定申請者の手続きが移民労働者によって誤用されたりする場合には難民問題への影響があり得る、としています。
NGO側からは、UNHCRによる難民の保護に関するイニシアチブを評価するとの発言があるとともに、個人のプライバシー等機微な情報の取扱いに関し、人道・人権分野で活動するNGO間でこれら情報を共有する必要があるのではないか、難民に関する諸条約において難民の定義が必ずしも一致していないので調和を図るべきである等のコメントや難民条約締約国でない国における難民認定申請者の保護をどう確保するのか等といった質問がありました。
今後の取組
会合2日目、緒方国連難民高等弁務官が現在最重要課題となっている問題を概括しました。難民の保護に関しては、人道支援団体が難民の近くに存在することが必要であり、そのためには支援に携わる人の安全が確保されなければならないと強調されました。西チモールやギニアでUNHCR職員が殺されるという痛ましい事件が起こったのはつい最近のことです。
難民の保護というと抽象的に聞こえるかも知れませんが、実は、難民支援に関わる全ての人が広い意味で難民の保護に携わっているといっても過言ではないと思います。今回の会合でも難民保護の制度の充実に向けてNGOも積極的に関与していくことが確認されています。来年の難民の地位に関する条約作成50周年に向けての取組みを始めとするいろいろな動きに大いに関心をもっていきたいものです。